日本消化器内視鏡学会雑誌
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30 巻, 2 号
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  • 清水 明浩, 三木 一正, 岡 博
    1988 年 30 巻 2 号 p. 291-302
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     当科外来患者187例を対象に,採血および内視鏡直視下に胃粘膜を生検採取し,病理組織学的分類および血清・生検組織内ペプシノゲンI・II(PGI・PGII)値測定を行った.また,後日95例に内視鏡的Congoredtestによる腺境界分類,その内84例では胃液検査を施行し,各種胃・十二指腸疾患の病態生理を形態学的・生化学的および生理学的側面から検討を加え,以下の結論を得た.(1)疾患別検討では各種胃・十二指腸疾患にそれぞれ特有の背景粘膜変化および胃液酸・ペプシン分泌動態を認めた.(2)相互の関連性の検討では,血清ペプシノゲン値,粘膜内ペプシノゲン値,胃液分泌量,病理組織学的変化および腺境界分類等の間で,互いに密接な相関を認めた.(3)血清および粘膜内ペプシノゲンI・II値を測定することは,胃液検査,内視鏡的Congoredtestおよび病理組織学的検査とともに各種胃・十二指腸疾患の病態生理の解明,胃液検査の簡略化および萎縮性胃炎の血清学的診断等に有用であると考えられた.
  • 土佐 寛順, 嶋田 豊, 寺沢 捷年, 三瀦 忠道, 田中 三千雄
    1988 年 30 巻 2 号 p. 303-313
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     舌苔と胃病変との関連を調べるために,疾患を問わない198例について,同時点での舌苔の所見と内視鏡所見とを比較検討した. 舌苔はリングフラッシュストロボで近接撮影を行い舌苔の厚さ及び色調について評点化した.内視鏡所見は,胃びらん,表層性胃炎,萎縮性胃炎について肉眼所見より評点化した.そして舌苔及び内視鏡所見の各々の項目を推計学的に検討した.また胃潰瘍については,その有無と舌の性状について検討した.さらに内視鏡検査を複数回施行した31例について,胃びらんと舌苔の変化の推移について検討した. その結果,胃びらん,表層性胃炎が著しくなるにつれて,舌苔は厚く,黄色調を強める傾向がみられた.また萎縮性胃炎が強くなると,逆に舌苔が薄くなり,色調は白色を示すものが多かった.これらのことから舌苔は胃の比較的急性の変化(炎症)に呼応して変化することが示唆され,舌苔の性状を観察することは一定の診断的意義を有するものと考えられた.
  • 細川 治, 山道 昇, 中泉 治雄, 武田 孝之, 津田 昇志, 山崎 信
    1988 年 30 巻 2 号 p. 314-320_1
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     1971年から1985年までの15年間に当施設で手術治療を行った残胃早期癌は12例である.この12例の切除標本を検索して,残胃吻合部において吻合部ポリープ状肥厚性胃炎GCPと癌が立体的に重なって存在した症例を,GCPと残胃早期癌が合併した症例として検討すると,3例がこれに該当した.3例ともにBillroth II法再建術を受けて20年以上経過した症例であり,GCPは吻合部大彎を中心に発達しており,癌はこの表層側に存在した.癌の肉眼型は2例が隆起I型,1例がIIa+IIc型を呈しており,組織型は高分化管状腺癌,中分化管状腺癌,印環細胞癌が各々1例であった.この3例の癌の部位,GCPの部位,腺窩上皮の部位,固有腺壁細胞の部位のCEA,CA19-9の免疫組織学的局在を検索したところ,癌,GCPは陽性であり,腺窩上皮,壁細胞は陰性であった.GCPと癌の関連性が免疫組織学的にも裏付けられた.
