日本獣医師会雑誌
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40 巻, 9 号
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  • 安藤 敬太郎
    1987 年 40 巻 9 号 p. 621-627
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    豚丹毒の研究は, 戦後間もなくTRAUBおよびDEDIEらの研究業績を契機に, 基礎的な知識のみならず実際面においても飛躍的な進歩をとげ, この点について筆者は, すでに2回にわたり紹介した1, 2). 現在では, 定評のある生菌または死菌ワクチンが世界各国で広く実用化され, また抗体検査法も普及して, その防疫手段は, 他の伝染病のそれに比べて遜色のない水準にまで達しているものと思われる. しかしながら, 炭疽の場合がそうであったように, 豚丹毒でも病原性と感染防御因子の面では, 未だかなりの不可知の分野が残されている.
    この稿では, 最近における豚丹毒に関する研究の中で, 注目される2, 3の成果について紹介する.
  • 木村 良男, 佐藤 満雄, 島 猛, 丸川 隆, 佐藤 格, 片柳 裕, 鮎田 安司
    1987 年 40 巻 9 号 p. 628-632
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    トリクラベンダゾール (T剤) の肝蛭自然感染牛に対する治療効果を, 糞便1g中の肝蛭卵数 (EPG) と血漿グルタミン酸脱水素酵素 (GLDH) 活性を指標として検討した. 供試牛は繁殖の目的で飼養されている肝蛭に自然感染した雌の黒毛和種36頭であった. 供試牛の12頭 (A群) および13頭 (B群) にはT剤の6mg/kgおよび12mg/kgをそれぞれ1回強制経口投与し, 11頭 (C群) は無投薬対照区として, 投薬後6週目まで観察した.A群においては, 10頭 (83.3%) のEPGが陰転し, 2頭のEPGは減少した. B群においては, 12頭 (92.3%) のEPGが陰転した. 両投薬区の血漿GLDH活性平均値は投薬後有意に低下し, 肝障害が改善されたことが示唆された. いっぽう, C群のEPGならびに血漿GLDH活性の有意な変動は観察されなかった. 以上の成績は, T剤が肝蛭成虫に対し著明な産卵抑制効果を発揮したことを意味する. この事実および血漿GLDH値が改善されたことから, T剤は肝蛭成虫に対して高い駆虫効果を保有しているものと考えられた.
  • 吉田 初雄, 門倉 武雄, 三好 志朗, 酒井 健夫, 五十嵐 幸男
    1987 年 40 巻 9 号 p. 635-639
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    臨床的に健康な2-10才齢のホルスタイン種系乳牛12頭より脳脊髄液 (CSF) を腰椎穿刺法で採取し, その性状を調べるとともに, 同時に採取した血液の生化学的所見とも比較検討した. さらに, 臨床応用として痙攣性症候群牛 (痙攣牛) 9頭およびダウナー型起立不能症牛 (起立不能牛) 9頭のCSFについても検討した.
    健康牛のCSFは無色透明な水様液であり, 細胞数は平均1.8個/mm3, 糖は42.3mg/dlであった. CSFの尿素窒素は11.3mg/dlであり, 血中尿素窒素との間にr=0.89の相関を認めた. 総蛋白質は29.8mg/dl, アルブミン16.5mg/dl, グロブリン12.gmg/dl, A/G比1.25であり, 血清濃度に比較して高かったが, GOT13.7U, GPT1.4U, LDH34.6Uは著しく小さかった. ナトリウム145.8mEq/l, クロール122.1mEq/lおよびマグネシウム1.8mg/dlは, 血清中のそれらと大差を認めなかったが, カリウム2.8mg/dl, カルシウム4.8mg/dl, 無機リン1.4mg/dlは明らかに血清所見に比べて小さかった.
    痙攣牛では, CSFの尿素窒素が低く, 起立不能牛では, CSFの比重, 総蛋白質, アルブミン, β-グロブリン, AIG比等が低く, 糖が高く, 血液生化学的所見との関連が一部示唆されたが, 今後さらにCSF所見に臨床的意義を見いだす必要があろう.
  • 深瀬 徹, 菅野 紘行, 茅根 士郎, 板垣 博
    1987 年 40 巻 9 号 p. 640-643
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1986年2月から1987年1月の期間に, 神奈川県, 兵庫県, 愛媛県下において観察された壼形吸虫自然感染猫35頭について, プラジクアンテルによる駆虫試験を実施した. その結果, 本薬剤は30mg/kgの用量で1回皮下注射することにより, 壺形吸虫に対して完全な駆虫効果を示し, さらに下痢等の症状の改善が認められた. また, 供試猫35頭中25頭はマンソン裂頭条虫との混合感染であったが, 本薬剤の投与により, これも同時に駆虫することができた. なお, 投薬に起因すると思われる副作用としては, 1頭に粘液性の下痢がみられ, また3頭に注射時に疼痛の発現が観察されたが, いずれも一時的なものであり, そのほかにはとくに異常は認められなかった. 以上の成績から, プラジクアンテルは猫の壺形吸虫症の治療薬として優れた薬剤であると考えられた. 壼形吸虫 (Pharyngostomum cordatum) は, 猫をはじめとする食肉目の動物の小腸に寄生する吸虫である27).本吸虫のわが国における発生は, 現在までのところ, 西日本および南日本に集中してみられている5, 6, 11). しかし, 近年関東地方でも発生がみられる4, 18, 19) ことや, その中間宿主が広く分布していることから考えて, 近い将来, 全国的に発生することも予測される. また, 壺形吸虫の寄生を受けた猫にはしばしば下痢が認められており1217, 25), 壼形吸虫症は, 小動物を対象とした獣医臨床上, 重要な寄生虫症の1つとなっている. われわれは, さきに, 壷形吸虫に対するプラジクアンテル
  • 正木 宏幸, 能勢 憲英, 徳丸 雅一, 村田 元秀
    1987 年 40 巻 9 号 p. 644-648
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    農業用水として利用されている飯盛川の水質汚染を調査した. 発熱性物質調査として, 発熱性物質試験, リムルステストおよび合成基質法を行った. また, 細菌検査として, 生菌数, グラム陰性菌数および大腸菌群数を計測し, あらたにBODをも測定した.
