狂犬病固定毒を家兎, 山羊, 馬に接種しその病毒の移行進達分布について一環した研究として, 今回は山羊を用いての実験成績を報告する.すなわち病毒を各接種方法 (眼房内, 硬脳膜下, 脳内, 脳内並びに腰椎内同時, 腰椎内) に従い接種し, 大脳内 (灰白質, 白質, 海馬角) 小脳内, 脊髄内 (頸髄, 胸髄, 腰髄) における病毒量を比較検討した結果, 次の如き成績を得た.
I. 接種後の臨床所見は眼房内, 腰椎内接種は共に他法に比較して, 接種後発症感染極期までの日数が不同かつ延長された。
II. 病毒量にういては, 大脳内は脳内並びに腰椎内接種が高く, 腰椎内接種が低い.小脳内は眼房内接種でやや低い.脊髄内は脳内腰椎内同時接種が高く, 硬脳膜下接種が低い.いずれにしてもその病毒量は脳に比して極めて低い.
III. 興味ある事実は腰椎内接種において, 脊髄の一部にのみ病毒を証明したにかかわらず斃死をみたこの点, 更に吟味検討すべきであろう.
抄録全体を表示