食欲不振, 沈うつ, 左後肢の跛行を呈した犬 (ロットワイラー, 雌, 8歳) において, 腹部X線像で磨りガラス状陰影と腸内ガスの尾側変位を, 腹部超音波像で腫大した脾臓に大小不同の類円形低エコー領域を認めた.試験開腹したところ, 腹腔内に血様漿液が充満し, 著明な脾腫があり, 大小不同の灰白色結節の多発をもとない, 一部結節の亀裂部から出血を認め, 脾臓を全摘出した.脾臓の病理組織学的検査で, 脾臓固有構造の消失, 異型組織球および多核巨細胞の浸潤性増殖, 頻繁な核分裂像, 赤血球貪食像を認め, 悪性組織球症と診断された.術後18日に, X線で肝の腫大および右肺前葉の腫瘤を認め, 術後約4週間から頸・腹部体表にも数個の腫瘤が生じ, 全身状態が悪化して術後36日に死亡した.
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