日本獣医師会雑誌
Online ISSN : 2186-0211
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76 巻, 11 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
産業動物臨床・家畜衛生関連部門
  • 桑田 桂輔, 浮田 真琴, 加藤 智, 國永 尚稔, 田中 英次, 迫田 義博, 蒔田 浩平
    原稿種別: 原著
    2023 年 76 巻 11 号 p. e274-e282
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/07
    ジャーナル フリー

    2018年9月,岐阜県の養豚場で国内26年ぶりの豚熱が発生し,翌年10月から発生予防のためのワクチン接種と抗体検査による免疫状況確認が開始された.免疫状況の評価から,母豚群の免疫抗体価の条件により農場群ごとに接種日齢を調整する必要性が指摘された.そこで母豚とその産子の抗体調査を実施し,移行抗体とワクチンテイクの関係を解析することで,農場ごとのワクチン接種適齢期を推定するシミュレーションモデルを構築した.モデルは母豚のELISA S/P値を用いた産子への移行抗体付与,移行抗体減少,ワクチン免疫付与の予測から構成した.実際の農場のデータを用いて本モデルの予測精度を検証したところ,接種適齢期の推定に利用可能な精度であると考えられた.本手法はワクチン接種適齢期を簡便に推定できるモデルで,豚熱の発生防止に役立つと期待される.

  • 大川原 志織, 村山 和範, 安藤 清彦, 西森 朝美, 西浦 玲奈, 松浦 裕一
    原稿種別: 短報
    2023 年 76 巻 11 号 p. e283-e288
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/07
    ジャーナル フリー

    牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)の持続感染(PI)牛検査において,スクリーニング効率向上を目的とした迅速かつ簡便な手法の検討は重要な課題である.今回,簡便に採材可能な毛根材料を用いてBVDV抗原ELISA検査を実施し,毛根の本数や前処理条件が検査結果に与える影響を評価した.PI牛3頭の毛根を用いた検討では,5本以上の毛根を用いることで3検体全てが,1本の毛根の場合は3検体中2検体が抗原ELISA陽性となった.毛根の処理液への浸漬時間の検討では,一晩(12時間以上)浸漬した際の数値と比較して,240分間の浸漬で90%以上,10~120分間の浸漬で約60%のS-N値が得られることを確認した.これらの結果は,BVDV抗原ELISAの材料として毛根を用いる際のサンプル処理条件に関する基盤情報となると考えられる.

  • 田中 省吾, 猜都 勇介, 大木 万由子, 岩田 亜美, 島 真理子, 寺山 好美, 橋口 未迪, 久野 裕理, 奥村 尚子, 因泥 優樹, ...
    原稿種別: 資料
    2023 年 76 巻 11 号 p. e289-e296
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル フリー
  • 加藤 貴誉湖, 白井 幸路, 小池 新平
    原稿種別: 原著
    2023 年 76 巻 11 号 p. e297-e303
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル フリー

    環境性レンサ球菌(OS)による乳房炎は適切な抗菌性物質選択による治療が重要だが,国内の薬剤感受性状況の報告は少ない.そこで,2010~2012年(前期)及び2016~2018年(後期)に栃木県内の乳房炎罹患牛から分離されたOS96株(前期:49,後期:47)について,薬剤感受性及び耐性遺伝子保有状況を調査した.前期後期ともに分離OS株の4割以上がStreptococcus uberisであった.また,テトラサイクリン(TC)に対しては前期で9.5%,後期で36.4%,ピルリマイシン(PLM)に対しては前期で14.3%,後期で31.8%の株が耐性を示し,後期の方が両薬剤に対する耐性菌の割合が高かった.TC及びPLMについては,耐性遺伝子(tet(O),tet(S),tet(M)及びlinB)保有と薬剤耐性がおおむね一致し,薬剤耐性に耐性遺伝子獲得が関わることが示唆された.さらに,エリスロマイシン(EM)耐性S. uberisでは耐性遺伝子erm(B)保有株が確認され,EMだけでなくPLMの最小発育阻止濃度も高い傾向が認められた.

