日本獣医師会雑誌
Online ISSN : 2186-0211
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71 巻, 8 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
産業動物臨床・家畜衛生関連部門
  • 林 淳, 石川 真悟, 藏前 哲郎, 帆保 誠二
    原稿種別: 原著
    2018 年 71 巻 8 号 p. 431-436
    発行日: 2018/08/20
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    市場導入肥育素牛の牛呼吸器病症候群の治療状況を調査した.また気管支肺胞洗浄液,気管洗浄液,鼻腔スワブを採取し細菌学的に解析した.調査期間中に408頭の肥育素牛が導入され,導入後2週間以内に治療された牛は64頭であった.治療頭数割合は冬季で多くなり,発症に至る日数は春季で短くなる傾向があった.気管支肺胞洗浄液からは,2013年の6頭による調査では非発熱供試牛(対照牛)では1頭のみからPasteurella multocida(Pm)が検出されたが,発熱供試牛(発熱牛)では全頭からMannheimia haemolytica(Mh)Pm あるいはHistophilus somni のいずれかが分離された.2014年の8頭による調査では,対照牛の1頭のみからPm を検出し,発熱牛からはMhPm を検出した.全供試牛からMycoplasma 属菌は検出されなかった.これらの知見は,導入後に発熱を呈する牛の気管支肺胞領域に肺炎原因菌が存在することを示しており,治療指針の決定に重要であると考えられた.

  • 原 恵, 山本 伸治, 壁谷 昌彦, 長谷川 裕貴, 矢ヶ部 陽子, 宗田 吉広
    原稿種別: 短報
    2018 年 71 巻 8 号 p. 437-442
    発行日: 2018/08/20
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    黒毛和種繁殖牛を用いて,放牧が繁殖牛の酸化ストレス及びいくつかの免疫・栄養指標に及ぼす影響を調査した.血液検査の結果,放牧区において,酸化ストレス指標のチオバルビツール反応物質は放牧期間の後半で有意に低下し,抗酸化ストレス指標のスーパーオキシドディスムターゼ活性(SOD)は有意に上昇した.また,放牧期間中,放牧区は栄養状態を示す尿素窒素,総コレステロール,抗酸化能を有するレチノール,α-トコフェロールは有意に高値を示した.以上から,放牧は蛋白や脂溶性ビタミンを豊富に含む牧草を多く摂取することで,脂溶性ビタミン濃度や活性酸素を除去するSOD活性が高まり,酸化ストレスを軽減させる可能性が示唆されたが,放牧と免疫指標との関連については,さらなる検討が必要であると考えられた.

小動物臨床関連部門
  • 新坊 弦也, 田川 道人, 山本 悠平, 宮原 和郎
    原稿種別: 短報
    2018 年 71 巻 8 号 p. 443-448
    発行日: 2018/08/20
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    11歳8カ月,避妊雌のミニチュア・ダックスフントが血小板減少,多発性の脾臓腫瘤の精査のために来院した.症例は,来院前日に突然の左前後肢の麻痺,左眼の視覚障害を呈した.血液凝固系検査ではD-ダイマーの上昇が認められた.腹部超音波検査では脾臓に低エコー性を呈する血流を欠く楔型の病変が複数認められた.頭部MRI検査では,右側頭葉を中心とした脳梗塞と合致する所見が得られた.以上より,脾梗塞,脳梗塞と診断し,血栓予防療法を行った.その後の経過は良好であり,第118病日に治療終了とし,その後11カ月経過した現在も再発は認められていない.本症例は,過去に膵炎に類似した臨床症状を呈しており,また血栓傾向を引き起こす他の疾患は否定的であったことから,多発性の梗塞病変は膵炎に起因する凝固亢進状態に伴うものであったと考えられた.

獣医公衆衛生・野生動物・環境保全関連部門
  • 松尾 加代子, 森部 絢嗣, 高島 康弘, 粕谷 志郎, 吉田 彩子, 阿部 仁一郎, ウィラチャイ サイジュンタ, 吾妻 健
    原稿種別: 原著
    2018 年 71 巻 8 号 p. 449-453
    発行日: 2018/08/20
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    岐阜県内3地域(A~C)で捕獲されたホンシュウジカCervus nippon centralis 148頭中2地域(B,C)の計4頭から抗肺吸虫抗体が確認された.B,C地域ではシカ肉が原因と疑われる人の肺吸虫症が報告されている.また,B地域のサワガニGeothelphusa dehaani からウェステルマン肺吸虫Paragonimus westermani(2倍体)のメタセルカリアが検出された.シカの第1胃内容を食物アレルギー物質スクリーニングキット(甲殻類用)で検査したところ,B地域のシカ1頭で陽性を示した.この胃内容物から発見された甲殻類の脚様異物から抽出したDNAはサワガニと一致した.このことから,シカがサワガニを食しウェステルマン肺吸虫の待機宿主になり得ることが示唆された.

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