2013年に特定の農場から輸入され,豚サーコウイルス2型(PCV2)感染が疑われた豚112頭について,リアルタイムPCR法により血清中PCV2遺伝子量を測定し,豚サーコウイルス関連疾病(PCVAD)のリスクを評価した.これらの豚全頭は,輸出国でPCV2ワクチンが接種されていたが,輸出のおよそ1カ月前にさまざまな週齢(4〜11週齢)で接種されており,効果が得られているか不明であった.結果,112頭中84頭でPCV2遺伝子の増幅を認め,陽性豚の遺伝子量は103〜108copies/ml,幾何平均遺伝子量は6.0×104copies/ml であった.当該農場からは,血中PCV2遺伝子量が高くなる10〜15週齢頃の豚の輸入が多く認められたものの,全体としてPCVADのリスクは抑制されていることが推察された.
症例はシーズー,去勢雄,12歳齢で,急性の嘔吐と腹囲膨満を主訴に来院した.腹部X線検査にて胃拡張が疑われたため,経皮的減圧を行った.胃からは約1l のガスと液体が抜去された.その後,状態は安定したため経過観察とした.6日後の再診時には一般状態に問題はなく,食欲及び排便も正常であった.しかし,その1カ月後に再度腹囲膨満を呈し,腹部X線検査にて胃拡張捻転症候群が疑われた.一般状態は良好だったため,再度経皮的減圧を行い一晩様子を観察したが,改善が認められなかったため,開腹手術を行った.胃は捻転し,脾臓及び小腸の変位が認められた.腹腔内臓器を整復した後,ベルトループ胃腹壁固定術を実施した.胃拡張捻転症候群は小型犬では報告は少ないが,本症例においては雪の多食が発症に関与した可能性が考えられた.
市販鶏肉におけるカンピロバクター汚染の季節性を調べるために,2016年5月から2017年4月にかけて,定性的及び定量的に鶏肉からカンピロバクターを分離した.毎月,27検体の鶏肉を試験し,年間で324件の鶏肉を試験した.鶏肉のカンピロバクター汚染は,全体では52%で,最も高い汚染率は9月の81%,最も低い汚染率は3月の3.7%で,9月に明瞭なピークが認められた.カンピロバクターの定量が可能であった鶏肉は陽性を示した鶏肉の20%で,菌数は5〜55個/gであった.Campylobacter jejuni は毎月検出されたが,Campylobacter coli の検出は5〜10月に限られていた.鶏肉のカンピロバクター汚染率のピークは,カンピロバクター食中毒患者数のピークと時期的に一致せず,患者発生の季節性は鶏肉汚染の直接的な影響によるものではなく,複合的な要因によるものと考えられた.