羊のと畜検査における尿毒症と黄疸の数値的裏付けとして,眼房水が血液の代替検体になり得るか調査した.と畜場に搬入されたサフォーク種(Ovis aries)61頭の血漿と眼房水を用いて,各生化学値(尿素窒素,クレアチニン,総ビリルビン)の測定後に相関分析と回帰分析を行った.すべての項目で測定値は血漿の方が眼房水よりも高かった(P<0.05).尿素窒素では,去勢群と雌群で共に高い相関係数と決定係数が認められた.クレアチニンでは,去勢群で高い相関係数と決定係数が認められた.総ビリルビンでは,相関関係が認められなかった.以上のことから,採血困難時には,眼房水を用いて羊の尿毒症を推定評価できるが,雌では精度の高いクレアチニン推定値を得にくいと考えられた.また,眼房水を用いての黄疸評価はできないと考えられた.