症例は8歳, ホルスタイン種乳牛で, 流産 (妊娠6ヵ月), 進行性乳房腫脹, 元気・食欲廃絶, 泌乳停止などの臨床症状により, 分娩後2ヵ月で廃用と殺された. 剖検時, 乳房 (右前・後分房, 左前分房), 乳房上リンパ節および内側腸骨リンパ節に大量の粘液貯溜を伴った多数の腫瘤が認められた. 腫瘤部は組織学的には, 主に腺上皮細胞の管状~ 乳頭状増殖巣より成り, 一部に大小さまざまの腺房構造が観察された.管状構造は単層あるいは数層の立方状~ 円柱状の腫瘍細胞によって内張りされていた. 腫瘍細胞は1個の核小体を有する円形~楕円形核と淡明で豊富な細胞質を持ち, 頻繁に核分裂像が認められた. また, 腫瘍細胞細胞質内および腺腔内に好酸性, 過ヨウ素酸-シッフ (PAS) 反応陽性の分泌物を認めた. 以上の所見から, 本例は乳腺の管状乳頭状腺癌と診断された.
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