日本消化器内視鏡学会雑誌
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52 巻, 3 号
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総説
  • 足立 経一, 古田 賢司, 勝部 知子, 木下 芳一
    2010 年 52 巻 3 号 p. 383-388
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル フリー
    逆流性食道炎において24時間食道pHモニタリングにおける胃食道酸逆流パターンをロサンゼルス分類のグレードA~Dに分けて検討すると,グレードAでは昼間の胃食道酸逆流が主で,グレードCおよびDにおいては夜間にも高頻度に酸逆流がみられる.これらの酸逆流パターンの違いが粘膜傷害の方向性に与える影響を検討したところ,グレードAの粘膜傷害は食道の2~3時,すなわち右前に多く,グレードCの粘膜傷害の中心は食道の6時方向,すなわち後壁側であった.グレードBの粘膜傷害は最も頻度が高いのはグレードAと同様に食道の2時方向であるが,グレードAに比して後壁側に分布が傾いていた.軽症例における右前を中心とする粘膜傷害の局在を重力的な位置関係のみで説明することは困難であり,その成因や意義については今後の検討課題である.
原著
  • 矢野 貴文, 高崎 能久, 進藤 朗子, 時任 大吾, 福留 聖, 上田 博一郎, 竹内 昇吾, 高塚 祥芝, 宇都宮 與
    2010 年 52 巻 3 号 p. 389-394
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル フリー
    【目的】同種造血幹細胞移植を施行し,下部消化管GVHDを合併した症例について内視鏡所見を中心に検討を加えた.【方法】対象は2000年8月から2006年12月までに当院で同種造血幹細胞移植を施行したのは95例で下部消化管GVHDを合併した28例のうち,ウイルス性腸炎を合併した8例を除く20例を解析した.方法はそれぞれの症例の内視鏡所見および臨床所見を拾い上げ,さらにそれらの関連性について検討した.【結果】男性13例,女性7例,全例造血器悪性腫瘍であった.全例水様性下痢を呈しており,内視鏡所見は発赤・浮腫18例,不整粘膜6例,びらん14例,潰瘍4例,絨毛の萎縮・消失14例を認めた.消化管GVHDのStage 3,4症例はstage 1,2症例に比し,病変部位は広範囲で,多彩な内視鏡像を呈した.【結論】内視鏡検査での下部消化管GVHD病変の程度や広がりと臨床所見との間に関連が伺われた.
症例
  • 鈴木 誠祐, 湯本 英一朗, 山根 弘路, 松本 栄二, 高野 聡, 松村 周治, 奥田 雅人, 平崎 照士, 白川 敦子
    2010 年 52 巻 3 号 p. 395-401
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は49歳,女性.クローン病治療中に食道に縦走傾向のあるアフタ様びらん,胃に竹の節状外観,十二指腸に多発隆起性病変を認めた.ステロイドにて食道アフタ様びらんは改善したが,胃・十二指腸の病変は不変であった.クローン病で食道・胃・十二指腸と上部消化管に多彩な病変を認めることはまれである.食道においても長期化すれば狭窄や変形をきたすことが危惧され,早い段階で粘膜治癒に導けた意義は大きいと考えられた.
  • 時岡 聡, 梅垣 英次, 竹内 望, 竹内 利寿, 白石 奈々子, 柿本 一城, 依田 有紀子, 石田 久美, 村野 実之, 平松 昌子, ...
    2010 年 52 巻 3 号 p. 402-411
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は60歳代,男性.主訴は特になし.スクリーニング目的で行われた上部消化管内視鏡検査で,食道・胃接合部に直径15mm大の発赤した陥凹性病変を指摘された.生検での病理組織診断は高分化型腺癌であったため,IIc病変と診断し,精査の結果深達度は粘膜内癌との判断からESDを行った.食道上皮下進展を考慮し,ヨード不染域から6mm以上の余裕をもってマーキングを行い切除したが,病理組織診断では病変は口側に食道上皮下進展しており,口側断端陽性,粘膜下層浸潤も認められたことから追加外科切除となった.表在型のバレット腺癌は上皮下進展することが多く,範囲診断に苦慮することが多いが,今回われわれは1cmを越える口側への食道上皮下進展を伴ったバレット腺癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を含めて報告する.
  • 西田 直浩, 青松 和輝, 星 智子, 上田 美和, 福永 周生, 田淵 真彦, 田中 史生, 藤崎 公達, 格谷 洋和, 山形 知, 押谷 ...
