埼玉県内の一養豚場で,2006年9月頃から数カ月にわたり肥育豚の約半数に下痢や発育遅延がみられた. 2007年1月,発育不良を呈する60日齢の肥育豚4頭について病性鑑定を実施した結果,剖検時,4頭の肉眼所見はほぼ共通し,組織学的に,リンパ節では,リンパ球の減少,細胞質内封入体をもつマクロファージがみられた. 4頭中3頭には,豚サーコウイルス2型(PCV2)抗原がマクロファージの細胞質内封入体に一致して認められた. 4頭の肺から豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)が分離された. さらに,そのうち2頭の組織学的所見は共通し,回腸から結腸の粘膜上皮細胞上に付着して多数の球~卵円形の原虫が認められ,免疫組織化学的に,この原虫に一致して
Cryptosporidium parvum oocyst抗原がみられた. 同居豚40頭の糞便を蛍光抗体法で検査したところ,30頭(75%)で
Cryptosporidium oocystが検出された. 遺伝子解析により,これらは
C. parvum pig genotype Ⅱ あるいは
C. suisと同定され,これらの
Cryptosporidiumが本事例の下痢に関与したと考えられた. 本事例は,
Cryptosporidium,PCV2およびPRRSVの混合感染症と診断した.
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