抗菌製剤無投与牛から搾乳した生乳が残留抗生物質検査法 (ペーパーディスク法; PD法) で偽陽性反応を示す原因検索を行った. PD法疑陽性乳は, 陰性乳に比較して総細胞数, 多形核球数, ラクトフェリン (Lf) およびリゾチーム (Ly) 量とも高値であり, これら成分とPD法阻止円直径との間には有意な相関がみられ, 特に, Lf量との相関が高かった. また, 比濁法による
Bacillus stearothermophilus (検定菌) に対する抗菌作用の比較では, Lyが最も強く, 次いでPD法陽性乳清, Lf, PD法陰性乳清, ペニシリンの順に弱くなった. なお, この時の検定菌の形態を透過型電顕で比較したところ, PD法疑陽性乳清添加と人Lf添加の間には類似した変化が観察された. 以上のことから, PD法疑陽性反応は乳腺組織の炎症性変化にともなって生乳中に増加した多形核球由来のLfに起因するものであり, Lyの存在でより顕著な反応がおきるものと考えられた.
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