1990年, 1養豚場で豚の流行性流産が発生した. 妊娠末期の流産胎子では皮膚に浮腫を伴った全身性の出血斑が観察された. 剖検では血様を帯びた胸水および腹水の増量, 肝臓の腫大, 心臓の出血斑およびリンパ節の腫大がみられた. しかし, 妊娠中期から後期の流産胎子には著変はみられなかった. 病理組織学的には非化膿性脈絡髄膜炎, 肝細胞の変性と壊死, 心内膜炎および心外膜炎, 血管炎が認められた. 免疫組織学的には, これらの病変に浸潤した単核細胞, 肝細胞および胎盤栄養膜上皮細胞にクラミジア封入体が確認された. また, 流産胎子から
Chlamydia psittaci (
C. psittaci) が分離され,
C. psittaci抗体検査では飼養豚が抗体陽性を示した. いっぽう, 豚に流産を起こす病原体に対する血清学的および病理学的な検索では有意な所見は得られなかったことから, 本流産はクラミジアによることが確認された.
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