黒毛和種若齢子牛に対するPasteurella multocida,Mannheimia haemolytica,Histophilus somni 混合不活化ワクチン投与による呼吸器病の予防効果を評価するために,1農場で飼養されていた230頭の黒毛和種子牛を2群に区分し,113頭の子牛には1週齢及び4週齢時にワクチンを投与し(投与群),117頭の子牛にはワクチンを投与しなかった(対照群).出生から12週齢までの呼吸器病の発症率は,投与群113頭中41頭(36.3%),対照群117頭中73頭(62.4%)であり,投与群では対照群と比較し有意に低かった(P<0.01).各群14頭ずつの抗体調査について,P. multocida,M. haemolytica 及びH. somni に対する抗体価は,投与群では対照群と比較し,ワクチン投与後において,それぞれ有意に高値であった(P<0.05).これらのことから,黒毛和種子牛に対する早期の不活化細菌ワクチンの投与は,呼吸器病予防の一助となる可能性が窺えた.
飼育されていたヨツユビハリネズミ(Atelerix albiventris),雌,6歳齢に頸部皮下腫瘤が認められ,死亡後に腫瘤を含む複数組織を病理組織学的に検索した.腫瘤は独立円形細胞の腫瘍性増殖によって構成されており,これら細胞は大小不同の類円形核を有し,一部で弱好塩基性の細胞質内顆粒を有していた.同細胞質内顆粒はトルイジンブルー染色においてメタクロマジーを示した.また免疫組織化学的染色により腫瘍細胞の細胞質及び細胞膜はKIT(CD117)に陽性を示した.以上の病理組織学的所見から,本腫瘤を肥満細胞腫と診断した.頸部皮下以外に転移病巣は確認されなかった.多数の肥満細胞が肝臓並びに子宮の血管内に頻繁に観察され,腫瘍性肥満細胞の末梢循環が示唆された.
と畜検査時に,牛の右心房に約3cm大の結節状の腫瘤が観察された.腫瘤は弾性に富み,表面には直径約5mm大の白色結節が多数認められた.組織学的に,腫瘤は大小の血管,線維性結合組織,成熟した脂肪組織及び心筋線維によって構成されていた.血管構造は不整であり,血管壁は線維性結合組織によって著しく肥厚していた.特殊染色及び免疫染色の結果,血管壁のおもな構成成分が膠原線維,弾性線維,平滑筋及び粘液であることが判明した.以上の所見に基づき,本症例を心臓血管過誤腫と診断した.