日本消化器内視鏡学会雑誌
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28 巻, 7 号
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  • 吉田 智治
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1491-1503
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡的食道静脈瘤硬化療法(IS)に使用される硬化剤5%ethanolamine oleate(EO)の安全性および作用機序について,基礎的ならびに臨床的検討を行った. EOの静脈瘤内注入量は,1回の治療で総量0.5ml/kg以下であれば安全であると考えられた.また,EOを静脈内に注入した場合,静脈内腔を閉塞する血栓は,注入直後に形成されるのではなく,注入1~6時間後に形成され,EOを静脈周囲に注入した場合より血栓形成能は高かった.さらに,EOを静脈内に注入した場合の作用機序は,血管内皮細胞の脱落,消失を最初の組織学的変化とする血栓形成機序であることが判明した.また,IS後の剖検例の検討では,静脈瘤を閉塞する血栓は,IS6日後には,"bronze varices"として認められた.臨床例でのIS前後の血液凝固系の変化の検討では,IS前とIS24時間後で循環血中の血液凝固系の変化は認められなかった.
  • 戸松 成, 井上 健一郎, 土岐 文武, 大井 至, 小幡 裕
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1504-1510
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     ウログラフィン静注テスト(以下テスト)が陽性である20例およびテスト未施行でヨード系造影剤の静注による検査での副作用歴を有する27例(以上A群)とウログラフィン静注テストが陰性で副作用歴もない139例(B群)について,ERCP施行時の造影剤ウログラフィンによる副作用を比較検討した.「ERC」におけるウログラフィンの副作用はきわめて少なく,「ERP」における副作用の出現頻度はA群がB群よりも高い傾向にあり,「ERCP」における頻度はA群がB群より有意に高かった(p<0.01).副作用は治療を必要としない程度のものが大部分であった.また,それらの頻度は全般的に排泄性尿路造影や経静脈胆道造影における副作用の出現頻度よりも低いと思われた.なお,「ERCP」例と「ERP」例の中に尿路造影が確認された症例があり,膵管に注入されたウログラフィンが膵を介して血管に入り込み,尿路に排泄されるものと考えられた.ERCPによる下痢の発生頻度についてはA・B両群間に差があるとはいえなかった.
  • 永井 祐吾, 勝見 正治, 田伏 克惇, 田伏 洋治, 青山 修, 江川 博, 野口 博志, 小林 康人, 森 一成, 山上 裕機, 中井 ...
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1511-1518_1
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     当教室ではじめて開発した内視鏡的マイクロ波凝固療法を早期胃癌25例に行い,本法による局所的癌完全消滅の可能性について検討した. 14例は根治手術予定の症例であり,術前内視鏡検査時に病巣の部分または全域凝固を行い切除標本にてマイクロ波凝固の影響を検討した.部分凝固群7例においては,凝固部はulII~IVの潰瘍となり,潰瘍底にはviableな癌細胞は認められなかった.全域凝固群7例中,3例においては,摘出標本の連続切片のいずれの部位にも腫瘍細胞は認められず,本法による局所根治例と考えられた.残りの4例中2例は凝固後の潰瘍底のsm層に,あとの2例では辺縁粘膜に,いずれも微少な癌病巣が残存していた. 内視鏡的治療のみを行った11例のほとんどは高齢や重篤な併存疾患のために手術の適応外となった症例であった.生検にて悪性所見が消失するまでに1~6回の凝固療法を要し,2~50カ月(平均17カ月)の経過観察中2例にのみ再発を認めた.再発例にはさらに凝固を追加し,再び悪性所見は消失した. 以上より局所的癌完全消滅という点においては,本法はsmまでの浸潤胃癌にまで有効であり,現時点においては,手術不適応となった早期胃癌の治療法として期待できると考える.
  • 清水 淳, 桜林 忍, 杉浦 玄, 滝沢 秀樹, 宮崎 浩一, 西里 吉則, 斉藤 利彦, 梅田 裕, 山本 啓一郎, 小柳 泰久, 木村 ...
