日本獣医師会雑誌
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43 巻, 5 号
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  • 清水 恭子, 後藤 太一, 高橋 壽太郎, 安田 泰久
    1990 年43 巻5 号 p. 325-329
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    早期妊娠因子 (Early Pregnancy Factor;EPF) は, MoRToNらによって受精後24~48時間の母体の血清中に検出され, ロゼット抑制試験において抗リンパ球血清 (Antilymphocyte Serum;ALS) のリンパ球抑制作用を増強することが報告された.以来, 多くの動物種に検出され牛においても報告されているが, 詳細な報告はみられず, また臨床的応用はほとんど行われていない.著者らは, 第一に, 人工授精15日目の牛6頭と対照の非妊娠牛6頭についてロゼット抑制力価 (Rosette Inhibition Titer;RIT) の反復測定を行い, 妊娠牛と非妊娠牛間のRIT値について分析を行った。その結果, 妊娠牛と非妊娠牛でRIT値に有意な差が認あられた。次に臨床的応用として人工授精後2日から38日目までの妊娠牛のEPF活性の動態を調べたところ, 人工授精2日目からEPF活性が検出され, 従来の妊娠診断法の適用できる妊娠38日目までその活性が持続した.さらに, 受精卵移植牛におけるEPF活性の推移を検討した.すなわち, 2頭では移植後14日までEPFの活性が認められず, 臨床診断により非妊娠と判定された.ほかの2頭は移植後28日までEPFの活性が持続し, 臨床診断により妊娠が確認された.また, ほかの1頭は移植後15日までEPF活性を示したが, その後EPF活性は消失し早期の胚死亡が示唆された.
    以上の成績から, EPFにより妊娠診断が可能であること, ならびにEPFが生存胚のモニターとして有効であることが指摘された.
  • 室賀 友子, 一条 茂, 納 敏, 江口 暢, 更科 孝夫
    1990 年43 巻5 号 p. 330-335
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    牛へのビタミンE (V.E), ビタミンA (V.A) の適切な投与法を知るため, 子牛と乳牛 (分娩4-12日前) にV.A: V.Eを200: 1とした配合のV.AD3Eを経口投与し, 血清と赤血球のトコフェロール (Toc) 値, 血清V.A値, および初乳と新生子牛血清のTocとV.Aの変化を検討した.
    子牛へのV.E投与は, 1,000IU (約121U/kg) 投与では血清と赤血球Tco値は軽微に増加し, 2, 5001U (約25IU/kg) 投与では投与後8-72時間にわたるToc値の有意な増加を示した.V.A投与は, 200,000IU (約2, 040IU/kg) 投与で血清V.Aが軽度に増加し, 500,000IU (約5, 102IU/kg) 投与では投与後2-48時間にわたる有意なV.A値の増加がみられた.
    乳牛へのV.E投与は, 12, 500IU (約22IU/kg) 投与では血清と赤血球Toc値は軽微に増加し, 25,000IU (約441U/kg) 投与では投与後4~72時間にわたる血清と赤血球Toc値の明瞭な増加を認あ, また, 分娩直後の初乳と新生子牛の血清Toc値も明瞭に増加した.V.A投与は, 2, 500,0001U (約4, 464IU/kg) と5,000,000IU (約8, 928IU/kg) の両投与群で投与後2~24時間にわたり血清V.Aは増加し, かっ分娩直後の初乳のV.A値も高値を示したが, 新生子牛の血清V.A値は対照牛と差がなかった.
    以上の所見から, 牛への酢酸dl-a-Tcoの経口投与では子牛で25IU/kg以上, 分娩前の乳牛では44IU/kg以上が適切であると判断した.
  • 桜井 健一, 松岡 俊和, 鴻巣 泰, 飯島 雄二, 新井 則雄, 沖 三雄, 椿 志郎
    1990 年43 巻5 号 p. 336-340
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    牛乳房炎乳汁由来Candida krusei の乳房に対する病原性を検討するため, 本菌を山羊の乳房乳頭槽内へ接種し, 以下の知見を得た.
    1) 108CFU/ml接種分房では乳房の臨床的変化は見られず, 24時間後に乳汁のpHは7.2, CMT変法は柵, 細胞数107ml, 好中球数78%, NAGase0.025μmol/min/ml, 接種菌の回収菌量は1.0×103CFU/mlであった.
    2) 106CFU/ml接種分房でも乳房の臨床的変化は見られず, 4日後に乳汁のpHが6.9, CMT変法は什, 細胞数106/ml, 好中球数61%, NAGase0.01μmol/min/ml以上となり, 接種菌の回収菌量は4.1×106CFU/mlで15日間継続して分離され, 108CFU/ml接種分房と同様に亜臨床型乳房炎と認められた.
    3) 104および102CFU/ml接種分房では乳房炎の所見は見られなかった.
    以上の成績から, 山羊においては106CFU/ml以上のC. krusei の接種で乳房炎を起し得ることを認めた.
  • 吉木 研一, 平原 正, 出水田 昭弘, 佐藤 享二, 児玉 和夫, 佐々木 文存
    1990 年43 巻5 号 p. 341-346
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    オーエスキー病ウイルス (ADV) 可溶化試作ワクチンを豚に注射した場合の抗体応答と感染防御能について検討した.
    ADV感染HmLu-1細胞を非イオン性の界面活性剤であるトライトンX-100で処理し, 得られた可溶化抗原およびそれを凍結乾燥したものに親水性油性アジュバントまたはフロインドの不完全アジュバントを添加した材料を2~3.5ヵ月齢豚23頭および7日齢豚4頭に2~4週間隔で2回注射し, その後2~4週目に1頭あたり106.0または103.0TCID50のADV強毒株を鼻腔内攻撃した.