  • 大門 佳弘, 吉田 隆亮, 玉置 瑞枝, 比嘉 昭彦, 原口 靖昭, 田仲 謙次郎
    1988 年 30 巻 2 号 p. 321-326
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃潰瘍の病態を検討する目的で,レーザードップラー法を用いて胃粘膜血流を測定した.対象は,胃潰瘍患者47名,正常者30名である.測定部位は胃体部,胃前庭部,胃角部と潰瘍の辺縁(潰瘍縁より5mm以内)と周辺(潰瘍縁より2cm)である.正常胃粘膜の粘膜血流は胃前庭部より胃体部に多く,また胃体部小彎より大彎に多かった.潰瘍各ステージの潰瘍辺縁の粘膜血流は,潰瘍治癒過程期にもっとも高値を示し,瘢痕期にいたり低下した.潰瘍周辺と辺縁の粘膜血流の比較では,潰瘍急性期,瘢痕期には辺縁と周辺粘膜に血流の差はないが,治癒過程期には周辺粘膜に比べ辺縁で血流増大がみられた.レーザードップラー法を用いた胃潰瘍の粘膜血流測定は,簡便さ,再現性の面から胃粘膜防御機能検討に有用な測定法と考えられた.
  • 浅江 正純, 山本 誠己, 稲生 誠樹, 橋本 雅夫, 坂口 雅宏, 児玉 悦男, 川嶋 寛昭, 青木 洋三, 河野 暢之
    1988 年 30 巻 2 号 p. 327-336
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)は現在広く行われているが,それを機能的に評価した報告は比較的少ない.そこでTc-99m-E-HIDAを使用した胆道シンチグラフィーを用いてEST15例と経十二指腸的乳頭括約筋形成術8例を,胆管から十二指腸への胆汁排出という術後の機能面から比較検討した.総胆管末端部および十二指腸に関心領域(ROI)を設定した場合,両ROIでのtime-activitycurveのパターンは,両術式ともに健常者のような明らかなピークを示さず,非常に類似していたことから,ESTにおいても十分な切開が行われれば,経十二指腸的乳頭括約筋形成術と変わらない総胆管末端部括約筋機能の廃絶効果が得られると考えられた.また,EST後の効果の判定に胆道シンチグラフィーが有用と考えられた.
  • 神谷 順一, 二村 雄次, 早川 直和, 塩野谷 恵彦
    1988 年 30 巻 2 号 p. 337-345
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     経皮経肝胆道鏡検査(PTCS)において拡張・蛇行した血管(不整血管)は癌の浸潤をうけた胆管粘膜に高率かつ特徴的に認められる.この現象を解明する目的で,35例の切除標本内の胆管粘膜を実体顕微鏡下に観察した.35例の内訳は,良性疾患および胆管浸潤のない悪性腫瘍(A群13例),胆管癌(B群14例),胆管浸潤を伴う膵癌・胆嚢癌(C群8例)である.不整血管はA群では認めず,B群13例(93%)とC群6例(75%)の19例の腫瘍露出面で認めた.不整血管の直径は太いもので50~200μであった.不整血管の分布は,全体型,辺縁型,中心型の3型に分けられ,PTCSで容易に不整血管を認識できる全体型と辺縁型は16例(84%)を占めていた. 不整血管は腫瘍露出面においてのみ観察されることから,腫瘍血管であり.PTCSにおける重要な悪性所見のひとつであると思われる.
  • 光島 徹, 横内 敬二, 中元 和也, 阿部 陽介, 永谷 京平, 有馬 信之, 横田 敏弘, 発地 美介, 亀田 俊忠
    1988 年 30 巻 2 号 p. 346-354
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     私達の行っている無透視・無麻酔全人腸内視鏡検査法simpletotalcolonoscopyの有効性を評価するために検討を行った.対象は1983年4月より1987年3月までに施行された大腸内視鏡検診4,651回である.これら4,651回の検査のうち4,540回97.6%は,比較的短時間にて回盲部に到達し全大腸を観察し得た.しかし,111回2.4%はtotalcolonoscopyを失敗し注腸X線検査に変更された.回盲部到達不能の原因は,検査時における被検者の苦痛が66.7%と最も高率であった.次いでfiberscopeの長さ不足23.6%,以下大量の残便4.5%,癌性狭窄1.8%の順であった. 私達の方法は以上のような問題点は有するものの,大多数の被検者にとってはほとんど非侵襲的で,特に人間ドック等検診目的には最も適した大腸検査法と考えられた.
