2例の子牛の腎異形成について,それらの病理組織学的特徴と,細胞接着関連タンパク質の免疫組織化学的局在を解析した.両症例の左右の腎臓は退色し,表面には凹凸が生じ,組織学的には症例1で間質の広範囲な線維化,症例2で巣状線維化を認めた.密着結合,接着結合及びヘミデスモゾームそれぞれの構成タンパク質であるクローディン16,Kカドヘリン及びインテグリンα6の免疫組織化学的染色を実施したところ,両症例においてクローディン16及びKカドヘリンの異常局在を認めた.以上の結果から,密着及び接着結合に関連したタンパク質の異常局在は,牛の腎異形成の発生に関連している可能性が示唆された.
胚移植による子豚の生産を養豚農場において実施可能とするため,ガラス化保存胚の加温・希釈後の保温時間及び非外科的胚移植におけるレシピエントの体勢について検討した.ドナー胚としてガラス化保存胚を加温・希釈処理した直後の胚及び同処理後38℃の温湯内で2時間保温した胚を用いた.移植操作時のレシピエントの体勢は,立たせた状態(立位)及び鎮静下で横たわって静止した状態(横臥位)とした.移植は,子宮深部注入カテーテルを用いた非外科的胚移植を計25頭に実施した.その結果,どちらの胚を用いても横臥位でのみ産子が得られた.この結果を受け,佐賀県畜産試験場で加温・希釈処理したガラス化保存胚を,市販の魔法瓶を用いて38℃温湯内で保温した状態で県内の養豚農場2農場に輸送し,農場内で飼養する計10頭のレシピエントを横臥位にして非外科的に移植した.その結果,1頭で受胎を確認したが,分娩には至らなかった.
犬バベシア症流行地においてBabesia gibsoni(B. gibsoni )不顕性感染状況を調査した.臨床上健康な犬500頭のうちB. gibsoni 特異的PCR陽性38頭(7.6%)を不顕性感染とした.不顕性感染犬の平均年齢(9.2歳)は,PCR陰性でB. gibsoni 感染症既往歴のない犬(7.4歳)に比べて高かった.不顕性感染犬の97.4%は外出する犬であった.B. gibsoni 感染症既往歴のない犬で外出する275頭を解析したところ,不顕性感染犬においてマダニ予防薬を適切に使用されていた犬の割合(6.3%)は非感染犬(44.8%)に比べて有意に低かった.外出とマダニ予防不徹底はB. gibsoni 感染リスクを高めると考えられた.不顕性感染犬の赤血球数,血球容積,ヘモグロビン濃度及び血小板数は非感染犬より低値を示し,B. gibsoni 不顕性感染は犬の血液性状に影響を及ぼしていた.