日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
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58 巻, 9 号
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総説
原著
  • 波佐谷 兼慶, 土山 寿志, 中西 宏佳, 青柳 裕之, 酒徳 光明, 太田 肇, 蓑内 慶次, 松田 尚登, 又野 豊, 鷹取 元, 加賀 ...
    2016 年 58 巻 9 号 p. 1404-1412
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/20
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    (目的)早期胃癌ESD後の異時性癌を早期発見するための適切な内視鏡間隔は不明である.内視鏡治癒切除後の異時性癌をHelicobacter pylori(以下HP)感染状態別に調査し,適切な内視鏡間隔について胃温存の観点から検討を行う.(方法)初発早期胃癌ESD治癒切除症例のうち規準を満たしたHP除菌成功群455例,持続感染群556例,陰性群291例を対象とし,異時性癌累積発生率を比較した.その上で内視鏡治療治癒切除基準外となった異時性癌の割合を内視鏡間隔ごとに検討した.(結果)88例に異時性癌がみられ,3群の累積発生率に差は認めなかった.内視鏡治療治癒切除基準外症例は10例みられ,内視鏡間隔による発生率の差は認めなかったが,その内視鏡間隔中央値は12.2カ月(5.5-17.4)とほぼ1年を中心に分布していた.(結論)異時性癌発見のために現状ではHP感染状態にかかわらず,同様の臨床的対応が望ましい.年に1回の内視鏡では治癒切除が得られない症例が一定数発生する.胃温存の観点からは1年より短期のサーベイランスも検討する価値があると考えられた.

症例
注目の画像
手技の解説
  • 藤原 純子
    2016 年 58 巻 9 号 p. 1440-1452
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/20
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    表在型食道癌の約6割を占める0-Ⅱc型病変は,EP~SMまでの幅広い深達度を示し,深達度評価が最も重要な病型である.深達度診断をする際には,まず,通常観察で病変の形態,可動性などからおおよその深達度を予測する.T1a-MM以深への浸潤が疑われる場合には,凹凸の目立つ部位に対して拡大観察やEUSを施行し,最深部の深達度,浸潤幅,浸潤様式などを予測する.微小浸潤例ではこの手法を用いても,浸潤を確信することは難しい症例も存在するが,通常観察と拡大観察の間に乖離がある病変,陥凹内に厚みのある病変,typeRを示す病変では,血管変化からは深達度評価が難しい場合があり,EUSが有用である.いずれの方法にも単独では限界があり,総合的に判断することが正確な診断を行う上で重要である.

  • 向井 俊太郎, 糸井 隆夫
    2016 年 58 巻 9 号 p. 1453-1465
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/20
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    重症急性膵炎後のwalled-off necrosis(WON)は重篤な局所偶発症であり,感染例や有症状例は侵襲的治療が必要となる.近年,こうしたWONに対するEUSガイド下ドレナージと内視鏡的ネクロセクトミーによる経消化管的治療が開発され,良好な治療成績が得られている.現在では,専用の大口径メタルステントを用いる方法や追加内視鏡ドレナージテクニックにより,多くのWONは内視鏡治療単独で治癒可能となっている.しかし手技に伴う重篤な偶発症も経験されるため,内視鏡治療に固執することなく,経皮的アプローチや外科手術も考慮した広い視野での治療戦略が必要である.本稿では,WONに対するわれわれの内視鏡治療戦略と手技のポイントについて概説する.

資料
  • 古田 隆久, 加藤 元嗣, 伊藤 透, 稲葉 知己, 小村 伸朗, 潟沼 朗生, 清水 誠治, 日山 亨, 松田 浩二, 安田 一朗, 五十 ...
    2016 年 58 巻 9 号 p. 1466-1491
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/20
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    2008年(平成20年)より2012年(平成24年)の5年間における消化器関連の偶発症数は,総検査数17,087,111件に対して12,548件(0.073%)であった.観察のみの偶発症の発生率の0.014%に対し,治療的な内視鏡検査での偶発症発生率は0.67%と約50倍高かった.死亡事案は220件あり,特に70歳以上の高齢者での死亡が164件と全体の3/4をしめた.

