日本獣医師会雑誌
Online ISSN : 2186-0211
Print ISSN : 0446-6454
ISSN-L : 0446-6454
73 巻, 8 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
産業動物臨床・家畜衛生関連部門
  • 大竹 祥紘, 米山 州二
    原稿種別: 原著
    2020 年 73 巻 8 号 p. 443-448
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル フリー

    3次元的な細胞コロニーであるスフェロイドは,2次元的な接着培養に比べ生体に近い環境での培養が可能である.獣医学領域においては本手法をウイルス分離へ応用した例はないため,分離困難と考えられているロタウイルスC(RVC)の特異遺伝子を検出した牛由来の糞便5検体を用い,接着培養及びスフェロイド培養の分離結果を比較した.接着培養ではいずれの検体もRVCの分離には至らなかったが,スフェロイド培養では5検体中3検体でRVCの分離に成功した.また,検体接種の時期をスフェロイドの形成前後で比較したところ,形成前に接種した方が高率に分離可能で,本法を実施する際にはスフェロイド形成前に検体を接種することが重要と考えられた.国内でのRVC分離例は2例のみであり,本法は分離が困難とされてきたウイルス種の確保に有用であると考えられた.

  • 猜都 勇介, 北原 尚英, 三角 和華子, 伊藤 弘貴, 松林 誠, 笹井 和美, 芝原 友幸
    原稿種別: 短報
    2020 年 73 巻 8 号 p. 449-456
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル フリー

    鹿児島県内の一養豚農場で2019年2月に40日齢の離乳豚が水様性下痢を呈し,死亡豚が増加した.下痢を呈した2頭において,病理組織学的に回腸,盲腸及び結腸の陰窩腔にトリコモナスの濃厚寄生が観察された.そのうち1頭では,多数のトリコモナスの陰窩上皮及び粘膜固有層への侵入が認められた.小腸及び大腸病変部のパラフィン包埋切片を用いたPCR検査でTritrichomonas foetus が同定された.超微形態学的検査で,3本の前鞭毛と1本の後鞭毛が観察された.Caspase-3免疫染色及びTUNEL法で,陰窩上皮のアポトーシス陽性細胞の増加が観察された.細菌学的検査でEscherichia coli が分離された.病理組織学的検査と遺伝子学的検査の結果より,T. foetus の豚に対する侵襲性及び下痢への関与が示唆された.

小動物臨床関連部門
  • 松村 健太, 細川 愛美, 伊藤 大輔, 茅野 順子, 杉田 祐司
    原稿種別: 短報
    2020 年 73 巻 8 号 p. 457-461
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル フリー

    血尿,元気消失を主訴に来院した犬の左側近位尿管内に占拠性病変と同側の水腎症を認めた.腎盂内減圧処置の後,開腹下で腎臓経由の生検を実施したが確定診断は得られず,病理診断は「移行上皮由来の腫瘍の可能性」であった.減容積により罹患側尿管の疎通は認められ,ピロキシカムを659病日まで投与継続したが,大きな変化がないため投薬を中断した.965病日に症例は元気消失,血尿を主訴に再度来院し,左側尿管の再閉塞を認めた.経過から良性挙動の病変の可能性が高いと判断し,尿管切開により姑息的に腫瘤を除去したところ,病理検査結果は移行上皮乳頭腫であった.術後1年経った現在,再発徴候はなく症例は良好な一般状態を保っている.犬の尿管腫瘤は良性病変についても複数報告されていることから,罹患側の腎臓尿管摘出だけでなく,診断を兼ねた減容積手術も診断・治療選択になる可能性がある.

獣医公衆衛生・野生動物・環境保全関連部門
feedback
Top