日本消化器内視鏡学会雑誌
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33 巻, 3 号
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  • ―進行性全身性硬化症および食道裂孔ヘルニア症例における比較検討―
    堀越 勤, 関口 利和
    1991 年 33 巻 3 号 p. 465-477
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    進行性全身性硬化症(PSS)症例および食道裂孔ヘルニア(H.H.)症例における逆流性食道炎の内視鏡像を比較し,さらに両者における食道運動機能との関連について検討した.内視鏡的に逆流性食道炎と診断されたPSS症例24例,H.H.症例26例において,病変の縦軸方向への拡がりを比較すると,PSS群で食道・胃接合部に食道炎が限局する"限局型"の出現率が79.2%と有意に高かった(p<0.05).また,横軸方向への拡がりでは,PSS群で非全周性病変が,また,H.H.群で全周性病変が有意に高頻度であった(p<0.01).また,両群とも,非全周性病変の中では,後壁病変および右側壁病変の出現率が高かった.PSS群では,横軸方向への拡がりにおいて,1次蠕動波高,食道酸排出能および唾液分泌能の低下との関連が認められ,H.H.群では唾液分泌能の低下が食道炎の縦軸および横軸方向への拡がりに関与していることが示唆された.
  • 梅川 康弘
    1991 年 33 巻 3 号 p. 478-489
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    肝硬変の進展に伴う結節の大きさと数の変化を検討した.剖検肝組織の再構築による検討から,結節はその一部が相互に癒合しているが,全体として形状はほぼ球状と考え得た.肝硬変163例を対象に,腹腔鏡下に測定した結節径を病期別,病因別に検討した結果,完成した肝硬変期では前硬変期の,B型で3.3倍,非A非B型(NANB型)で2.3倍,アルコール性(ア性)で2.2倍に増大していた.163例中CTで肝容積を測定しえた114例では,完成した肝硬変期では前硬変期と比較してB型で30%,NANB型で25%,ア性で10%の縮小がみられた.更に73例を対象に肝容積,肝実質比,結節径から計算した肝内総結節数は前硬変期に比し完成された肝硬変期ではB型で1/40,NANB型で1/13,ア性で1/12と著明な減少を認めた.肝硬変はその成立後も肝壊死によると思われる結節の脱落が起こり,一方では脱落を免れた結節の肥大が続き,全体として,肝容積は減少していくことが示唆された.
  • 大坂 直文, 芦田 潔, 田中 雅也, 阪口 正博, 浅田 修二, 平田 一郎, 大柴 三郎
    1991 年 33 巻 3 号 p. 490-495_1
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    維持量のH2-blockerを投与され,3カ月ごとに電子内視鏡TGS-50Bで経過観察された12カ月未再発胃潰瘍瘢痕25症例を対象として,瘢痕画像を画像解析装置に入力し,R,G,B各成分について瘢痕周囲の背景粘膜の輝度を100とした場合の瘢痕部の輝度の平均値を算出した.また,同時に生検を施行し,腺管係数を算出して組織学的な成熟を検討した.その結果,R成分は白苔が消失した時点で92.2±9.4と高値を示しており,経過による変化は乏しかった.G,B成分は白苔が消失した時点では76.0±15.3および75.8±14.4と低値であり,背景粘膜と同等値になるには白苔消失後12カ月以上を要した.腺管係数は白苔消失直後は32.8±2.04であり,背景粘膜と同等値になるにはこれも12カ月以上の経過期間を要した.すなわち,色調ならびに生検組織学的に瘢痕が背景粘膜と同程度になるには12カ月以上を要することがわかった.
  • 小林 壮光, 矢花 剛, 吉田 博清, 小野 晃裕, 遠藤 高夫, 斉藤 定三, 須貝 茂, 郡 登茂子, 近藤 吉宏, 畑 英司, 谷内 ...
