日本獣医師会雑誌
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62 巻, 8 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
日本産業動物獣医学会会誌
  • 田波 絵里香, 大塚 浩通, 向井 真知子, 小比類巻 正幸, 安藤 貴朗, 小形 芳美, 川村 清市
    原稿種別: 原著
    2009 年 62 巻 8 号 p. 623-629
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー
    妊娠末期の母牛の栄養状態が黒毛和種産子の出生後の免疫状態に及ぼす影響を調べるため,妊娠末期において異なる飼養設計にて飼育した母牛の産子を対象に出生後の末梢血白血球ポピュレーションを観察した. 供試牛は一牧場で飼育されていた母牛とその産子33組で,母牛の産歴とその給与飼料内容により,分娩前の飼料内容が不足した初産牛の産子(初産不足群;N=5)と経産牛の産子(経産不足群;N=8),充足した初産牛の産子(初産充足群;N=7)と経産牛の産子(経産充足群;N=13)の4群とした.経産不足群の産子におけるCD4CD45RT細胞数,CD8CD45RT細胞数およびB細胞数は経産充足群の産子に比べ低値で推移した. このことから,経産牛の黒毛和種産子における出生後の免疫状態は,妊娠末期における母牛の飼料設計の充足状況に影響を受ける可能性がある.
  • 南保 泰雄, 舘江 弘明, 琴寄 泰光, 駒野 道夫, 田中 秀俊
    原稿種別: 原著
    2009 年 62 巻 8 号 p. 630-635
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー
    馬の正常妊娠期における各週の血中プロジェステロン(P4)濃度の変化を時間分解蛍光免疫測定法(TR-FIA)により解析し,早期胚・胎子死滅7例と比較した. 妊娠前半期のP4 濃度は妊娠2週および7~15週をピークとする2相性の変化を示し,初期黄体および副黄体の形成時期とほぼ一致した. 妊娠後半期は23週以降に3~4ng/ml の低値で推移した後,分娩前5週からふたたび上昇し,分娩後に急激に低下した. 5週付近で胚死滅となった4例の血中P4濃度は0~4週において正常例と有意差を認めなかったが,9週付近で胎子死滅に至った3例では,その2週前においてすでにP4濃度が正常例より有意に低かった. 胚・胎子死滅後は黄体が退行せず,P4濃度が3~6ng/ml の値で5週間以上維持された. TR-FIAによる馬妊娠期のP4濃度測定は早期胎子死滅の予知診断に有用であることが示唆された.
  • 田川 道人, 谷 夏深, 梶原 綾乃, 古林 与志安, 古岡 秀文, 松井 高峯, 石井 三都夫, 猪熊 壽
    原稿種別: 短報
    2009 年 62 巻 8 号 p. 636-639
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー
    10カ月齢のホルスタイン種雌育成牛が急性に斜頸,旋回,後弓反張,意識混濁の症状を呈した. 大脳皮質壊死症を疑い,ビタミンB1製剤,コルチコステロイドおよび抗生物質による治療を実施したが反応せず,予後不良と判定された. 病理解剖により小脳に直径3.5cm大の腫瘤が確認され,左右側脳室および中脳水道の拡張がみられた. 本症例は小脳腫瘍による周辺部の圧迫および腫瘍の二次的圧迫による脳脊髄液流出障害により発生した内水頭症により,小脳徴候だけでなく大脳および脳幹症状も出現したものと考えられた. 病理組織学的検索の結果,本症例は上衣芽腫と診断された.
日本小動物獣医学会会誌
  • 三輪 恭嗣, 藤田 淳, 加藤 久美子, 内田 和幸, 中山 裕之, 佐々木 伸雄
    原稿種別: 短報
    2009 年 62 巻 8 号 p. 641-644
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー
    4歳3カ月齢の去勢雄フェレットが左眼球突出を主訴に来院した. 臨床徴候および検査所見から眼窩内に発生した腫瘤により左眼球が突出したと判断し,眼球摘出術および眼窩内掻爬術を実施した. 摘出した腫瘤の病理組織学的検査では,腫瘍細胞が一部で小管腔を形成し,さまざまな形態で増殖していた. 免疫染色により腫瘍細胞はPan Keratin,NSEに陽性,Vimentin,Desminに陰性であり,上皮細胞に由来する腫瘍と判断された. 症例は術後6カ月後に斃死し,剖検では左側嗅球から前頭葉に腫瘤形成が認められた. 組織学的には生検組織と同様,分泌物産生を伴う腫瘍細胞の小管腔形成増殖がみられ腺癌と診断されたが,その原発組織の特定には至らなかった.
  • 中村 諒子, 酒井 洋樹, 中村 光孝, 栁井 德磨, 西川 貴士, 柵木 利昭
    原稿種別: 短報
    2009 年 62 巻 8 号 p. 645-647
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー
    15歳雄の日本猫の左上顎第1前臼歯歯肉部頬側に腫瘤が認められた. 腫瘤は肉眼的に歯肉と境界不明瞭で,歯肉と同色を示した. 病理組織学的に,サイトケラチン陽性の歯原性上皮様の腫瘍細胞が,シート状あるいは索状に増殖していた. また,腫瘍細胞に接するように,石灰沈着を伴なった,Direct fast scarlet染色陽性のアミロイド沈着が認められた. 以上の所見から,アミロイド産生性歯原性腫瘍と診断した.
日本獣医公衆衛生学会会誌
  • 山﨑 省吾, 右田 雄二, 中村 まき子, 浦 伸孝, 工藤 由起子, 三澤 尚明, 岡本 嘉六, 髙瀬 公三
    原稿種別: 原著
    2009 年 62 巻 8 号 p. 649-655
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー
    長崎県沿岸の漁港7地点(有明海5地点,橘湾2地点)における海水中のVibrio vulnificusV. vulnificus)菌数をMost probable number(MPN)-PCR 法を用いて測定し,その菌数の増減に及ぼす各種環境因子(水温,塩分濃度,DO,COD,総窒素量,総リン量,クロロフィルa量)の影響を海域性および季節性を加えながら統計学的に解析し,検討した. V. vulnificus菌数は,有明海では6月から菌数上昇傾向を示し7月に最高値(4.50 × 104 ±17.1 MPN/100ml)となり,橘湾では8月に最高値を示した. 両海域でのV. vulnificus菌数は,水温(rs =0.711)および塩分濃度(rs =-0.712)との間に高い相関を認めた. またDO,総窒素量およびクロロフィルa量とV. vulnificus菌数の間には,単回帰分析(R2 >0.1)で低度の寄与率が認められた. V. vulnificusは,有明海産魚介類からの分離率が橘湾のそれらよりも高く,二枚貝で90%および魚類で94.1%を示し,その菌数の最高値は106 MPN/100g であった.
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