犬糸状虫症にみられる血清蛋白動態の臨床診断的意義ならびに病態生理学的意義を明確に理解するため, 本症の主要症状の1つであり, しかも疾患時の血清蛋白所見を観察する上に最も多く見られる肝障害に伴なう変動を明らかにする目的をもって, 蛋白代謝の様相をよく反映し, かつ補助的診断法として日常最も用いられている血清高田反応とGros反応, また脂質代謝の面から血清T-ch量の動態を観察するとともに血清蛋白像との関係について症状別に検討した. さらに, これに関連して治療注射時ならびに実験的肝障害時における血清蛋白の動態を観察した.
しかして, 血清蛋白の動態が, 炎症および障害に対する宿主生体反応の反映という立場から, 病的機転の指標として, その軽重と傾向を一にし, その経過動向と消長をともにすることを知った. 殊にglob分屑の動態は, よく肝障害の程度を反映し, しかも早期に変動を示すことから, 臨床的意義の大きいことを認めるとともに臨床所見や諸種の検査成績などとを総合的に観察することによって, 本症の診断, 治療および予後の判定などにより明確な知見を得ることが期待でき, 本症の病態を理解する上に資すること大なることを認め得た.
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