日本消化器内視鏡学会雑誌
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59 巻, 8 号
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総説
  • 岩下 拓司, 上村 真也, 安田 一朗, 清水 雅仁
    2017 年 59 巻 8 号 p. 1601-1609
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
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    超音波内視鏡(EUS:endoscopic ultrasound)下胆道ドレナージは,ERCPが施行困難な症例の有用な代替え加療方法として,近年多くの報告を認める.EUSガイド下順行性治療(AG:antegrade treatment)は,EUS下胆道ドレナージの中の一つの方法であり,その特徴として乳頭部・胆管開口部まで内視鏡を挿入することなく,消化管と胆管の間に形成した一過性の瘻孔から順行性に胆道病変に対して処置を行うものである.今回はEUS-AGについて,胆道病変を悪性胆道閉塞,胆管結石,良性胆管狭窄に分類し,それぞれの疾患における現状についてevidenceを交えながら概説する.

原著
  • 林 星舟, 今村 潤, 木村 公則
    2017 年 59 巻 8 号 p. 1610-1619
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
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    背景・目的:H. pylori慢性胃炎では胃粘膜内にリンパ濾胞が存在し,内視鏡では小円形黄白色斑として観察されている.この小円形黄白色斑の除菌後の経時的変化について後方視的に検討した.

    対象・方法:除菌前に小円形黄白色斑が観察された慢性胃炎35例を対象に除菌成功後定期的に内視鏡検査を行い,内視鏡像の変化を検討した(平均観察期間:58±31カ月).

    結果:1)小円形黄白色斑は除菌後に徐々に縮小し,一部では辺縁部ないし内部に白色調の増強した構造体を認め,その後白色調の強い小白斑を経て不明瞭化した.2)観察期間内に小円形黄白色斑の不明瞭化を74%,縮小を23%,不変を3%に認め,小円形黄白色斑の累積不明瞭化率は2年46%,4年67%,6年88%であった.

    結論:H. pylori慢性胃炎胃粘膜に観察される小円形黄白色斑は除菌後時間の経過とともに縮小・不明瞭化した.

症例
経験
手技の解説
  • 野中 康一, 大圃 研, 良沢 昭銘
    2017 年 59 巻 8 号 p. 1653-1662
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
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    近年の技術革新によって内視鏡技術の進歩は著しく,1,000倍の倍率によってリアルタイムに組織を観察しうる“optical biopsy”の時代に突入しつつある.筆者は2014年より共焦点内視鏡による消化管診断について研究を行ってきた.まず最初に,共焦点内視鏡に不可欠と考えられていたfluoresceinの静脈投与ではなく,ごく少量の滴下にてほぼ同等の画像を得ることに成功し,これを“fluorescein dripping method”として報告した.

    胃においては共焦点内視鏡所見は非常に多彩で,未だ診断学は確立されていないが,胃癌の組織型類推は比較的容易に可能であり,生検の代替法として十分成立すると考える.現行の通常観察・拡大観察では鑑別が困難な十二指腸上皮性腫瘍の鑑別において,筆者は極めて有用な“ABC-C classification”を提唱している.今後は,欧米で盛んに行われはじめている共焦点内視鏡を用いた分子イメージングの研究に期待が寄せられる.

資料
  • 飯野 勢, 三上 達也, 五十嵐 崇徳, 相原 智之, 石井 健太郎, 坂本 十一, 東野 博, 福田 眞作
    2017 年 59 巻 8 号 p. 1663-1672
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
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    【目的】上部消化管出血患者に対して予後予測におけるスコアの有用性が報告されているが,内視鏡治療の適応において,これらのスコアの有用性は十分に評価されていない.われわれは,日本人における上部消化管出血患者の,内視鏡治療の必要性のために,予測スコアの有用性を検討し,新たなスコアモデルを構築した.

    【方法】吐下血を主訴に受診し,緊急内視鏡検査を行った上部消化管出血患者の212例を対象とした.内視鏡治療,手術,IVRをアウトカムとし,初めに,Glasgow-Blatchford score(GBS)とClinical Rockall score(CRS)とAIMS65のROC曲線下面積(AUC)の比較を行った.次に,上部消化管出血に関連する因子についてロジスティック回帰分析を行い,その回帰係数より新たなスコアモデルを作成した.最後に,新予測スコアと既存の予測スコアにおける有用性の評価を行った.

    【結果】治療を必要としたのは109例(51.4%)であった.AUCはGBSが0.75[95% CI 0.69-0.81],CRSが0.53[0.46-0.61],AIMS65が0.52[0.44-0.60]で,GBSが治療必要性の予測においてCRSやAIMS65より優れていた.ロジスティック回帰分析の結果,収縮期血圧<100mgHg,失神,吐血,ヘモグロビン<10g/dL,尿素窒素≧22.4mg/dL,eGFR≦60ml/min/1.73m2,抗血小板剤内服の7つが有意な因子であった.これらの因子に基づいて作られた新予測スコアのAUCは0.85[0.80-0.90]で,治療適応の予測において,既存のスコアより優れていた.

    【結論】日本人の上部消化管出血患者における治療適応を予測するために新スコアは既存のスコアより優れていた.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 阿部 雅則
    2017 年 59 巻 8 号 p. 1682
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
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    【背景・目的】現在までに大腸内視鏡検診のランダム化比較試験は完了しておらず,現在行われている試験では75歳以上の受診者は除外されている.本研究では,70~74歳,75~79歳の高齢者に対する大腸内視鏡検診の結腸直腸癌(CRC)予防に及ぼす効果と安全性を明らかにすることを目的とした.

    【研究デザイン】米国で行われた大規模な人口ベースの前向き研究である.観察データを用いて,大腸内視鏡検診の有無による2群を比較した.

    【対象と評価方法】CRCの平均的なリスクがあり,過去5年間に大腸癌の診断または検診のための大腸内視鏡検査を施行したことがない70~79歳のメディケア受給者(2004年~2012年)1,355,692名を対象とした.8年間のCRCリスクと,有害事象の30日リスクを評価した.

    【結果】70~74歳のメディケア受給者では,CRCの8年間リスクは大腸内視鏡検診群で2.19%(95% CI,2.00%-3.00%),検診なし群で2.62%(CI,2.56%-2.67%)であった.(絶対リスク差 -0.42%[CI,-0.24%--0.63%]).75~79歳では,CRCの8年間リスクは大腸内視鏡検診群で2.84%(95% CI,2.54%-3.13%),検診なし群で2.97%(CI,2.92%-3.03%)であった.(絶対リスク差 -0.14%[CI,-0.41%-0.16%]).大腸内視鏡検査の30日間の有害事象リスクは70~74歳で1,000人あたり5.6件(CI,4.4-6.8),75~79歳で10.3件(CI,4.4-6.8)であった.

    【本研究の限界】CRCによる死亡率は不明であること.

    【結語】大腸内視鏡検診は70~74歳のCRC予防に適度の効果があるが,75歳以上の高齢者では有用性がより少ない可能性がある.大腸内視鏡検査の有害事象リスクは低かったが,高齢者ではより高かった.

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