  • 綱 亜莉沙, 池田 光宏, 倉田 渚, 住吉 俊亮, 松村 有祐, 木庭 猟達, 近藤 広孝, 渋谷 久
    原稿種別: 短報
    2023 年 76 巻 11 号 p. e309-e312
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル フリー

    関東圏にて飼育されていた17歳齢,去勢雄の木曽馬が活力低下,食欲廃絶,及び四肢強直や眼球振盪などの神経症状を呈し,起立不能となって死亡した.剖検時,両側腎臓,及び胃小弯部に灰白色結節が認められた.病理組織学的に,脳,両側腎臓,及び胃において,多巣性かつ無秩序に分布した肉芽腫性炎が認められた.いずれの病変内においても,ラブディティス型の食道を有する幅約20μmの線虫が多数混在していた.線虫の形態学的特徴,及び抽出された28SリボソームRNA遺伝子のシーケンスの結果,線虫はHalicephalobus gingivalisと考えられた.これまでに日本在来馬における本症の発生報告は見当たらないため,日本在来馬の保護のため,より注視する必要がある.

  • 伊藤 理子, 菅野 宏, 真田 慶之助, 太田 和広
    原稿種別: 短報
    2023 年 76 巻 11 号 p. e313-e317
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル フリー

    11カ月齢の黒毛和種雌牛において胸垂に直径6 cmの有茎状の腫瘤が発生し,腫瘤の切除を行った.病理組織学的及び免疫組織学的所見に基づき粘液腫と診断した.術後約2カ月で切除部位に腫瘍が再発し,その後1カ月間に右肩部,左右頸部及び下顎に0.5~1 cmの小型の同腫瘍が多発したため,計5カ所の切除を行った.臨床経過,病理組織学的所見から,多発性粘液腫と診断した.術後10カ月時点では切除部位での再発は認められず,新たな腫瘍も発生していない.牛において粘液腫はまれな腫瘍であり,外科的治療に関する報告は少なく,これまで多発した症例の報告はない.皮膚粘液腫が多発した要因について,本症例では精査できていないが,人においては遺伝子異常に起因する疾患があるため,今後も腫瘍の発生について経過観察が必要と考えられる.

小動物臨床関連部門
  • 藤 将大, 有田 汐紗, 太田 貴子, 冨永 博英, 平川 篤, 杉山 伸樹
    原稿種別: 短報
    2023 年 76 巻 11 号 p. e304-e308
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル フリー

    14歳10カ月齢,去勢済雄のイングリッシュ・コッカー・スパニエルが,嘔吐と四肢の振戦を主訴に夜間救急動物病院を受診した.来院時は起立不能及び意識は傾眠状態で,稟告及び吐物の内容によりイチョウ種子である銀杏による中毒を疑い,入院管理下での治療を開始した.ビタミンB6製剤の投与や対症療法を行い,治療開始9時間後には意識状態の改善並びに自力での歩行が可能になるまで回復した.治療開始11時間後に退院とし,受診11カ月後現在までに症状の再燃は認められず,良好に経過している.

  • 志賀 崇徳, 中田 真琴, 三輪 恭嗣, 大澤 順子, 佐竹 主税, 森野 俊哉, 佐々木 伸雄, 中山 裕之
    原稿種別: 原著
    2023 年 76 巻 11 号 p. e318-e322
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/28
    ジャーナル フリー

    神経症状または眼症状・病変を呈し,動物病院に来院したウサギ75例について,抗エンセファリトゾーンIgM抗体,IgG抗体を間接蛍光抗体法にて測定し,うち27例は抗体価を複数回測定した.75例のうち,40.0%(30/75例)がIgM抗体陽性,89.3%(67/75例)がIgG抗体陽性であった.IgM抗体陽性の症例はすべてIgG抗体陽性であり,IgM抗体陽性かつIgG抗体陰性の症例はみられなかった.複数回測定した27例のうち,66.7%(18/27例)で抗体価の変化が認められ,37.0%(10/27例)で症状の改善が認められた.複数回のIgM及びIgG抗体測定は,免疫状態の把握に有用であると考えられたが,抗体価の変化と症状との間に明確な関連はみられなかった.

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