平成2年2月~3月, 乳用種および交雑種約120頭を飼養する肥育農家において, 新たに導入した7~10齢の子牛15頭にビタミンAD
3E剤 (1日当たりA: 200万IU, D
3: 100万IU, E: 800IU) を連日投与したところ, 全頭に元気消失, 食欲廃絶, 脱毛, 歩行困難等が認められ投与後13~27日の間に6頭が死亡した. 鑑定殺した3例の剖検所見では, 大動脈, 肺動脈内部に赤褐色沈着物が認められ, 肝臓では軽度の退色が観察された. 大腿骨骨端軟骨板では軽度の蛇行がみられた. 組織所見では肝臓の伊東細胞に腫大, 空胞化が認められた, 血液科学検査については血清中のRetinyl palmitateが8例中6例 (75.0%) で検出された. 全頭で血漿中の25-OH-D値 (561.9±77.4ng/d
l) および血清Ca値 (14.4±1.3mg/d
l) の顕著な増加が認められた. ウイルスおよび細菌検査では特に異常は認めなかった.
これらの所見からビタミンA, D過剰症と診断され, 骨端軟骨の閉鎖不全が認められたことからハイエナ病の前段階であると推察された.
抄録全体を表示