    1991 年 33 巻 3 号 p. 496-503
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    逆流性食道炎,食道潰瘍,Mallory-Weiss症候群,早期食道癌などの食道疾患10例を対象に,レーザー治療用内視鏡バルーンを用いて食道内腔を拡張させ,可能な限り正面からの病巣観察を試みた.得られた画像については,評価項目を死角の減少,正面視,静止画像の描出,および微細構造の描出の4項目とし,各症例のバルーン内視鏡像を,通常の内視鏡像と比較して項目別に評価した.バルーン内視鏡法で得られた画像は,死角の減少,正面視および静止画像の描出については,通常の内視鏡像よりも良好な評価が得られた.本法は,正面視に近い状態で静止画像を得ることができるため,食道病変の観察に有用であると思われた.しかし,本法では,画像の鮮明度が低下するため,微細構造の描出に関しては,必ずしも満足し得る成績が得られず,今後はさらに良質のバルーンの開発が望まれる.
  • ―解像度に関する基礎的検討―
    中川 辰郎, 桜井 健司, 大政 良二, 増田 勝紀, 鈴木 博昭, 渡辺 豊
    1991 年 33 巻 3 号 p. 504-510
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    電子内視鏡の静止画像の解像度を検討するため,解像度テスト・チャートを電気的に作成した.このテスト・チャートを利用して,アナログ信号をモニター画面に撮影して得られた画像とデジタル信号を直接記録装置に入力して得られた画像とについて解像度を定量的に比較検討した.水平方向の直線に対して垂直,水平方向の1mm幅の長方形の中に1本,1.5本,3本の黒線を入れたものを画像解析装置で電気的に発生させた.垂直方向で3種類,水平方向で3種類,合計6種類のテスト・チャートを35mmカメラおよびカラーハードコピー(ピクトログラフィー:富士写真フイルム)で出力印刷した.このようにして得られたスチール画像6種類,デジタル画像6種類,合計12種類の画像の濃度を求める目的で写真の黒化度を測定する器具であるマイクロデンシトメーターを用いて,出力波形を記録した.その振幅をAとし,1本/mmのチャートをスキャンさせた時の振幅をA0とし,AをA0で割ったもの(contrast transfer function)を解像度の指標とした.デジタル画像とスチール画像における1本/mmのチャートの解像度を100%とすると,3本/mmでは,デジタル画像,スチール画像の解像度はおのおの水平方向では93.2%,39.2%,垂直方向では76.0%,35.2%とデジタル画像の方が優れていた.電子内視鏡の特徴を生かす手段として,静止画像のデジタル化も1法であると考えられた.
  • 山下 裕一, 黒肱 敏彦, 君付 博, 平城 守, 林 譲司, 磯本 浩晴, 掛川 暉夫
    1991 年 33 巻 3 号 p. 511-516_1
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    肝切除時に門脈内腔の観察を目的として血管内視鏡(門脈内視鏡)を施行した.その臨床経験をもとに門脈内視鏡の可能性と問題点を検討した.対象症例は,肝細胞癌12例,転移性肝癌4例であった.門脈と肝動脈の血流遮断下にヘパリン加ハルトマン液を12m1/分の流量で門脈内に注入すると明瞭な視野が得られた.5ml/分の流量に減じても血液の逆流はなかったが,3m1/分以下の流量にすると血液の逆流を認めた.内視鏡のアングル機構を用いることで門脈3次分枝内まで容易に挿入できた.6例の開脈腫瘍塞栓(Vp3)を伴う肝細胞癌において門脈内腫瘍を観察し,内視鏡下にその除去を行うことができた.術中に行う門脈内視鏡は,門脈内腔の観察には高いポテンシャルを有すると考えられたが,門脈内腫瘍の除去には,さらに工夫が必要である.
  • 向井 秀一, 小西 淳一, 池田 悦子, 林 誠, 平野 誠一, 水野 成人, 芦原 亨, 早雲 孝信, 水間 美宏, 趙 栄済, 安田 健 ...