  • 加藤 隆弘, 井田 和徳, 奥田 順一, 関本 郁史, 安藤 貴志, 加藤 周司, 宮永 実, 西脇 和善
    1988 年 30 巻 2 号 p. 355-360_1
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     色素内視鏡を用い,表層性胃炎の一指標とされるKammrötung(KR)の内視鏡像につき検討をおこない,以下の結果を得た.(1)KRは上部消化管内視鏡検査施行例3,443例中,211例(6.1%)に認められた.(2)KRに類似した線状発赤は体部腺領域のみならず,幽門腺領域にも認められた.(3)KRの背景胃粘膜はC0~C1と胃底腺粘膜に萎縮の拡大していないものが大部分を占めた.(4)KR上には,体部では線状白苔,線状陥凹,前庭部ではタコイボ型のビランおよび両域のKR上に小区の消失,不整など,上皮欠損の存在したことを示す所見が高頻度にみとめられた.(5)KR間の非発赤粘膜にも胃小区の不整がみられ,KR上のみならず,KR間の粘膜にも何らかの表層性の変化が起こりやすいことが示唆された.
  • 大坂 直文, 白木 正裕, 芦田 潔, 折野 真哉, 林勝 吉, 奥村 泰啓, 松本 章夫, 鍋島 敏也, 平田 一郎, 大柴 三郎
    1988 年 30 巻 2 号 p. 363-367_1
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     東芝一町田社製電子内視鏡(TGS-50D)で得られた胃潰瘍画像に対し,各種の輪郭強調を試みた.輪郭強調法として,電気的アナログ処理であるrecordenhancerを用いる方法とコンピューターを使用したデジタル画像処理である微分処理法,unsharp masking法,およびgreenhistogram strech法を行った.recordenhancerとunsharp masking法を用いた画像では細線が鮮明化され,潰瘍周囲の再生模様まで描出可能であった.微分処理法は細線の鮮明化には適さず,胃粘膜が微細斑状模様として描出された.微分処理法とunsharp masking法において,RGB成分に対する処理とHSI成分に対する処理の相違を検討したところ,大きな差異は認めなかったが,HSI成分に対する処理では色調の違いも若干強調される傾向がみられた.またgreenhistogram strech法では視覚的には良好な画像を得たが,輪郭を強調するという目的からは満足する結果を得られなかった.366 研究大坂直文ほか Vol.30(2),Feb.1988 今後計測やパターン認識へと画像処理を進めていく上で,これらの処理の有用性と可能性に期待された.
  • 英尚 良, 民野 均, 根井 仁一
    1988 年 30 巻 2 号 p. 368-374
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    従来からの抗潰瘍薬であるコランチル,ウガロン,アルサルミンで治療した対照群81例と各種のH2-blockerで治療したH2-blocker群64例を対象とし,両群での治癒経過を比較検討し,H2-blocker出現後の胃潰瘍の難治化に関与する諸要因の分析を試みた.対照群での治癒遷延化には,年齢,性別,飲酒量,喫煙量および潰瘍の形,大きさ,数,部位など,従来からいわれている要因の関与が考えられたが,H2-blocker群では上記の要因の関与度は少なかった.そこで,3カ月以降に各種薬剤の投与によって治癒した治癒遷延例6例と,いかなる治療によっても治癒しなかった未治癒例7例を比較すると,両者の間に差を認めたのは病悩期間と再発回数のみであった.すなわち,いかなる治療によっても治癒しない真の難治性潰瘍の特徴は,病悩期間が10年以上で,3回以上の再発を認めることであった.
  • 上野 文昭, 橋詰 新子, 加藤 真明, 三神 美久, 高橋 裕, 荒川 正一, 岩村 健一郎
    1988 年 30 巻 2 号 p. 375-379
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     近年,腸管ではほとんど吸収も分泌も受けない特殊組成電解質液が開発され,これを用いた全腸管洗浄による大腸内視鏡の前処置法が行われるようになった.この方法は簡便性,効果,被検者の忍容性の点で従来の前処置法より優れていると考えられる.この特殊組成電解質液には腸管での水の吸収を阻害する目的でポリエチレングリコール(PEG)4000が含まれている.実験動物において大量のPEGは毒性を呈することが知られているため,この前処置法に伴うPEGの吸収を検討することは安全性の確認の上で重要である.われわれは,大腸内視鏡前処置として240g以下のPEG4000を経口摂取した7症例において血清濃度を,13症例において尿中排泄率を測定した.採血は前処置直前,直後,1,3,12時間後に行い,尿検体は前処置開始より48時間後まで採取した.PEG4000血清濃度は6例のすべての検体で定量限界(10μg/ml)未満で,残る1例では高脂血症のため測定不能であった.尿中排泄率は13例の平均で0.09%であった.これらの結果から,PEG4000の消化管からの吸収は極く微量で,大腸内視鏡前処置に用いられる通常投与量では毒性を呈し難いことが判明した.
