国内18県から収集した2004~2013年における乳用成牛下痢症病性鑑定事例212件の疫学的特徴を調査した.診断内訳では,牛コロナウイルス(BCV)病が45%を占め,以下,牛ロタウイルスB(RVB)病,サルモネラ症,牛ロタウイルスC(RVC)病,牛ロタウイルスA(RVA)病及び牛トロウイルス(BToV)病の順で3~9%に認められた.23%の事例は,原因が特定できなかった.RVA病を除く上記ウイルス病及びサルモネラ症の半数以上が,集団発生であった.原因不明事例では,単独発生が多かった.BCV病及びサルモネラ症の症状は,他の疾病より重篤な事例が多かった.乳用成牛において下痢が集団発生する事例では,BCV病,RVB病,RVC病,BToV病及びサルモネラ症のいずれかに診断できる可能性があると考えられた.
2017年5月,流産胎子の肺からグラム陽性球菌が分離され,16S rRNA遺伝子解析によりHelcococcus kunzii と同定された.病理組織学的検査では化膿性気管支肺炎が認められ,分離菌と交差反応を確認した抗H. ovis 抗体を用いた免疫染色で陽性反応が認められたことから,H. kunzii が流産に関与していた可能性が示唆された.牛の流産胎子からH. kunzii が分離された事例は,今までに報告がないため,今後さらなる症例の蓄積や検討によりH. kunzii の牛への病原性を解明する必要がある.
漏斗胸は幼齢猫にまれに発生し,胸骨及び肋軟骨の先天的奇形により胸郭形態が異常なため,呼吸困難,発咳,発育不良などの症状を呈する.その症状改善には,外科的矯正術が必要とされる.今回われわれは,本疾患の7~22週齢の幼猫5症例において,小動物整形外科用骨プレートを用いて胸郭の矯正術を行った.すなわち,全例において,半楕円形に湾曲させた骨プレートを最陥没部の胸骨とその左右肋軟骨に非吸収糸で結紮固定した.結果,全例において,手術直後から胸郭形態の正常化と症状の消失が得られ,その後の追跡期間(8~48カ月,中央値15カ月)においても再発は認められなかった.また,術前術後の解剖学的重症度と臨床重症度スコアによる評価結果からも,本術式は猫の漏斗胸の矯正に有用であると思われた.