    1991 年 33 巻 3 号 p. 519-526_1
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    新しく開発された超音波プローブは,内視鏡機能はないが,先端部の最大径は3.4mmと細径化されており,ラジアル走査方式(周波数7.5MHz)の超音波機能を有している.超音波プローブを胆・膵疾患17例に施行し,その診断能を検討した.検査方法としては,経乳頭的に胆管または膵管内へ挿入する方法と経皮経肝的に胆管あるいは胆嚢内へ入れて走査する方法があるが,いずれの方法においても胆・膵やその周囲臓器・脈管は鮮明に描出され,5mm以下の腫瘤も明瞭に観察された.また,癌の進展度診断においても有用性が認められ,本法とEUSとを併用することにより,一層正確な診断のできることが確認された.
  • ―特に癌早期発見のために―
    松本 利彦, 松本 文子, 高須 雅史, 何 国彦, 羽間 弘, 飯田 都, 水野 孝子
    1991 年 33 巻 3 号 p. 527-534
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    明らかな腹部症状・所見をもたない70歳以上の高齢者156例を対象として,大腸癌早期発見のために,如何に対処すべきかを検討した.全例スクリーニング的に注腸検査,大腸内視鏡検査を実施したところ,有病率は61.5%,腺腫,癌の発見率はそれぞれ26.9%,13.5%と極めて高く,しかも腺腫,癌の30~40%は深部大腸に存在しだ.大腸内視鏡所見と注腸所見の対比では,注腸検査の偽陰性率は54.4%で,ポリープが最も多く見落とされ,癌も3例あった.便潜血反応陽性率,腫瘍マーカーは,腫瘍性症例群と非腫瘍性症例群,異常なし症例群との間に有意差はなかった.以上より,高齢者大腸癌早期発見に,便潜血反応,腫瘍マーカーによる拾い上げは有用でなく,精査法としての注腸検査は偽陰性率が高く不適である.スクリーニング的な内視鏡検査が治療を含め最も望ましく,高齢者の大腸癌発生部位の特異性よりtotal colonoscopyの重要性を改めて強調したい.
  • 藤村 隆, 嶋 祐一, 沢崎 邦広, 巴陵 宣彦, 藤田 秀春, 竹越 国夫, 七澤 洋, 岡田 英吉, 田中 三千雄
    1991 年 33 巻 3 号 p. 535-543
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    われわれはCytomegalovirus(CMV)感染によるウイルス性胃炎の1例を経験した.症例は52歳女性で発熱,全身倦怠感を主訴として来院した.胃内視鏡にて胃体部を中心に径2から3mmの線状または星芒状の多発性の小びらんが認められた.同部の生検にて胃粘膜上皮細胞の核内にCowdryA型の封入体を認め,蛍光抗体法によってCMV抗原の局在が証明された.またCMVの抗体価(IgM型)も上昇していたためCMVによる胃炎と診断した.経過は良好で,抗ウイルス剤を投与することなく診断後約20日間で治癒した.本例は輸血歴やステロイド使用歴はなく,末梢血,骨髄血検査でも白血病や悪性リンパ腫などの所見は得られず,いわゆる背景因子を持たないまれなウイルス性胃炎の症例であると考えられた.
  • 嘉川 潤一, 松元 淳, 末川 清康, 有村 文男, 中塩 一昭, 田中 啓三, 渋江 正, 有馬 暉勝, 田中 貞夫
    1991 年 33 巻 3 号 p. 544-548_1
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は56歳男性.特に自覚症状はないが胃X線検査,内視鏡にて胃前庭部に隆起性病変が認められIIaまたはATPが疑われ左.生検組織では異型リンパ球が一部認められ胃悪性リンパ腫が疑われた.超音波内視鏡(EUS)で病変部は第2層の肥厚として描出され,第3層は保たれており,病変の主体は粘膜層に限局しているものと考えられた. 胃亜全摘術が施行され,病理組織学的診断はdiffuse medium cell typeの悪性リンパ腫で,深達度はmであった.また抗HTLV-I抗体陽性,手術後の末梢血には異型リンパ球が数%認められ,成人T細胞白血病(ATL)の胃浸潤と考えられた.本例のようにATLで胃粘膜層に限局した浸潤例の報告はきわめて少なく,しかも術前にEUSを施行し得た症例の報告はみられないようである.EUSは胃壁の断面の描出が可能であり,悪性リンパ腫の初期像,発育過程などを検討するうえでも有用であると考えられた.