    1) 細菌類, 発熱性物質およびBODは, 農村地帯で採取された河川水より, 市街地の方が多い値を示した.
    2) 合成基質法によるエンドトキシソ量は, 最低値が899ng/mlで, 最高値は6, 712ng/mlであった.
    3) 下水処理水流入地点の河川水は, 細菌類の検出は少なかった. 大腸菌群およびグラム陰性菌は検出されなかった.
    4) 発熱性物質試験の陽性結果とリムルステストの陽性結果はともに平行になる傾向を示した.
  • 恒吉 守, 篠原 京子, 河野 高明, 恒吉 雅治, 土屋 博義
    1987 年 40 巻 9 号 p. 651-655
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1986年8月から1987年1月にかけて, 宮崎県内の3戸のブロイラー農場で, 2週齢前後から未消化便の排泄と発育不良を主徴とする疾病の発生があった. 剖検では, 膵臓の白色化と萎縮盲腸の膨満を認めた. 腸内容物を顕微鏡的に観察すると, デンプン結晶が多量に認められ, ヨウ素デンプン反応で強陽性を示した. 病理組織学的には, 膵臓の間質では結合織の増生, リンパ濾胞の異所形成を認め, 腺房は萎縮・消失し, 腺房細胞ではチモーゲン顆粒の消失, 空胞変性を認めた. 膵臓の病変の程度が強くなるにしたがい, 発育不良の程度は重度となり, 血清α-トコフェロール量も減少し, これらには高い相関が認められた.
    原因については究明できなかったが, 発育不良の主要因は膵臓の障害による消化不良であると考えられた.
  • 富永 潔
    1987 年 40 巻 9 号 p. 656-658
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    昭和59・60年度の2年間に採材された鶏卵160検体すべてが, アンピシリン (以下ABPCと略) 未投与にもかかわらずABPC残留陽性の成績が得られた. この原因を検索した結果, この陽性反応はABPCの残留によるものではなく, 鶏卵中の抗菌物質による偽陽性反応であることが明らかとなり, 検査方法の早期改善の必要性が示唆された.
  • 別所 伸二, 中村 剛
    1987 年 40 巻 9 号 p. 659-662
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    京都府北桑田郡京北町で, 1984年4月に保護されたニホンジカ (ホンシュウジカ) 2頭の末梢血中にTheileria sp.が認められた。今回認められたTheileria sp.は, T.sergenti, T.parua, T.annulata, T.taurotragiではないと思われるものの, T.ceruiとは鑑別できなかった.
    症例1は48日後に治癒したため放獣したが, 症例2は頸椎骨折のため12日後に死亡した.
    保護搬入時の血液検査では, 低栄養を示したが, 症例1は回復につれて, TP・ALB・GLu値が 改善され, 貧血の回復と末梢血液の幼若赤血球の消退とはよく一致していた.
    肉眼的には異常を認めなかったが, 症例2の病理所見では組織学的には, 肝臓・脾臓・腎臓およびリンパ節にヘモジデリンの沈着が顕著であった.
    なお, 寄生していたダニは7種で, すべてマダニ類であった.
  • 佐藤 良彦, 菅沼 隆, 清水 正樹, 木下 博司, 市川 憲一, 平澤 博一
    1987 年 40 巻 9 号 p. 663-665
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    ニホンジカ (Ccrvus nippon) 約20頭を飼養する鹿牧場で, 1986年7月初旬に3頭のシカがとくに症状を示さず急死した.
    死亡した1頭を剖検したところ, 小腸粘膜は暗赤色を呈し, 血様泥状の腸内容を容れていた. 病理組織学的検査で小腸の粘膜上皮は変性剥離し, 固有層に血管の拡張と高度な出血, 円形細胞, 好酸球, 好中球の浸潤を認めた. 細菌学的検査では, 小腸内容から有毒株のClostridium perfringens A型菌が5×108個/g分離された.
    以上の成績から, 本症例はC.perfringens A型菌が関与した壊死性腸炎と診断された.
  • 網本 昭輝
    1987 年 40 巻 9 号 p. 666-668
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    上顎のくちばしを根元から喪失したセキセイインコに, 人工くちばしを応用し, 好結果を得た. 患鳥は元気食欲がなく, 補助給餌や強制給餌を行ったが6日経ってもまったく自分で採食できなかった. そこで, アクリル板で人工くちばしを作製し装着したところ, その直後から少しずつ採食できるようになった. しかし, 13日目でそのくちばしは脱落し再び採食ができなくなり, 2回目の人工くちばし (歯科用レジン歯で作製) を装着した. 2回目の人工くちばしはその後7日で脱落したが, その時には上顎のくちばしがわずかに伸長して少し採食できるようになっていたので, その後は補助給餌を行っただけで順調な回復がみられた. 人工くちばしの装着は, くちばしを喪失したセキセイインコに対して有効な治療法の一つであると思われるので, その概要を報告する.
  • 伊東 登
    1987 年 40 巻 9 号 p. 673-678
    発行日: 1987/09/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
  • 1987 年 40 巻 9 号 p. 691
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
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