日本獣医師会雑誌
Online ISSN : 2186-0211
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77 巻, 2 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
産業動物臨床・家畜衛生関連部門
  • 西森 朝美, 小原 潤子, 安藤 清彦, 松浦 裕一
    原稿種別: 原著
    2024 年 77 巻 2 号 p. e7-e13
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/03
    ジャーナル フリー

    本研究では,牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)のプロウイルス量を測定可能な市販キット3種類(tax法,LTR法,pol法)のうち,pol法の伝播リスク分類基準の設定を目的とした.疑似BLV陽性検体を用いて,各キットを異なる条件下で比較したところ,tax法は相対的に測定値のばらつきが生じやすいことが示唆された.そこでLTR法-pol法間の単回帰分析から,pol法の基準値は100,000細胞あたり12,000コピー以上を高リスク,3,000~12,000コピーを中リスク,600~3,000コピーを低リスク,600コピー未満を超低リスクと設定した.この基準による判定は,既存のLTR法による判定とおおむね一致し,またリンパ球増多症の個体の9割以上を高リスクに分類できたことから,農場のBLV対策において有用と考えられる.

  • 小林 憲一郎
    原稿種別: 短報
    2024 年 77 巻 2 号 p. e21-e26
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/16
    ジャーナル フリー

    デルマトフィルス症はDermatophilus congolensis の感染により牛,めん羊,山羊,馬等に滲出性皮膚炎を起こす.2022年1月にA酪農場で同症が29頭中20頭発生し疫学調査で預託先のB公共牧場の関与が示唆された.そこでB公共牧場を含む管内8公共牧場で同症の発生状況を調査した.2022年6〜9月に延べ898頭を調査し,B公共牧場で3頭の発症を認めた.B及びC公共牧場の上牧前と下牧時のペア血清の抗体保有状況は,B公共牧場(n=42)が入牧時21.4%,下牧時88.1%,C公共牧場(n=31)が入牧時41.9%,下牧時61.3%で両公共牧場のリスク比は1.7倍(95%信頼区間:1.1〜2.8)だった.D. congolensis 感染リスクが高い公共牧場の利用農場は下牧牛を介した感染に注意が必要である.

獣医公衆衛生・野生動物・環境保全関連部門
  • 稻田 和也, 大野 祐太, 石田 祥士, 清水 俊一, 本郷 健雄
    原稿種別: 短報
    2024 年 77 巻 2 号 p. e14-e20
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/03
    ジャーナル フリー

    めん羊における志賀毒素産生性大腸菌(STEC)とサルモネラ属菌の保有状況を明らかにするため,と畜場に搬入された北海道内で飼育しためん羊の糞便を調査した.STECはめん羊の直腸便60検体を検査し,19検体(31.7%)から21株,また,サルモネラ属菌はめん羊の直腸便103検体を検査し,34検体(33.0%)から36株を分離した.STECの血清型のほとんどは型別不能だったが,国内外においてヒトへの病原性が知られるeae遺伝子,stx1遺伝子を保有するSTEC O103:H2が分離された.また,サルモネラ属菌は血清型の多くは血清型Ⅲb 61:−:1,5,(7)であり,Salmonella Typhimurium単相変異株のS. enterica 血清型4,[5],12:i:−やS. Rissen,S. Derby,S. Newportも分離された.今回の結果から北海道内で飼育しためん羊はSTEC及びサルモネラ属菌を保有することが明らかとなり,牛や豚などの他の家畜同様にと畜処理時にめん羊の糞便を介し,と畜場や枝肉を汚染する可能性が危惧された.

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