現在犬における血液透析時のヘパリン投与法は, 各現場において多様であり, その投与法が適切か否かについての十分な検討がなされていない. そこで, 著者らは従来行われてきた血液透析時の全身ヘパリン化法 (山口らの方法) と, 個々の個体に応じた計算に基づくヘパリン化法 (計算に基づいたヘパリン化法) を犬に適用し, 比較検討を行った. それぞれのヘパリン化法を用いて, 3日間連続血液透析を行い, 部分トロンボプラスチン時間 (APTT値) を測定した. その結果, 山口らの方法では透析中の凝固時間が一定せず, 延長し過ぎる傾向が認められた. いっぽう, 計算に基づいたヘパリン化法では, 各個体において一定した適度の凝固時間の延長を維持することができた. したがって, 山口らの方法で問題となる凝固時間の不安定, ヘパリンの過剰投与, ヘパリンの拮抗薬であるプロタミンの使用は, 計算に基づいたヘパリン化法により改善され, 安定した凝固時間延長のもとで血液透析が実施できることが示唆された.
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