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1519-1527
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     肝癌ラット7匹,原発性肝細胞癌患者22例,転移性肝癌患者8例の肝比抵抗値を測定した.肝癌ラット及びcontrolラットの間では低周波数領域(3-3KHz)において統計学的に有意差(p<0.01)を認め,特に3KHzでは肝癌ラット1.91±0.18(×103ohmcm),controlラット6.35v1.38と著明な差を認めた.臨床では3KHzの周波数において原発性肝細胞癌0.86±0.10,転移性肝癌0.66±0.12,肝硬変1.27±0.19,ヒトcontrol2.24±0.30であり,両肝癌は肝硬変,ヒトcontrolとの間に有意差(p<0.01)を,原発性肝細胞癌と転移性肝癌との間にも統計学的に有意差(p<0.01)を認めた.腹腔鏡下での肝比抵抗値による肝癌の鑑別診断能は原発性肝細胞癌76%,転移性肝癌75%であった.肝癌と肝硬変,ヒトcontrol,更に肝癌における原発性肝細胞癌と転移性肝癌の肝比抵抗値の相違は肝組織の電気特性,肝局所血流量などの影響によるものと推測される.
  • 西村 滋生, 河原 清博, 宮崎 誠司, 吉田 智治, 伊藤 忠彦, 平田 牧三, 青山 栄, 門 祐二, 安藤 啓次郎, 沖田 極, 岡崎 ...
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1528-1536_1
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     1980年8月から,1985年8月までの5年間に,高瀬らの方法に準じた内視鏡的食道静脈瘤栓塞療法を170例(328回)に施行し,その合併症について検討した.輸血などの特別な処置を必要としたものをmajorcomplicationとすると6例(3.5%)に認め,このうち2例(1.2%)が死亡した.対症療法のみで軽快したものをminorcomplicationとすると,胸部痛40.2%,ヘモグロビン尿36.0%,食道潰瘍31.7%,発熱25.9%,呼吸困難0.5%であった.また硬化剤注入前後で動脈血ガス分析,血清電解質,血液生化学検査を行ったが,注入直後に肺循環障害によると考えられるPaO2値の低下を認めた.また,溶血によると考えられるLDH,間接ビリルビン値の一過性の上昇を認めた.しかし,PaCO2,Hb,CPK,K,Na値には変化を認めなかった.硬化剤を確実に静脈瘤内に注入し,緊急例を除き,術前に静脈瘤の血行動態を把握すれば,majorcomplicationの頻度を減少させることは可能であり,本法は比較的安全な治療法である.
  • 岡田 博子, 清水 誠治, 岩破 淳郎, 吉中 正人, 稲富 五十雄, 多田 正大, 赤坂 裕三, 川井 啓市
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1537-1545
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     上部消化管に対する内視鏡的止血法としてR.L.Protellによって考案されたHeaterProbe法を臨床に応用し,その有用性を検討した.Protellらの理論に基づいて開発されたヒートプローブ装置(HPU)を用いて上部消化管出血をきたした胃潰瘍11例,十二指腸潰瘍5例及び吻合部潰瘍3例の計19例に対して本法による止血を試みた.その結果18例(94.7%)は一時止血ないしは永久止血に成功し,1例の合併症の発生もなく安全に施行することができた.ヒートプローブ法と他の内視鏡的止血法(薬剤散布法,薬剤局注法,クリップ止血法,高周波凝固焼灼止血法,レーザー止血法)と比較検討した結果,本法は止血の効果の確実性,手技の容易さ,安全性,器械の携帯性のいずれの点においても他の出血法と同等ないし優れており,今後広く臨床に普及するものと考えられた.
  • 芳野 純治, 中澤 三郎, 太田 博郷, 中村 常哉, 山中 敏広
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1546-1552
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     スキルス型胃癌の超音波内視鏡(EUS)像を解析した.検討したスキルスは切除胃9例,臨床施行例3例の計12例で,対照として早期胃癌のために切除された切除胃13例の非癌部位を用いた.スキルスのEUS像は正常胃壁と同様に5層構造を維持したまま,各層の著明な肥厚像として捉えられ,正常胃壁のエコー像に比して第3層はやや低エコーに,第4層は点状のエコーの散在したまだらな低エコー像として描出された.これらの所見は癌組織に伴う線維成分が重要な役割を果していると考えられる.X線・内視鏡検査で胃壁の肥厚として捉えられる髄様型胃癌,肥厚性胃炎及び悪性リンパ腫とは明瞭に区別され,鑑別が可能であった.今後,EUSを用いることにより,より早期のスキルスを診断することが可能になると考えられる.