  • 萩原 秀紀, 久保 光彦, 野呂 義隆, 辻本 正彦, 石橋 一伸, 笠原 彰紀, 林 紀夫, 川野 淳, 房本 英之, 伊藤 昭和, 鎌田 ...
    1991 年 33 巻 3 号 p. 549-553_1
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は78歳男性.抗潰瘍療法及び広域抗生剤使用後,噴門部の粘膜下腫瘍頂部に潰瘍と黄白色の不整隆起を生じ,生検で平滑筋腫に生じた胃カンジダ症と診断した.アムホテリシンB経口投与は副作用を認め,ミコナゾール静注は無効であったが,内視鏡的ミコナゾール局注療法によりカンジダ症は治癒した.胃平滑筋腫上の潰瘍性病変にカンジダ感染を認めた例は他に報告がなく,限局性胃カンジダ症に対し同療法は有効であると考えられた.
  • 貞本 由美, 田中 信治, 島本 丈裕, 鈴木 武彦, 渡辺 千之, 藤堂 祐子, 岡本 志朗, 山本 剛荘, 小笠原 秀和, 豊島 仁, ...
    1991 年 33 巻 3 号 p. 554-561
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.内視鏡検査で胃体上部大彎後壁にbridging foldを伴う隆起性病変を認め粘膜下腫瘍と診断した.糊莫下組織生検を予定したが,超音波内視鏡で病変は胃外性血管性腫瘤と判明し,行わなかった.腹腔動脈造影で脾門部に1cmの嚢状動脈瘤を認め,脾動脈瘤が胃糊莫下腫瘍様所見を呈したと確診した.糊莫下鵬の診断に対し粘膜下生検は有用であるが安全に施行するために施行前の超音波内視鏡が必要と考えられた.
  • 冨松 久信, 井手 一敏, 古賀 俊彦, 岩下 明徳
    1991 年 33 巻 3 号 p. 562-566_1
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は54歳,男性.人間ドッグ胃X線検査で胃ポリープ指摘され受診.胃X線,内視鏡検査にて胃角部後壁に山田II型の隆起性病変を伴う,表層拡大型印環細胞早期胃癌と診断した. 病理学的診断はIIc+I型,印環細胞癌,深達度sm,ly0,v0で,癌の浸潤範囲は体下部後壁小彎を中心に約65×110mmの表層拡大型胃癌であった. 隆起性病変部の大きさは約12×12mmで深達度はm,粘膜筋板は保たれ潰瘍形成は認めなかった.隆起部中層,深層,基部は低分化型腺癌が充実髄様状の増殖を示し,隆起部表層は印環細胞癌が結合性を失わず腺房状,充実性の組織形態を示し発育したために隆起型を呈したものと推測した.本例は印環細胞癌が隆起型の発育を示しさらに表層拡大型の広がりを呈した早期胃癌であり,極めて稀な症例と考え報告した.
  • 斎藤 俊平, 竹内 文英, 高井 重紀, 若林 修, 佐々木 香織, 島田 直樹, 藤田 淳, 足立 智昭, 金谷 晶子, 鈴木 潤一, 日 ...
