1984年6月から12月の間に家畜衛生試験場九州支場 (鹿児島市) の牛舎内でヌカカ科のCulicoides (C) 属の昆虫 (ヌカカ) を採取し, 分類後, 種類別にウイルス分離を試みた. その成績は次のように要約される.
1) 採取されたヌカカの種類は13種類であったが, このうち,
C.arakawae, C.oxystoma, C.punctatus, C.maculatus, C.jacobsoniの5種類が主であり, とくに
C.oxystomaが優勢種であった.
2) ウイルス分離は,
C.oxystoma, C.punctatus, C.maculatus, C.jacobsoniの4種類について試みたところ, 11月5日と7日に採取した
C.mystoma (ウシヌカカ) の各混合材料から, 計2株の同一抗原性のウイルスが分離された.
3) 分離ウイルス (KC-05Y84株) は, 電顕学的所見および理化学的性状から, レオウイルス科オルビウイルス属の一員であることが判明し, 日本においてウシヌカカからのオルビウイルスの分離が初めて確認された.
4) KC-05Y84株は, オルビウイルス属の流行性出血病サブグループ (イバラキウイルス) およびブルータングサブグループ (ブルータングウイルス20型) のウイルスとは, 寒天ゲル内沈降反応により区別された.
5) 上述の牛舎内で飼育された2頭のおとり牛について, 8種類の節足動物媒介性ウィルス (アルボウイルス) に対する抗体陽転の有無を調べた. アイノウイルスに対しては10月1日と15日, アカバネウイルスに対しては11月1日, KC-05Y84株に対しては11月15日に, いずれも中和抗体の陽転が認められた. しかし, 牛流行熱, イバラキ, ゲタ, 日本脳炎およびブルータングウィルス1型の各ウイルスに対する抗体陽転は認められなかった.
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