  • ―早期胃癌誤診例,経過観察例の検討より―
    斉藤 大三, 吉田 茂昭, 山口 肇, 田尻 久雄, 土方 淳, 吉森 正喜, 小黒 八七郎, 丸山 圭一, 北岡 久三, 広田 映五
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1553-1561
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     当院開設以来1981年10月までに切除された胃スキルス292例中,術前に内視鏡検査が施行されたものは241例であった.これらのうち内視鏡的に早期癌と誤診されたものは5例(2.1%)であった.この5例に,食道癌手術時に発見された胃スキルスの早期癌誤診例1例を加えた6例と内視鏡的に経過観察し得た13例の検討から,胃スキルスの発育進展様式は次のように考えられた.(1)胃壁硬化を来す前段階の"胃壁の伸展性良好な時期。の期間はそれ程長期間ではない.(2)広汎な壁硬化に至る期間は極めて短期間であり,これは単にcollagenやfibrosisの量的関係により引き起こされると考えるよりは,むしろtriggerとなる機能的側面(inducerの存在)を無視できない.
  • 大高 道郎, 小松 眞史, 戸堀 文雄, 八木澤 仁, 島 仁, 石田 秀明, 荒川 弘道, 正宗 研
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1562-1566_1
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     42歳の男性,アルコール性肝硬変による食道静脈瘤の症例に対し5%-ethanolamine oleateを用い内視鏡的硬化療法を施行した.食道静脈瘤は消失したが,硬化療法直後から急激な血小板減少の増強が認められたので,その機序について考察した. 免疫学的検査では抗血小板抗体,使用薬剤に対するLSTは陰性であった.また骨髄像も正常であった.腹部超音波検査で硬化療法後に脾腫の増大が認められ,腹部血管造影において食道静脈瘤への血行の遮断および脾静脈が蛇行,拡張している所見が認められた. 以上の事から本症例では,硬化療法により門脈系の側副血行路である食道静脈瘤への血行が遮断されたため脾静脈圧が上昇し,それによって脾機能亢進状態が助長され,血小板減少が増強したと推論した.
  • 中西 徹, 坂田 泰昭
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1567-1573_1
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     今回われわれは初診時に著明な高ガストリン血症と汎血球減少症を呈しgastrinomaや悪性貧血も疑われたが,最終的には自己免疫性(A型)胃炎に合併した微小胃カルチノイドであった稀な症例を経験したので報告した. 症例は35歳の女性で汎血球減少の精査のため当科を紹介された.入院後再生不良性貧血,悪性貧血は否定され,鉄欠乏性貧血が考慮され全消化管を精査した結果,胃内視鏡下生検で径5mmの微小胃カルチノイドを発見した.また1,900ρg/mlという著明な高ガストリン血症を認めたが,胃液は無酸でgastrinomaは否定され,抗胃壁細胞抗体が陽性であった事からガストリン高値の原因は自己免疫性胃炎による無酸と考えられた.A型胃炎,胃カルチノイド共に稀であるため,A型胃炎に合併した胃カルチノイド例は自験例を含め本邦で5例にすぎないが,文献的及び本例の組織的検討で両者の関連が示唆されており,この点につき考察を加えた.
  • 平田 康二, 新津 洋司郎, 安達 主税, 加藤 淳二, 西里 卓次, 渡辺 直樹, 高後 裕, 漆崎 一朗
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1574-1580_1
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     Eosinophilic gastroenteritisは,1)末梢好酸球増多,2)胃,腸管壁好酸球浸潤,3)特定食品摂取による症状出現を主徴とする疾患で,欧米では比較的多くの報告がなされているが,本邦では,自験例を含め,16例の報告をみるのみで稀な疾患とされている.著者らは,腹痛,下痢,嘔吐に,末梢好酸球増多,十二指腸球部粘膜への好酸球浸潤を認め,特定食品として,それぞれ牛肉,鶏卵が推定された2例を経験した.本症の病変部位は,胃,小腸が大部分とされ,われわれの2例も空腸が主体で,病理組織学的には,粘膜層に好酸球の浸潤がみられた.本症の病因に関しては,アレルギーの関与が考えられているが,著者らの症例でも1例に花粉アレルギーの既往が認められ,卵白に対するRAST法が陽性を示した.2症例共,副腎皮質ステロイド剤の投与前に症状は軽快し,現在経過観察中である.