  • 広岡 大司, 大地 宏昭, 植高 文夫, 岸本 明, 斉藤 元泰, 岡村 良邦
    1988 年 30 巻 2 号 p. 380-386
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     腹側膵管と背側膵管の癒合不全についてはPancreasdivisumとして多くの報告をみるが,今回著者らは不完全な合流異常(incomplete-fusion)も,膵炎発生に関与していることを報告する. このincompletefusionは合流部狭窄型と分枝合流型に分けられた. 合流部狭窄型とは腹側・背側両膵管の合流部で狭窄を形成しているタイプで分枝合流型とは腹側,背側両膵管のいずれかとその分枝が合流しているタイプである. 合流部狭窄型は4例経験し,すべてに膵炎の発生がみられ,分枝合流型は6例経験し,4例に膵炎の発生をみた.
  • ―内視鏡所見を中心に―
    星加 和徳, 鴨井 隆一, 加藤 智弘, 萱嶋 英三, 小塚 一史, 長崎 貞臣, 藤村 宜憲, 宮島 宣夫, 島居 忠良, 内田 純一, ...
    1988 年 30 巻 2 号 p. 387-392_1
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道結核の1例を経験した.症例は,52歳男性で嚥下障害を主訴として当院に受診した.食道造影では,中部食道に2.1×1.1cm大の周辺粘膜の盛り上がりを伴う陥凹性病変を認めた.内視鏡検査では,門歯列より31cmの食道右側壁に白苔に被われた不整な潰瘍を認め,潰瘍の境界は不明瞭で周辺粘膜は周堤状になだらかに盛り上がっていた.同部の生検組織にて乾酪性肉芽腫を認め,生検組織の培養により結核菌が証明された.食道結核と診断し抗結核剤が投与され,1カ月後には潰瘍性病変は瘢痕となっているのが確認された.食道結核は稀な疾患で,臨床例の報告は自験例を含め17例にすぎず,病変部の生検組織より乾酪性肉芽腫と結核菌が証明された例としては,自験例が本邦第1例目である.
  • 天野 洋, 船曳 孝彦, 落合 正宏, 杉上 勝美, 藤田 真司, 亀井 克彦, 福井 博志, 二渡 久智, 松原 俊樹, 山口 久, 長谷 ...
    1988 年 30 巻 2 号 p. 395-400_1
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道X線所見上,明らかな所見なく,内視鏡検査により発見された1.0×1.4cmのmm食道早期癌の経験を報告する.症例は59歳男性,アルコール,タバコの大量常用者で,上腹部痛のため上部消化管X線検査を行なったが所見なく,念のため行なった内視鏡検査で下部食道に表在陥凹型食道癌をみとめ,手術を施行した.mm,n0,長径1.0cm,横径1.4cmの早期癌であった.主病巣の肛門側にルゴール散布により不染部を認め,病理組織検査でsevere dysplasiaと判定された.主病巣,severe dysplasia共に高度のリンパ球浸潤を伴っていたが,免疫組織染色では主病巣にのみCEA陽性所見をみとめ,異型上皮にはみとめなかった.以上の所見は異型上皮が前癌状態であることを示唆すると同時に,CEAによる癌,非癌鑑別の可能性を含む興味深い所見と考えた.