  • 山本 頼正, 藤崎 順子, 大前 雅実, 平澤 俊明, 五十嵐 正広
    2016 年 58 巻 9 号 p. 1492-1503
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/20
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    ヘリコバクター・ピロリ菌は慢性的な胃炎を惹起し,それに引き続き胃癌を引き起こす要因のひとつである.本邦では衛生環境の改善や,除菌治療の普及により,その感染率は徐々に低下している.しかし最近,ピロリ菌未感染の胃癌が報告されており,その頻度は全胃癌の0.42-5.4%であり,おおよそ1%である.ピロリ菌陰性胃癌の診断基準は,報告によって様々であり,いまだ確立されていない.われわれは,ピロリ菌陰性胃癌の必要最小限の診断基準として,内視鏡所見,病理所見,血清ペプシノーゲン法の2つ以上で陰性で,尿素呼気テストまたは血清IgG抗体が陰性,かつ除菌歴がない事を提案する.ピロリ菌感染以外の胃癌の原因としては,生活習慣,ウイルス感染,自己免疫性疾患,遺伝的疾患などいくつかの要因が関連することが知られているが,ピロリ菌陰性胃癌の主な原因はいまだ不明である.

    ピロリ菌陰性胃癌は,未分化型癌の頻度が高く,主に印鑑細胞癌であり,比較的若年者の胃中―下部の褪色調病変で,平坦・陥凹型の肉眼型が多い.一方で分化型癌は,未分化型癌に比して相対的に高齢者の胃中-上部に認める胃底腺型胃癌であり,粘膜下腫瘍様や陥凹型の肉眼型である.ピロリ菌陰性胃癌を早期診断することで,内視鏡切除などの低侵襲治療が可能となるため,内視鏡医はピロリ菌陰性胃癌の臨床所見,内視鏡所見について十分理解しておくことが重要である.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 斎藤 豊
    2016 年 58 巻 9 号 p. 1515
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/20
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    【目的】大型腫瘍に対する広範囲EMR(WF-EMR)は120mmまでの大腸粘膜内腫瘍に対する外科手術の代替治療であるが,高い潜在的な再発率が問題視されてきた.

    目的は成功したWF-EMRの4カ月(早期)と16カ月(晩期)の再発率を明らかにし,その危険因子と臨床的意義を明らかにすること.

    【方法】7つの教育病院に広範囲EMR目的に紹介された2cm以上の無茎性あるいはLSTに対する進行中の多施設前向き,ITT解析試験.サーベイランス内視鏡(SC)はWF-EMR後,4カ月後(SC1),16カ月後(SC2)に施行され,内視鏡画像記録とEMR瘢痕に対しての生検を行った.

    【結果】1,134人の連続的な患者が登録され1,000病変のEMRが成功し,それらの患者のうち799人がSC1を受診した.670人は再発を認めなかった.早期の再発あるいは遺残腫瘍は128人(16.0%,95% CI 13.6-18.7%)に認めた.1例は不明.再発・遺残腺腫は71.7%が微小病変であった.多変量解析では40mm以上,APCの使用と術中出血が再発の危険因子として抽出された.670例の再発なし患者のうち426例にSC2が施行され,晩期再発が17例(4.0%,95% CI 2.4-6.2%)に認められた.全体としては再発・遺残腺腫に対して145例中135例(93.1%,95% CI 88.1-96.4%)で内視鏡的治療が成功した.

    仮に最初のEMRが成功した場合,外科手術が必要なSM浸潤がなければ,16カ月の内視鏡サーベイランスにおいて98.1%(95% Ci 96.6-99.0%)の患者で腺腫の再発がなく,手術を回避できる.

    【結論】WF-EMRにより,早期の腺腫再発を16%に認めたが,通常局所で小さく,危険因子も判明した.晩期再発は4%に認め,最終的には93%の症例で再発は内視鏡的に制御可能であった.WF-EMR後の再発は,厳重な内視鏡経過観察をすれば臨床的には大きな問題はなく,高い成功率で内視鏡的に再治療が可能であった.

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