埼玉県内の一養豚場で発育不良を呈する15週齢の肥育豚1頭を病理学的に検索した.肉眼的に,肝臓,脾臓,空腸,回腸及び結腸の漿膜,肺胸膜,心外膜,腸間膜に白色結節(直径約0.2~1.0cm)が多数認められた.組織学的に,この白色結節は,厚い結合組織に覆われた膿瘍であり,中央にグラム陽性,多形態の小桿菌がみられた.免疫組織化学的に桿菌に一致して,
Arcanobacterium pyogenes抗原が確認された.細菌学的検査により,肝臓,脾臓,腎臓,心臓,肺及び胸水から分離された小桿菌は,いずれも
A. pyogenesと生化学的性状が一致した.また,16S rRNA遺伝子配列解析により,肝臓の膿瘍から分離された細菌も
A. pyogenes と同定された.本症例は,
Arcanobacterium pyogenes による極めてまれな多発性化膿性漿膜炎と診断された.
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