  • 大沼 俊和, 伊藤 尚雄, 山瀬 裕彦, 伊藤 順二, 沼田 正樹, 近藤 彰徳, 武田 敦, 中澤 三郎, 森田 敬一
    1988 年 30 巻 2 号 p. 401-409
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は64歳の女性で超音波検査で胆嚢体部に表面型胆嚢隆起性病変を指摘された.超音波内視鏡検査では胆嚢粘膜層の肥厚として描出された.経皮経肝胆嚢鏡では病変は胆嚢体部から底部方向にかけて存在し,水浸下の観察では表面は凹凸不整で微細乳頭状の表面を有し毛細血管の拡張と発赤を認めた.CO2下でのインジゴカルミンによる色素内視鏡検査では,病変は大小不同の小顆粒の集合であり,底部ではfinereticularpattemを有する正常粘膜との境界が描出され,頸部には大きさのそろった顆粒の配列を認め,頸部方向への広がりはないと診断した.さらに,胆嚢二重造影でも病変部は不整な顆粒状粘膜として描出された.生検では異型上皮の診断であったが,総合的に癌と診断して拡大胆摘術および所属リンパ節郭清を行った.癌はほとんど粘膜面にとどまっていたが一部pm,ssへの浸潤がみられ,周囲には中等度から軽度の異型上皮が認められた.
  • 松本 収生, 松本 好市, 古屋 正, 平出 典子, 重盛 憲三
    1988 年 30 巻 2 号 p. 410-415_1
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は50歳,男性.下血と右下腹部痛を主訴とし,注腸造影所見にて上行結腸に3.0×4.5cmの陰影欠損を認めた.辺縁は一部に切れ込みを認めるも,全体的に平滑で,圧迫により形状の変化がみられた.大腸内視鏡所見では上行結腸に回盲部付近より肛門側に垂れ下がったような形状を呈した隆起性病変を認めた.表面は平滑,淡黄色で,生検時非常に軟らかく,伸びてくるような感じを受けた.粘膜下腫瘍,特に脂肪腫を疑い,回盲部切除術を施行した.切除標本では腫瘤は4.0×4.0×0.8cm,広基性で軟らかく,波動があり,正常粘膜に覆われていた.病理組織診断にて嚢胞性リンパ管腫と診断された. 大腸リンパ管腫の報告例は欧米では32例,本邦では自験例を含めて29例のみで,極めて稀な疾患であり,本症の診断には大腸内視鏡にて嚢胞性病変の特徴である透光性,波動,変形などの所見をとらえることが重要であると思われた.
  • 藤本 良知, 北村 裕展, 藤仙 佳秀, 馬場 忠雄, 細田 四郎, 岡部 英俊
    1988 年 30 巻 2 号 p. 416-420_1
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     瘍性大腸炎(以下UC)の経過中に大腸粘膜生検組織よりCytomegalic Inclusion Body(以下CIB)を認めたので,その病的意義について免疫組織学的に検討した.当科のUC58例中,男2例,女1例の計3例にCIBの局在を認めた.いずれも罹病期間は長く,かつ重症例で,その内2例ではステロイドホルモン,アザチオプリン等の免疫抑制剤を投与していた.生検材料のホルマリン固定パラフィン切片でCytomegalovirus(以下CMV)抗原について抗CMV抗体を用い酵素抗体Peroxidaseantiperoxidase(以下PAP)法にて検討した.UCにおけるCIBの局在は潰瘍の近傍並びに小血管内皮細胞に認めた.これらの所見は潰瘍の成因および増悪に関与していると考えられた.CMVはHerpesVirus科に属しており,成人の約70%に不顕性感染が認められており,ステロイドホルモン,アザチオプリン等の免疫抑制剤の投与を契機に再活性化したものと考えられる.
  • 山下 智省, 児玉 隆浩, 沼義 則, 柳原 照生, 西村 秀男, 亀井 敏昭, 竹本 忠良
    1988 年 30 巻 2 号 p. 421-425_1
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     担癌生体に合併したアメーバ性大腸炎の劇症型の経験をたどった剖検例について報告した.患者は68歳女性.食道癌に対する放射線治療後,胸水貯留による呼吸困難のため入院治療中,顕性の下血を認めるようになった.下血量はしだいに増加し,イチゴジャム様を呈するようになった.大腸内視鏡検査では,全周性のタコイボ状の隆起性病変と比較的浅い潰瘍の多発を認め,生検組織で壊死物質に混じてEntamoeba histolyticaの虫体と思われる構造物を認めた.アメーバ赤痢と診断し,Metronidazoleの投与を行ったが,下血は増加し続け,全身状態は徐々に悪化し,入院36日目に死亡した.剖検では横行結腸から直腸に至る無数の隆起性病変と潰瘍を認めた. 以上のように,本邦では劇症型の経過をとるアメーバ性大腸炎の報告は少なく,稀な症例と思われる.
