黒毛和種雌肥育牛の脂肪壊死症と種雄牛,導入時の日齢体重及び産肉性の関係を調べた.一般畜と病畜で出荷された290頭を父牛の系統により分類し,主要な3系統に含まれる208頭から,本症と父牛の系統及び導入時の日齢体重の関係を調べた(モデル1).また,同290頭を父牛別に分類し,出荷牛10頭以上となった7頭の父牛を持つ150頭で,本症と父牛及び導入時の日齢体重の関係を調べた(モデル2).その結果,本症の発生には,父牛の違いのみが有意に関連していた.また,モデル2の対象牛のうち一般畜で出荷された147頭に対して,本症と発育及び枝肉成績の関係を検討した.本症である場合,牛脂肪交雑基準値が有意に高かった.以上,本症の対策には,種雄牛ごとの遺伝的影響の把握が必要と考えられた.また,筋肉内脂肪の増加が本症と関連すると推察された.
黒毛和種子牛におけるHistophilus somni に対する抗体価を調査するため,3農場(それぞれA,B,C農場)で飼養されていた36頭(1農場12頭ずつ)の子牛を供試した.すべての供試牛から生後1,4,8,12,16及び20週齢で血液を採取し,H. somni に対する抗体価を測定した.その結果,3農場すべてにおいて,子牛のH. somni 抗体価は4週齢まで緩やかに低下し,その後徐々に上昇した.4週齢の子牛の抗体価は,A農場及びB農場では12,16及び20週齢の抗体価と比較し有意に低値であり,C農場では20週齢の抗体価と比較し有意に低値であった(P<0.05).本研究で示された黒毛和種子牛のH. somni に対する抗体価の推移は,今後,子牛の呼吸器病予防対策の1つとしてH. somni に対するワクチネーションプログラムを構築するうえでの一助となると考えられた.
11歳のミニチュアダックスフントが全般発作を主訴に来院し,MRI検査で髄膜腫と診断された.抗がん剤等の治療を希望されなかったため,病変に対し温熱療法の1つであるラジオ波誘導温熱療法(オンコサーミア)を実施した.本症例は治療開始より1,065日で亡くなった.その間,てんかん様発作は認められたものの,一般状態は良好に維持されていた.今回の症例では,オンコサーミアによって長期間の生存が可能であった(33.1カ月).これは,手術及び放射線を併用した場合と同等の生存期間である.さらに,その期間は大きな副作用もなく,症例のQuality Of Lifeは良好に維持されていた.この結果から,オンコサーミアは犬の髄膜腫の進行を抑える効果がある可能性が示唆された.
敗血症を呈した牛から大腸菌O119:H28が分離され,腸管外病原性大腸菌(Extraintestinal pathogenic Escherichia coli:ExPEC)感染症と診断した.検査結果から,泌尿生殖器感染症が全身へ波及したと考えられた.薬剤感受性は,TC,SM,KM及びSuに耐性を示した.分離された大腸菌株は病原性関連遺伝子として,付着因子(afa-8),鉄取込能(iutA,irp1及びirp2)及び毒素(cnf2,cdtIII 及びstx1)を保有していた.これらの遺伝子産物が複合的に作用し,重度の出血を引き起こしたと推測された.また,stx1を保有しており,強い病原性が示唆された.