日本獣医師会雑誌
Online ISSN : 2186-0211
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ISSN-L : 0446-6454
76 巻, 8 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
小動物臨床関連部門
  • 斑目 広郎, 広瀬 学, 広瀬 みさき, 佐藤 加奈子, 森 恵, 山田 一孝
    原稿種別: 短報
    2023 年 76 巻 8 号 p. e183-e186
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/05
    ジャーナル フリー

    16歳齢,避妊雌猫が肛門左側にできた潰瘍化した皮膚腫瘤を主訴に個人動物病院に来院した.切除腫瘤の病理組織学的検査を実施し,肛門囊腺癌と診断後,第82病日に死亡した.死後CT後に病理解剖を実施し,局所再発と全身多発転移を伴う両側性肛門囊腺癌と診断した.

  • 坂口 裕亮, 田中 宏, 北村 雅彦, 松本 有紀, 中垣 佳浩, 松倉 将史, 川辺 朋美, 中山 正成
    原稿種別: 短報
    2023 年 76 巻 8 号 p. e193-e196
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/05
    ジャーナル フリー

    CT検査により脊柱管内を大きく占拠する石灰化した椎間板物質を認めた椎間板ヘルニアのミニチュアダックスフンド2症例に遭遇した.2症例ともに脊髄造影検査を実施したところ,神経徴候が悪化した.片側椎弓切除術にて,椎間板物質の摘出を試みたが,周囲組織と癒着しており摘出は困難であった.このことから,CT検査で認められた石灰化した椎間板物質は,脊柱管内で時間経過を経たものと考えられ,脊柱管内を大きく占拠する椎間板物質に長い経過で圧迫されている脊髄に対し,造影剤を注入することで脊髄障害を悪化させた可能性が考えられた.以上より,CT検査によって脊柱管内を大きく占拠する石灰化した椎間板物質を認める症例に対し,脊髄造影検査を実施する際には悪化の可能性を考慮する必要があり,また,手術法やその適応など十分検討が必要であると考えられる.

  • 田川 道人, 新坊 弦也, 富張 瑞樹, 渡邉 謙一, 古林 与志安
    原稿種別: 短報
    2023 年 76 巻 8 号 p. e202-e207
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/25
    ジャーナル フリー

    症例は8歳4カ月のバーニーズ・マウンテンドッグ,去勢雄であり,肺腫瘤の精査を目的に帯広畜産大学動物医療センターを紹介受診した.切除組織の病理学的検査にて肺原発の組織球性肉腫と診断し,第36病日よりロムスチンによる術後抗がん剤治療を行った.ロムスチン5回目投与時に右兼部に5cm大の皮下腫瘤を認め,細胞診にて組織球性肉腫の転移病変と診断した.ドキソルビシンを使用したが効果はみられず病変は11cm大まで増大した.第172病日よりリン酸トセラニブの投与を開始したところ転移病変は急速に退縮し1.5cm大まで縮小した.しかし第301病日に転移病変の再増大と胸水貯留を認め,ビンクリスチンを投与するも反応なく第318病日に斃死した.一時的ではあったものの,リン酸トセラニブの劇的な効果がみられた稀な症例と思われた.

獣医公衆衛生・野生動物・環境保全関連部門
  • 大野 祐太, 山﨑 康司, 葛西 直人, 落合 崇浩, 池田 徹也
    原稿種別: 原著
    2023 年 76 巻 8 号 p. e187-e192
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/05
    ジャーナル フリー

    2017年から2020年にかけて,北海道内の3つの農場からと畜場に搬入された豚において関節炎型豚丹毒の発生が多く認められたため,本研究では,各症例で分離された豚丹毒菌株60株が野生株かワクチン株かを調査した.血清型別PCR法,spaA の配列比較,一塩基変異を利用したワクチン株判定PCR法では58株がワクチン株と同じ性状を示した.また,そのうちの22株を全ゲノム解析し,すべてがワクチン由来であると明らかになった.ワクチンを接種しているにもかかわらず豚丹毒の発生がみられる農場では,ワクチン由来の発症も想定しながら防疫計画を検討する必要がある.

  • 川口 絵梨, 鹿嶋 傳, 大辻 恵理花, 大森 笑子, 中島 孝郎, 大島 克司, 相原 尚之
    原稿種別: 短報
    2023 年 76 巻 8 号 p. e197-e201
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/25
    ジャーナル フリー

    豚,デュロック種,去勢,6カ月齢の左肺に手拳大の淡赤褐色腫瘤が認められた.また,肺の腫瘤よりは小さな粟粒大から胡桃大の灰白色,白色あるいは淡黒色の結節が多臓器に観察された.肺の腫瘤では腫瘍細胞は紡錘形で,長楕円形の核及び弱好酸性の細胞質を有していた.腫瘍細胞はHE染色ではメラニン色素が明らかではなかったが,フォンタナ・マッソン染色では微細な陽性顆粒が確認された.また,腫瘍細胞はMelan-A,PNL2,TRP2,HMB45及びS-100に陽性を示した.内臓の結節は肺の腫瘤と類似した組織像を示した.全身の皮膚,口腔粘膜,眼などには明らかな原発巣は確認できなかった.以上の結果から,本症例は皮膚に腫瘤形成を伴わないメラニン色素低産生性の悪性黒色腫と診断された.豚ではこのような腫瘍の発生報告は初めてである.

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