黒毛和種子牛におけるHistophilus somni ワクチンの抗体応答を調査するため,2農場(それぞれA,B農場)で飼養されていた60頭の子牛を供試した.A農場では32頭の子牛を投与群16頭及び対照群16頭,B農場では28頭の子牛を投与群14頭及び対照群14頭に区分した.投与群には4及び8週齢時にH. somni 不活化ワクチンを投与した.すべての供試牛から生後1,4,8,12,16及び20週齢で血液を採取し,H. somni に対する抗体価を測定した.その結果,2農場の投与群の8週齢以降の抗体価は,1及び4週齢時の抗体価と比較し有意に上昇した.また,2農場の投与群の抗体価は対照群と比較して,それぞれ有意に高値で推移した.このことから,子牛に対するH. somni ワクチンの投与は,抗体価を増加させることが示唆された.
豚サーコウイルス2型(PCV2)は,豚サーコウイルス関連疾病(PCVAD)としてさまざまな疾病の原因となる.PCV2の遺伝子型dは2つのグループPCV2d-1とPCV2d-2に分けられ,mPCV2が属するPCV2d-2は,他の遺伝子型に比べ豚体内での増殖能及び感染豚からのウイルス排泄が高く,世界的に優勢な遺伝子型となりつつある.著者らは,2015年に採取した健康な豚の血清よりmPCV2と同じグループであるPCV2d-2(前回の著者らの報告ではPCV2d-1に相当)に属する株を3株確認し,すでに報告した.そこで,国内におけるPCV2d-2の浸潤状況を調査するため,2009~2016年に青森県,千葉県,栃木県,神奈川県,広島県,熊本県の19農場を対象として,健康な豚から採取・保存した血清を用いて,PCV2を検出するPCR法で調べるとともに,検出ウイルスの塩基配列解析から遺伝子型を分類し,各遺伝子型の検出地域と経時的な変化をみた.その結果,PCV2d-2が少なくとも2012年には国内に存在していたことが確認され,それ以降国内に広がっていることが推定された.さらに,2016年には,これまで国内で報告されていないPCV2eが初めて検出された.PCV2d-2及びPCV2eの検出時期及び遺伝子型の変動は,アメリカでの報告とほぼ一致しており,今後の侵入経路を考える有用な情報であると考えられた.
飼育犬において歯周炎の有病率は高く,治療にあたる機会の多い疾患である.歯周基本治療後に深い歯周ポケットが残存する症例では,新付着の獲得を目的に歯周組織再生療法が選択される場合がある.人歯科医療において,2016年9月に新規歯周再生療法医薬品としてトラフェルミン(リグロス®,科研製薬㈱,東京)が製造販売承認された.本研究では,骨欠損を伴う自然発生的歯周炎に罹患した犬3頭に対するトラフェルミンの治療効果を検討した.同一患畜犬の口腔内で治療側と対照側を比較するスプリットマウスモデル法を用いた試験結果から,トラフェルミンの歯周組織再生における有効性を認めたので報告する.
都内ペットショップで飼養されている犬及び猫の病原体保有状況を調査した.54施設において,犬364頭から糞便355検体及び被毛361検体,猫113頭から糞便111検体及び被毛112検体を採取した.動物由来感染症の病原体として,Campylobacter jejuni(犬糞便5検体),Giardia intestinalis(Assemblage A)(猫糞便2検体),病原大腸菌(EPEC O119:NM)(猫糞便1検体),皮膚糸状菌(犬被毛4検体,猫被毛4検体)が検出された.施設内に病原体が持ち込まれることを前提とした検疫体制の整備と,施設内での交差汚染を防ぐための衛生管理が重要であると考えられた.