    これらの結果, 親水性油性アジュバントを加えた可溶化試作ワクチンはフロインドの不完全アジュバントの場合よ り高い中和抗体を産生し, 攻撃した豚の多くはウイルスを排出せず, また, 中和抗体価の著しい上昇を示さなかった.
  • 渡辺 大作, 渡辺 一博, 種市 淳, 今野 宏美, 酒井 淳一, 宇井 彰, 山口 純, 小林 虎太
    1990 年43 巻5 号 p. 347-350
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1986年11月山形県の1肥育農家で, 岩手県から10ヵ月前に導入した21ヵ月齢のホルスタイン種雌の肥育牛が急に発熱と高度の貧血, 黄疸, 血色素尿症を呈し瀕死の状態となった.
    血液検査では, 赤血球数およびHt値の著減, 好中球の増加, 小型ピロプラズマの寄生がみられ, 溶血を呈し, 経過に伴いGOT, γ-GT, ビリルビンは著明に増加した.
    剖検では, 著明な黄疸, 脾腫肝臓・胆嚢の腫大と濃厚胆汁の貯留, 肺炎巣をみとめた.
    細菌学的・血清学的・中毒学的検査の結果, レプトスピラ病, 細菌性血色素尿症, 慢性銅中毒は否定された.
    血液塗抹標本では大型ピロプラズマは認められなかったが, 間接蛍光抗体法で陽性を示したことから, 本症は小型および大型ピロプラズマの混合感染によるピロプラズマ病と考えられた.
  • 小澤 はるみ, 土屋 亮, 伊藤 昭夫, 山田 隆紹, 小林 好作
    1990 年43 巻5 号 p. 355-359
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    犬のPhenolsulfonphthalein (PSP) 試験での最適な測定方法を検討した.PSPは注射後90分にはほとんど血漿中に残留していないため, 血漿PSP法の中では60分値を求めるPSP60法が最適と思われた.これと尿PSP法を比較したところ, 尿PSP法は採尿が困難なために正確な測定ができず, PSP60法の方が実用的であると考えられた.42頭の健康犬から得られたその正常範囲は0-71.8μg/dlであった.
    実験的に尿細管障害を作出した3頭の犬について, PSP60を含む各種の臨床病理学的および病理組織学的検査を実施した.その結果, 各種検査成績の中でPSP60値は最も鋭敏に変動し, しかも症状や尿細管組織病変の激しい個体ほど高値を示した.
  • 中井 正博, 河村 正, 松岡 信男, 片江 宏巳, 大石 勇
    1990 年43 巻5 号 p. 360-366
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    犬糸状虫症の予防に用いるIvermectin (IVM) の投与量6~9μg/kgの約2倍量を, ラフ・コリーに投与した場合の影響およびIVMの中枢神経組織への移行について検討した.
    試験犬は2ヵ月齢の幼犬である.ラフ・コリー4頭と雑種4頭にIVM20μg/kgを, 対照群4頭 (ラフ・コリー2, 雑種2) にplacebo (賦形剤) をいずれも1回経口投与した.投薬後24時間臨床所見を観察したが中枢神経症状を含あ, 異常所見は認あられなかった.また, 心電図, 血液・血漿生化学的検査値および24時間後の剖検による病理学的検査所見にも, IVM投与に関係すると考えられる異常は認められなかった.
    IVM投与後6, 24時間の血漿中IVM濃度は, コリー群と雑種群間に有意差はなく, 吸収・排泄に差は認められなかった.IVM投与後24時間の中枢神経組織中IVM濃度は, コリー3頭, 雑種4頭では検出限界以下であったが, コリー1頭では, 小脳で同時点における血漿中濃度の約1/3, 脳幹と脊髄では血漿中濃度に近い濃度が検出された.この成績から, ラフ・コリーのなかにはIVMが中枢神経組織に入り得る個体のあることが明らかにされた.
  • 中島 弘美, 橋本 夏美, 石野 清之, 門田 耕一
    1990 年43 巻5 号 p. 369-374
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    14例の胚中心性リンパ腫, 1例のリンパ形質細胞性リンパ腫, 1例のリンパ芽球性リンパ腫 (急性リンパ性白血病) が電顕的に検索された.胚中心性リンパ腫の全例に核のcleavageと粗面小胞体のわずかな発達が様々な頻度で認められた.デスモゾーム様構造は14例中8例にみられた.リンパ形質細胞性リンパ腫は小型リンパ球様細胞から粗面小胞体の発達した免疫グロブリン産生細胞までと腫瘍細胞の分化段階が広範囲であったが, 胚中心性細胞が優勢に認あられた.リンパ芽球性リンパ腫は特徴的構造に乏しかった.これらのリンパ腫はconvolution型の核を特徴とするT細胞性リンパ腫とは容易に区別された.また, 他の動物のリンパ腫と比較され, 種差の存在が示唆された.
  • 板屋 民子, 徳丸 雅一, 青木 敦子, 斉藤 章暢
    1990 年43 巻5 号 p. 375-379
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    牛乳中の病原性細菌を検出する方法を検討したところ, 以下の2方法が牛乳を大量にあっかえて, しかも培養容量を小さくでき, かっ, 牛乳100ml中100コの微量菌も回収可能で, 有用性の高い方法であった.
    (1) 倍濃度培地法;牛乳をこれと等量の倍濃度増菌培地とともに培養する.(2) 酸凝固法;牛乳に塩酸を加え遠心して得られた沈殿物に, これと等量の倍濃度増菌培地を混合し, pHを中性に調整後増菌培養する.
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