臨床的に健康な2-10才齢のホルスタイン種系乳牛12頭より脳脊髄液 (CSF) を腰椎穿刺法で採取し, その性状を調べるとともに, 同時に採取した血液の生化学的所見とも比較検討した. さらに, 臨床応用として痙攣性症候群牛 (痙攣牛) 9頭およびダウナー型起立不能症牛 (起立不能牛) 9頭のCSFについても検討した.
健康牛のCSFは無色透明な水様液であり, 細胞数は平均1.8個/mm
3, 糖は42.3mg/d
lであった. CSFの尿素窒素は11.3mg/d
lであり, 血中尿素窒素との間にr=0.89の相関を認めた. 総蛋白質は29.8mg/d
l, アルブミン16.5mg/d
l, グロブリン12.gmg/dl, A/G比1.25であり, 血清濃度に比較して高かったが, GOT13.7U, GPT1.4U, LDH34.6Uは著しく小さかった. ナトリウム145.8mEq/
l, クロール122.1mEq/
lおよびマグネシウム1.8mg/d
lは, 血清中のそれらと大差を認めなかったが, カリウム2.8mg/d
l, カルシウム4.8mg/d
l, 無機リン1.4mg/d
lは明らかに血清所見に比べて小さかった.
痙攣牛では, CSFの尿素窒素が低く, 起立不能牛では, CSFの比重, 総蛋白質, アルブミン, β-グロブリン, AIG比等が低く, 糖が高く, 血液生化学的所見との関連が一部示唆されたが, 今後さらにCSF所見に臨床的意義を見いだす必要があろう.
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