  • 鬼塚 俊夫, 小原 淳, 市川 和男, 市川 正章
    1988 年 30 巻 2 号 p. 426-430_1
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は35歳女性で,下腹部痛,血便を主訴に来院し,1983年1月29日入院した.入院時,左下腹部に鶏卵大の腫瘍を触知し,腹部単純写真にて上行結腸から下行結腸へかけて多量のガス像を認め,下行結腸下部の閉塞機転が示唆された.大腸内視鏡検査では肛門輪より20cmの部位に管腔全体を占める巨大な腫瘤をみとめた.その頂部は凹凸不整,結節状の所見がみられ,大腸癌が疑われたが,その基部は発赤した平滑な粘膜で覆われ,粘膜下腫瘍も否定し得なかった.大腸X線検査では下行結腸下部に蟹挾み状陰影,coiled spring signを認め,大腸癌による腸重積症と診断し手術を施行した.腸管は3筒性の重積状態にあり,腫瘤は無茎性,大きさ60×35×20mmで深達度mの早期癌であった.大腸内視鏡検査でみられた腫瘤基部の平滑な粘膜の所見は腸管の重積状態を反映したものと思われた.本例は重積状態となった腫瘤を内視鏡的に観察し得た点で興味深い症例と思われ,報告した.
  • 岸克 彦, 大舘 俊二, 加藤 義昭, 桑原 由孝, 近藤 重弘, 服部 和彦
    1988 年 30 巻 2 号 p. 433-438_1
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     電気水圧衝撃波砕石装置(Lithotriptor)により,完全に除去し得た,胆管結石症3例を報告した.症例1:53歳,男性.黄疸と化膿性胆管炎治療のため経皮経肝胆道ドレナージ(PTCD)を行ない,左肝内胆管と総胆管に多数の結石を認めた.PTCD瘻孔より胆道ファイバースコープを挿入し,経皮経肝胆道鏡(PTCS)下Nd-YAGレーザー照射砕石術を計17回,約66,000ジュール行なったが破砕採取困難であった.その後,計13回のLithotriptor砕石術にてすべての結石を除去し得た.成分分析の結果ビリルビンカルシウム石であった.症例2:47歳,男性.1年前胆石にて胆嚢摘出術.今回,閉塞性黄疸のためPTCD施行.総胆管に直径2cmの結石あり,計3回のLithotriptor砕石術にて完全除去された.成分分析の結果ビリルビンカルシウム石であった.症例3:54歳,女性.黄疸と発熱のためPTCD施行.直径1.5cmの総胆管結石あり,計4回のLithotriptor砕石術にて同様に排石し得た.成分分析の結果コレステロール石であった.今回,PTCS下電気水圧衝撃波砕石術を行なったが電極プローブが細く軟性のため,彎曲した肝内胆管にも挿入することができ,総胆管結石症はもちろんのこと難治性の肝内結石症においても,短時間に且つ安全に操作できすべての結石を除去し得た.
  • 原和 人, 宮岸 清司, 山本 和利, 清光 義則
    1988 年 30 巻 2 号 p. 439-442_1
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡的処置後の大腸大量出血に対して,上部消化管出血の場合と同様に,HS-E局注療法を施行し止血し得た3例を経験した. 症例1は79歳男性で,術後吻合部狭窄に対してバルーンブジーによる拡張術施行6時間後にショックを伴う出血を呈し,症例2は51歳男性で,5mm大のIs型ポリープに対するホットバイオプシー施行後6日目に出血し,症例3は43歳女性で1腸アミロイドーシスの診断のための直腸生検施行後6日目に出血した症例であった. HS-E局注療法を施行した理由は,内視鏡処置後の出血であり,その出血部位が想像できたこと,iatrogenicな出血であり,なんとか保存的に治療したいと考えたためである. いずれの症例も合併症なく永久的止血が可能であり,HS-E局注療法は止血効果及び手技の簡便性からみて,大腸大量出血に対しても,有用な治療法の一つであると考えられた.
  • 1988 年 30 巻 2 号 p. 445-455
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
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  • 1988 年 30 巻 2 号 p. 455-473
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
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  • 1988 年 30 巻 2 号 p. 473-484
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
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  • 1988 年 30 巻 2 号 p. 484-492
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/05/09
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