    1991 年 33 巻 3 号 p. 567-570_1
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は77歳女性,食後の心窩部不快感にて来院.腹部単純写真にて,いわゆるpneumobilia像を呈し,入院した.ERCにて総胆管結石,傍Vater乳頭部憩室,及び同部に開口する副肝管を認め,開腹術を施行した.手術所見では上記副肝管は肝右葉前区に交通し,更に胆嚢は完全に欠損しており,1)右副肝管,2)無胆嚢,3)憩室内総胆管開口,4)総胆管結石,と診断した.文献上同様の症例は報告されておらず本症例のような重複奇形は非常に稀と考えられる.
  • 足立 経一, 三上 昌之, 宇野 弘二, 小林 博夫, 平川 和也, 服部 修三, 福本 四郎, 島田 宜浩
    1991 年 33 巻 3 号 p. 573-576_1
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は,79歳男性.胃集検にて異常を指摘され来院.上部消化管X線検査,内視鏡検査にて十二指腸下行脚,傍乳頭に細長い突起物を認め,内視鏡的ポリペクトミーを行った.この突起物は,病理組織学的に正常十二指腸粘膜,粘膜筋板,粘膜下層より成り,稲本らが提唱したIntraluminal duodenal protrusion(IDP)に相当すると考えられた.本例は海外および本邦を通じ,第3例目の報告と考えられ,文献的考察を加え報告した.
  • 澤岡 均, 松田 裕之, 内藤 雅文, 平松 直樹, 金 邦源, 東 正祥, 藤田 峻作, 満谷 夏樹
    1991 年 33 巻 3 号 p. 577-582_1
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は50歳の男性で,主訴は発熱と全身倦怠感.内視鏡検査で十二指腸球部後壁に潰瘍形成を伴った隆起性病変を認め,生検組織からびまん性大細胞型悪性リンパ腫と診断した.CT・骨シンチ等の検査で,肝・椎骨・肋骨・腸骨に転移巣を認めた.化学療法(VEPAM,ABEP)・放射線療法で十二指腸・肝病変は消失したが,骨病変は不変であった.十二指腸原発の悪性リンパ腫はきわめて稀で,本邦報告は自験例を含め46例を数えるのみである.
  • 高崎 元宏, 田中 優治, 上野 邦夫, 横田 哲夫, 依光 幸夫, 森田 荘二郎, 武田 功, 徳岡 裕文, 堀見 忠司, 近藤 慶二
    1991 年 33 巻 3 号 p. 585-593_1
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は79歳の男性で,20年来糖尿病の治療を受けており,右上腹部の張った感じを主訴として来院した.腹部超音波および腹部CT検査で胆嚢腫大を認め,膵体尾部の存在を指摘できなかった.内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)の膵管像で副膵管は正常で,主膵管は全長7.5cmと異常に短く,左上方へ向って偏位した走行を示したが,壁不整,狭窄,拡張,蛇行などの所見は認めなかった.胆管像で,胆嚢管は三管合流部近傍で僅かに造影され,胆嚢は造影されなかった.腹部血管造影で,大膵動脈あるいは尾膵動脈のいずれかとみなされる血管像を認めた.手術所見では,上腸間膜静脈の左側に膵実質は存在せず,胆嚢管内に小腫瘤を触知し,胆嚢摘出術,胆嚢管の可及的切除および一群リンパ節の郭清術を施行した.胆嚢管腫瘤は病理組織学的に腺扁平上皮癌と診断され,深達度はssであった.本症例は広義の膵体尾部欠損症に属し,加えて原発性胆嚢管癌を合併した稀な症例であった.膵体尾部欠損症の本邦報告例のうちERCPが施行され,手術あるいは剖検でその診断が確認されたものは,自験例を含めて29例であったが,原発性胆嚢管癌の合併例としては,本症例が本邦における第1例と考えられた.
  • 大川 清孝, 北野 厚生, 中村 志郎, 小畠 昭重, 押谷 伸英, 松本 誉之, 佐々木 義仁, 井上 直, 大森 国雄, 菅 保夫, 宮 ...