    2010 年 52 巻 3 号 p. 412-418
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,女性.血便精査目的で近医より紹介入院.入院後の大腸内視鏡検査の前処置(腸管洗浄法)中に虚血性大腸炎を発症した.その後,保存的に加療したが,発熱,下痢症状の改善がみられず,再度の大腸内視鏡検査を施行し,潰瘍底からの生検病理組織にて核内封入体を認め,虚血性大腸炎に続発したサイトメガロウイルス腸炎と診断した.虚血性大腸炎に続発したサイトメガロウイルス腸炎は稀であり,報告する.
  • 三輪 尚之, 中澤 敦, 永 滋敦, 鳩貝 健, 前田 憲男, 重松 武治, 水城 啓, 向井 清, 塚田 信廣
    2010 年 52 巻 3 号 p. 419-425
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル フリー
    28歳女性.主訴は発熱,下痢で両下肢に有痛性結節性の紅斑を認めた.大腸内視鏡では横行結腸を中心に浅い縦走潰瘍を認めた.生検では陰窩膿瘍を伴う高度の炎症細胞浸潤がみられ,炎症性腸疾患の像であったが,肉芽腫性病変はなくCrohn病の確定診断に至らなかった.一方,足背の皮膚生検では皮下脂肪織に類上皮肉芽腫を認め,Crohn病の診断を支持する所見であった.Crohn病を疑い皮膚症状を伴った場合,早期の皮膚生検が診断に有用である.
  • 松本 浩次, 高野 裕, 三好 俊策, 片倉 玲樹, 櫛方 美文, 手島 伸一
    2010 年 52 巻 3 号 p. 426-431
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性.糖尿病にて通院加療中,腹部CT検査にて,膵体部に38mm大の軽度造影効果を伴い,内部に小嚢胞を含有した充実性腫瘍を認め,その尾側膵管は嚢胞状に著明に拡張していた.ERCP検査では,主膵管は膵頭部で途絶する像が得られた.画像上,膵漿液性嚢胞腺腫が強く疑われたが,主膵管途絶像より悪性腫瘍も否定できず,膵体尾部脾臓合併切除術を施行.術後病理組織検査では,膵漿液性嚢胞腺腫と診断された.
経験
注目の画像
手技の解説
  • 奥村 文浩, 大原 弘隆, 中沢 貴宏, 安藤 朝章, 林 香月, 田中 創始, 内藤 格, 宮部 勝之, 吉田 道弘, 城 卓志
    2010 年 52 巻 3 号 p. 440-449
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル フリー
    膵仮性嚢胞に対する内視鏡的ドレナージは,成功率や再発率では外科的治療にやや劣るが,偶発症の発生率や死亡率では外科的治療および経皮的穿刺術をはるかに凌駕している.そのため,本邦でも従来の外科的治療に替わり,より非侵襲的な内視鏡的ドレナージが行われる機会が増えつつある.内視鏡的ドレナージには乳頭からアプローチする経乳頭的ドレナージと超音波内視鏡ガイド下に行う経消化管的ドレナージがあり,経乳頭的ドレナージの適応は仮性嚢胞が膵管と交通を認めるものである.具体的には嚢胞より乳頭側の主膵管に狭窄や膵石が存在する症例であり,主にD'EgidioらのType-II・IIIに相当する.通常,初回はドレナージ効果を判定するために外瘻法を選択し,必要に応じて膵管ステントによる内瘻法に変更する.ドレナージチューブは可能な限り嚢胞内に留置すべきであるが,不可能なときには嚢胞と膵管の交通部より上流の主膵管にドレナージチューブを留置する.しかし,経乳頭的ドレナージが困難または奏功しない場合には,経消化管的や外科的治療に速やかに移行すべきである.
資料
  • 三木 一正, 藤城 光弘, 小田島 慎也, 矢作 直久
    2010 年 52 巻 3 号 p. 450-454
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル フリー
    【目的】本邦では胃X線による胃癌検診が長年行われてきた.本研究の目的は,胃癌検診において血清ペプシノゲン(PG)値測定の有用性を明らかにすることである.
    【方法】91~05年にPG値を測定した無症候壮年者を対象に,PG陽性(PG I≤70ng/mlかつPG I/II≤3)者は2年毎,PG陰性者は5年毎,内視鏡による2次精検を行った.
    【結果】延べ101,892人(平均年齢48.7歳)にPG値測定を行い,22,987人(22.6%)が2次精検対象者となった.13,789人(65.1%)が実際に内視鏡受診し,125人に胃癌が発見された.これは,検診受診者全体の0.12%,内視鏡受診者の0.91% に相当した.発見胃癌のうち,早期胃癌は80%,分化型粘膜癌は39% を占めた.
    【結論】PG値による胃癌検診;PG法は,良好な2次精検受診率,胃癌発見率を示し,特に早期胃癌割合の高い,極めて有用な検診法と考えられた.
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