日本獣医師会雑誌
Online ISSN : 2186-0211
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77 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
産業動物臨床・家畜衛生関連部門
  • 樋口 徹, 宮越 大輔, 佐藤 正人, 海道 磨里, 加治原 彩子, 後藤 忠広
    原稿種別: 原著
    2024 年 77 巻 3 号 p. e27-e32
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

    2016~2020年までの間に黒毛和種子牛の脛骨骨折10症例に対し,プレート固定手術を行った.うち1頭はプレート抜去後に再骨折し,再度プレート固定手術した症例であった.症例牛は1日齢から4カ月齢で,体重は30~105 kgであった.用いたプレートは,ダイナミックコンプレッションプレート(DCP)3頭,DCP 2枚が2頭,ロッキングコンプレッションプレート(LCP)1頭,LCPとDCP 4頭であった.内固定が崩壊した1頭以外は治癒し,本来の飼養目的に復した.適切な長さとタイプ,ダブルプレート固定法の選択と,正確な手技の適応が重要と思われた.子牛の脛骨骨折はプレート固定術により,併発症としての変形癒合,骨癒合不全,成長遅延が少ない良好な治癒が得られた.

  • 大鹿 有加, 山口 貴一, 岩元 伸一郎, 池田 省吾, 上垣 隆一
    原稿種別: 短報
    2024 年 77 巻 3 号 p. e33-e38
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

    鹿児島県奄美群島の黒毛和種繁殖農家で,繁殖雌牛3頭が食欲不振,起立不能,出血傾向を呈し,死亡した.死亡牛及び同居牛の血清生化学的検査所見では,強い肝機能障害が示唆された.直前に給与された飼料には多数のカッコウアザミ属植物が混入しており,残余飼料,圃場植物及び死亡牛の糞便から,ピロリジジンアルカロイド類(PAs)のリコプサミンが検出された.硝酸塩中毒等は否定されたことから,本事例をカッコウアザミ属植物による中毒と診断した.当該植物が含有するPAsの肝毒性やクマリンによる血液凝固阻害が病態に関与したと考えられた.また,奄美群島や沖縄本島において採取したカッコウアザミ属植物19検体すべてからPAsが検出された.今後の対策として,カッコウアザミ属植物の中毒に関する周知や適切な草地管理等の指導を行っていく必要がある.

  • 赤上 正貴, 石田 祐貴, 鈴木 雅美, 藤井 勇紀, 川西 菜穂子, 高橋 覚志
    原稿種別: 短報
    2024 年 77 巻 3 号 p. e51-e56
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル フリー

    茨城県における酪農場のバルク乳を用いて,牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)の持続感染(PI)牛を飼養する農場を特定し,乳用牛群からのPI牛の摘発検査を2018~2023年にかけて実施した.バルク乳検体を用いた抗体検査では,延べ1,713戸中69戸のバルク乳が陽性を示した.バルク乳が抗体陽性を示した69戸中7戸の追跡調査で13頭のPI牛を摘発した.摘発したPI牛はすべて子牛か育成牛であり泌乳牛は含まれなかったため,バルク乳を合乳した集乳車合乳527検体からBVDV遺伝子は検出されなかった.茨城県では,バルク乳及び集乳車合乳からBVDV抗体または遺伝子を検出するスクリーニング法によりBVDVの感染源となるPI牛を可能な限り若齢のうちに摘発淘汰することにより効率的にBVDVのまん延を防止できると考えられた.

小動物臨床関連部門
  • 鎌田 紗帆, 森田 智也, 千葉 優介, 藤原 玲奈
    原稿種別: 短報
    2024 年 77 巻 3 号 p. e39-e42
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

    10歳齢,避妊雌の雑種猫がスターター(吸気性喘鳴)を主訴に紹介来院し,画像検査で軟口蓋に基部を持つ可動性のある囊胞が認められた.全身麻酔下にて囊胞を穿刺吸引すると透明の粘稠性の高い液体が抜去された.囊胞の部分切除を行い,切除した病変部位を病理組織学的検査に供した.小唾液腺に関する唾液粘液囊胞を疑ったが,小唾液腺は認められなかったため呼吸上皮由来の囊胞と診断された.囊胞の部分切除後は症状が消失し,第183病日において再発もなく良好な経過を示している.

獣医公衆衛生・野生動物・環境保全関連部門
  • 阿部 増美, 茂木 洋子, 渡辺 一雅, 清宮 幸男
    原稿種別: 原著
    2024 年 77 巻 3 号 p. e43-e50
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

    消化管重複囊胞に罹患した44~49日齢の肉用鶏13例を病理学的に検索した.長径28~70 mmの楕円球状囊胞が7例の十二指腸上行部遠位,3例の腺胃並びに各1例の食道,空腸及び腸間膜に密着していた.各囊胞は単房性及び非交通性であり,内腔に淡明粘液を満たしていた.組織学的に,全囊胞壁は腸粘膜上皮に類似する内張り上皮,固有層,3層の平滑筋及び被膜により構成され,囊胞と消化管はそれぞれ固有の平滑筋層を有していた.十二指腸に密着した囊胞の内張り上皮が有意に背丈の高い絨毛状突起を形成していた.得られた成績から,鶏の消化管重複症では囊胞の多くが固有の平滑筋層を有すること並びに十二指腸重複囊胞は同上行部遠位への密着及び内張り上皮による背丈の高い絨毛状突起の形成により特徴付けられることが示唆された.

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