    1991 年 33 巻 3 号 p. 594-598_1
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    患者は74歳,男性.1986年3月に左下腹部激痛と血性下痢を主訴に入院した.手術の結果,閉塞性大腸炎をともなうS状結腸癌と診断された.同年10月の大腸内視鏡にて盲腸に数mm大の不整形発赤斑を認めangiodys-plasiaと診断した.その後1988年7月,1990年1月の観察では形の変化と増大傾向が見られたが,出血は見られなかった.内視鏡的に経過を追い形態変化を観察し得た報告はまれであり貴重な症例と考えられた.
  • 和田 浩一, 和田 孝次, 今村 敏郎, 南原 繁
    1991 年 33 巻 3 号 p. 599-604_1
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    内視鏡的に虫体を摘出,治療した大腸アニサキス症の3例を報告した.症例は全例男性で,年齢は40歳,59歳,45歳であった.2例は鯖,1例はハマチを生食後,腹痛が出現し来院した.胃透視,胃内視鏡では著変を認めなかったが,ガストログラフィンによる注腸造影を施行したところ,3例とも上行結腸に広範な壁肥厚と狭窄像が認められ,引き続いて行った大腸内視鏡検査で発赤,腫脹した粘膜に虫体の穿入を認めたため生検鉗子で摘出した.虫体は全例Anisakis simplexと同定され,摘出後症状は速やかに軽快した.内視鏡的に虫体を確認し,摘出し得た報告は稀であるが,本症の診断と治療におけるガストログラフィンによる上部及び下部消化管造影と,緊急内視鏡検査の意義を強調したい.
  • 川崎 厚, 飯田 三雄, 平川 雅彦, 松井 敏幸, 八尾 隆史, 岩下 明徳, 藤島 正敏
    1991 年 33 巻 3 号 p. 607-613_1
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    消化管病変としてアフタ様潰瘍のみを認め,その後典型像に進展したCrohn病の2例を報告する.症例は29歳男性と20歳女性で,共に初診時消化管X線ならびに内視鏡検査にて胃前庭部から大腸まで広範囲にアフタ様潰瘍を認めた.症例1は初回検査より2年6カ月後に結腸および回腸に縦走潰瘍を認め,症例2も2年8カ月後に回腸に縦走潰瘍を認めた.以上の2例よりアフタ様潰瘍がCrohn病の初期病変であることが示唆された.
  • 中川 国利
    1991 年 33 巻 3 号 p. 614-618_1
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     術後の難治性瘻孔症例31例に対して,瘻孔内視鏡検査を施行し,その臨床的意義と限界について検討した.検査は胆道鏡を用い,生理食塩水にて瘻孔内を洗浄しながら観察した.膿瘍腔を認めない例は13例で,内2例で癌と粘液腫の再発を組織学的に証明しえた.他の11例ではドレーンを抜去し,平均5.2日で瘻孔は閉鎖した.一方,膿瘍腔を認めた18例では,膿瘍腔内の絹糸や壊死組織などの感染源を除去した.さらにドレーンを効果的な場所へ誘導し,連日瘻孔内を洗浄した.その結果,感染源を除去できた例では,早期に膿瘍腔は消失した.しかし,消化管縫合不全例や広い死腔例では,瘻孔閉鎖に長期間を要した.また骨髄炎が感染源の例では,瘻孔は閉鎖しなかった.さらに技術的な問題点としては,複雑に屈曲・分岐した瘻孔例ではドレーン誘導が困難であった.以上,瘻孔内視鏡検査には若干の限界もあるが,臨床的意義は非常に高いと思われた.
  • 小黒 八七郎, 崎田 隆夫, 竹本 忠良, 並木 正義, 井田 和徳, 川井 啓市, 田尻 久雄, 福富 久之, 三輪 剛, 渡辺 豊, 伊 ...
    1991 年 33 巻 3 号 p. 619-628
    発行日: 1991/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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