  • 丹羽 誠, 斎藤 謙, 添野 武彦, 荒川 弘道, 正宗 研
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1583-1589_1
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道・胃・S状結腸・肺・骨・リンパ節に転移をきたした血管肉腫の剖検例を経験した.原発巣としては左下顎部の歯肉が考えられた.症例は72歳男性,左下顎痛で発症し,抜歯後該部に易出血性難治性潰瘍が生じた.当院耳鼻科に入院後,高度の貧血の原因検索のため胃の精査を受けた.胃X線写真・胃内視鏡検査により胃体小彎に隆起性病変(Borrmann II型様,約2.5×2cm大)がみられた.入院後50日より血痰・呼吸困難が加わり,81日目に呼吸不全にて死亡した.本症例で生前に歯肉生検・胃生検を行ったが,正診には至らなかった.この原因の検討のために,生検材料・剖検臓器の腫瘍組織を病理組織学的および免疫組織学的に再検索した.本症例では未分化な腫瘍組織が主体であったが,一部に小血管腔を形成し腫瘍細胞内に第VIII因子関連抗原を含む分化した部分もみられた.血管肉腫の消化管転移は稀であるが,胃の転移巣を中心にその肉眼形態を述べ,各種の転移性胃悪性腫瘍の報告例と比較した.
  • 末綱 純一, 藤岡 利生, 村上 和成, 首藤 龍介, 松永 研一, 寺尾 英夫, Masaru NASU, 糸賀 敬
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1590-1594_1
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     患者は66歳男性.黄疸を主訴として当科へ入院した.ERCPにて主乳頭より約5cmの正常な腹側膵管と,中~下部に狭窄を有する胆管像を得たためPancreas divisumを疑い先細カニューレを用いて,副乳頭よりの造影を行なったところ,頭部から体部にかけて不整・狭窄を有しその尾側が数珠玉状に拡張した背側膵管を証明し得た.Pancreas divisumに合併した,いわゆる背側膵癌と診断した.手術にて膵頭部癌,stage IVであり大網リンパ節転移巣および肝転移巣よりの生検にて組織診は中等度~低分化型腺癌であった.背側膵癌本邦6例目の臨床報告として若干の考察を行なった.
  • 渡辺 誠, 植木 和則, 足立 経一, 松浦 達也, 山下 秀治, 吉岡 直樹, 平川 弘泰, 福本 四郎, 島田 宜浩
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1595-1602_1
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     われわれは肝癌の初期像を追及する過程において,腹腔鏡検査でのみ診断可能な直径2~3mmの肝癌(mm肝癌)を経験し,その後の臨床経過(剖検を含む)を観察し得たので報告する.症例は42歳の男性で,HBs抗原陽性の非代償性肝硬変症例である.発病から4年後の腹腔鏡検査において,肝は島田の番地分類530.2eの結節肝であり,右葉中央胆のうの右上方に周辺の肝硬変結節とほぼ同大で直径2~3mmの黄色小結節を認め,目標生検にてmm肝癌と診断した.組織型はclearcelltypeの肝癌であった.同様の小結節は左葉にも2個認められた.さらに,肝右葉胆のう奥に直径約1cmの肝硬変結節が観察された.その後,化学療法,マイクロ波凝固を行ない経過観察中,肝癌破裂による腹腔内出血で初回腹腔鏡検査から1年8カ月後に死亡.肝癌は亜鶏卵人で破裂部位は胆のう奥にみられた直径約1cmの結節から発育したものであった.
  • ―腹腔鏡所見を中心として―
    大西 真, 青山 弘, 長瀬 隆英, 中釜 斉, 石川 隆, 森山 貴志, 油谷 浩幸, 井廻 道夫, 高久 史麿
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1605-1609_1
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     無症候例3例を含む4例のWilson病を報告する.年齢は15歳~18歳(男性3例,女性1例)で,3例は臨床症状は無かったが,内2例はアルカリホスタファターゼの上昇をきっかけとして発見された.全例,血清銅,セルロプラスミン濃度は低値で,一日尿中銅排泄量は増加していた.無症候性の3例の腹腔鏡所見は平滑肝で,脂肪沈着を反映し黄色調を,あるいは銅沈着を反映して暗褐色を呈した.中枢神経症状を呈した1例は,肝は大小の球形度の低い黄色結節が散在し,間質の巾が広い肝硬変であった.組織所見では,炎症細胞浸潤や線維化の程度は様々であったが,脂肪沈着と核の空胞化が比較的目立ち,銅染色陰性例が1例あった.また,肝組織内銅含有量と銅のローダニン染色の結果は,必ずしも一致しなかった.
