アカバネ病予防には,アカバネウイルスgenogroupⅠ(GⅠ)及びgenogroupⅡ(GⅡ)の両者に対する免疫が重要である.GⅠはGⅡに対しても中和抗体を誘導するが,GⅠの単味ワクチンは未だ販売されていない.そこで,GⅠのKN-06株を抗原とする単味不活化ワクチン(KD-412)の牛での抗体応答について,KN-06株を含む混合不活化ワクチン(K3)とGⅡのTS-C2株を抗原とする単味生ワクチン(L)を対照として評価した.KD-412の2回接種により,GⅠ及びGⅡに対する中和抗体価はK3接種牛と同等に上昇し,1年間2倍以上を維持した.L接種牛では,KD-412追加接種によってGⅠに対する抗体価が全頭で上昇した.KD-412はGⅠ及びGⅡに対して同程度に免疫誘導が可能で,アカバネ病の予防に有効と考えられた.
フィールドにおける消石灰の経時的な劣化について検討するため,季節ごとにいくつかの試験区域に消石灰を散布し,経時的な水酸化カルシウム割合の測定及び消石灰有効性確認試薬による色の変化を測定した.その結果,全体を通じて1週間程度でほとんどの水酸化カルシウムが炭酸カルシウムに変化していることが明らかとなった.並行して検討に用いた試薬は,消石灰表面に滴下した色の変化と水酸化カルシウムの割合の変化が一致することが示され,現場での簡易的な試験として十分用いることが可能であることが示された.さらに,畜産現場における消石灰の使用実態を調査したところ,散布間隔が長い農場が多く,消毒効果がなくなっている可能性がある.今回用いた試薬を利用することで今後消毒効果を保持し,かつ効率よく散布を行えるようになると考えられる.
麻酔中に心停止の既往歴がある症例に検査麻酔を行ったところ徐脈が生じ,アトロピンとイソプロテレノールを使用したが,心拍数は安定しなかった.本症例は外耳道切除の必要があり,手術中に徐脈と低血圧といった血行動態の不安定が認められる可能性が考えられ,一時ペースメーカを使用し,心拍数を維持し血行動態を安定させることを試みた.麻酔導入後に右室に一時ペースメーカを設置することで心拍数を80〜110回/分に維持可能となり,ドパミンを併用することで麻酔中の観血的血圧は安定した.術中と術後に一時ペースメーカによる合併症は認められなかった.そのため,麻酔中に薬剤で安定しない心停止や徐脈による低血圧の既往歴がある症例に長時間の麻酔をかける場合,一時ペースメーカの使用は心拍数と血行動態を安定させるため有用と考えられた.