  • ―特に本邦報告例の臨床病理学的検討―
    佐竹 弘, 直木 正雄, 雨森 正洋, 藤井 秀俊, 安場 広高, 生田 篤也, 八木 昭一, 小川 欽治, 清水 一良, 前川 高天, 梶 ...
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1610-1618_1
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は,52歳の男性.スクリーニングの上部消化管透視にて十二指腸球部に腫瘤様陰影を発見された.内視鏡検査で同部にIIa+IIc様の平坦な隆起性病変を認め,生検診断はgroup V,膵頭十二指腸切除術を施行した.腫瘤は十二指腸球部から下行部にかけて存在し,大きさは35×30mm,表面は比較的平滑なIIa+IIcの隆起性病変であった.組織学的には,Papillary adenocarcinomaで,深達度sm,リンパ節転移は認めなかった. 本邦において,m・smにとどまる原発性十二指腸癌の報告は1984年までに31例である.本症例を含め32例について,診断,腫瘍の病態,発生母地,さらに早期十二指腸癌の定義等について文献的考察を加えた.
  • 岩瀬 正典, 飯田 三雄, 名西 史夫, 重松 明博, 藤島 正敏
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1619-1624_1
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例1は69歳の女性.三叉神経痛のためメフェナム酸1.5g/日を1年間服用後,下痢,血便,浮腫が出現した.著明な貧血と低蛋白血症を認め,125I-PVPテストで腸管よりの蛋白漏出の増加を認めた.逆行性大腸造影で母指圧痕像を認め,内視鏡検査で下行結腸を中心に発赤,浮腫,出血を大腸全体に認めた.これらの異常はメフェナム酸投与中止後直ちに正常化し,メフェナム酸によるリンパ球刺激試験は陽性であった.症例2は68歳の女性.膝関節痛のためメフェナム酸1.5g/日を断続的に10年間服用後,下痢,体重減少が出現した.軽度の貧血と低蛋白血症を認めた.逆行性大腸造影で異常なく,内視鏡検査で結腸全体に発赤と小出血斑を認めた.メフェナム酸投与中止後直ちにこれらは正常化し,再投与試験は陽性であった.以上,メフェナム酸に起因した大腸炎の2例を報告し,文献例10例と合わせ,臨床像,成因などについて考察した.メフェナム酸は常用量を長期間服用後,大腸炎を惹起すると考えられ,日常臨床上,注意が必要である.
  • 松本 好市, 松本 一年, 竹内 謙二, 松本 収生, 中山 治, 北川 達士, 梅原 規子, 森山 茂, 増田 亨, 岩田 康
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1627-1632_1
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は67歳の男性.腸重積にて発症,某医にて注腸整復され,精査目的にて紹介来院.注腸透視,経口小腸透視にて回腸末端に最大径2.0cm大の隆起性病変を2個認め,大腸ファイバースコープにより経肛門,回盲弁的に挿入観察,生検にてTubular adenomaと診断された.定型的回盲部切除が施行され,病理組織学的には,一部Villous changeを伴う,Tubular adenomaで,最大径0.2cmから2.5cm山田I~III型のポリープ6個が発見された. この症例を中心に,小腸良性腫瘍についての文献的考察,小腸疾患のレントゲン診断,内視鏡診断の困難性と問題点につき報告した.
  • 西田 博, 佐藤 達之, 岡野 均, 丸山 恭平, 大石 享, 今村 政之, 堀口 雄一, 内田 秀一, 児玉 正, 瀧野 辰郎, 福田 新 ...
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1633-1641
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     急性出血性直腸潰瘍4症例を報告した.症例は全例高齢者であり,全身状態不良または寝たきりの状態であった.すべて突然の無痛性新鮮下血で発症しており,1例は無水エタノール局注による積極的な止血操作を必要としたが,死亡1例を除いて全身状態の改善と共に治癒傾向を示した.内視鏡像は3例が歯状線から5cmの部位にいたるまでの管腔の3周から全周を占める巾の広い不整形,地図状の多発潰瘍であり,1例は歯状線より10cmの部位にできた円形単発潰瘍であった. 特に本症が脳血管障害患者に多くみられることより,脳障害によるストレスが原因と推測されているが,それ以外に本例のように全身状態不良例や寝たきり例にも発症する.本症と孤立性直腸潰瘍との鑑別は組織像および内視鏡像より容易であるが,本症の発生に宿便が関与する可能性は否定できないと考えられた.
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1642-1644
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1645-1667
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 7 号 p. 1668-1743
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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