日本獣医師会雑誌
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44 巻, 12 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 目見田 清, 菊地 正健, 大澤 哲也, 山崎 勝, 藤岡 一彦, 田中 博, 山崎 伸二, 竹田 美文
    1991 年 44 巻 12 号 p. 1167-1171
    発行日: 1991/12/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1988年8月から12月にかけて, 愛媛県中央家畜保健衛生所管内の3養豚場で30~43日齢豚に浮腫病が散発し, 病理学的, 細菌学的検索を行った.
    臨床症状および病理学的所見から浮腫病と診断され, 死亡子豚7頭と病性鑑定殺豚1頭について細菌学的検査を行ったところ, 小腸内から107-10cfu/gの菌数で大腸菌が分離された. これらの分離菌の血清型は0139で, Vero毒素を産生していることが確認された. さらに, beads-ELISAとオリゴヌクレオタイドプローブを用いたDNAコロニーハイブリダイゼーション試験により, この毒素はVT 2vpと型別された.
    以上の結果から, VT2vp産生大腸菌が豚浮腫病の原因菌となると考えた. また, VT2vp産生大腸菌の保菌豚を確認したことから, 保菌豚が感染源となる可能性が考えられた. なお, 今回の豚浮腫病および健康豚からのVT2vp産生大腸菌の分離は, わが国で最初である.
  • 佐藤 邦彦, 三浦 康男, 徳久 修一, 服部 孝二, 宮村 和典, 田島 和彦
    1991 年 44 巻 12 号 p. 1172-1175
    発行日: 1991/12/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1990年に採取された924例の野外豚血清を用い, 間接免疫酵素抗体ブラック染色 (IIPS法), 補体要求性中和試験 (CNT法), ELISAおよびLatex凝集試験 (LA法) による抗体検出率を比較した. IIPS法とCNT法による抗体検出はほぼ一致し, その一致率は99.6%であった. ELISAおよびLA法との一致率は93.7%および93.3%であった. ELISAと他の試験法との比較では, CNT法は93.6%, IIPS法は93.7%, LA法は95.3%の一致率であった. LA法と他の試験法との比較では, CNT法は93.1%, IIPS法は93.3%, ELISAは95.3%の一致率であった. IIPS法およびCNT法では抗体疑陽性例はなかったが, ELISAでは12例, LA法では35例あった. 以上の成績から, ADウイルス感染豚の摘発に用いる血清学的診断法として, IIPS法とCNT法は極めて有用と考えられた.
  • 町田 登, 岡本 芳晴, 南 三郎, 山我 義則, 籠田 勝基
    1991 年 44 巻 12 号 p. 1176-1179
    発行日: 1991/12/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種育成牛における不整脈の発現状況を知る目的で, 未経産牛269頭について聴診ならびに心電図による検索を行った. その結果, 269頭中10頭に4種類の不整脈を認めた. その内訳は洞性不整脈2例, Wenckebach型洞房ブロック5例, 第2度房室ブロック2例ならびにWenckebach型洞房ブロック+房室接合部性期外収縮1例であった. これらのほとんどは迷走神経緊張の増大との関連で生ずる不整脈であり, 搾乳牛に多発する心房細動および心房性・心室性期外収縮とは異なり, 臨床的意義の極めて低い不整脈であることが明らかになった.
  • 柴田 勲, 宇留野 勝好, 鮫ヶ井 靖雄, 西村 雅明, 大田 峻二
    1991 年 44 巻 12 号 p. 1180-1184
    発行日: 1991/12/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    オーエスキー病 (AD) ウイルス糖蛋白質g III抗体検出用ELISA (g IIIELISA) の有用性について, 中和試験 (NT) およびラテックス凝集反応 (LA) と比較検討した.
    野外豚血清1128検体を用いた検査結果からNTに対するg III ELISAの感度は99.7%, 特異性は99.9%で, 両者の判定結果の一致率は99.8%であった. 5株のADウイルスを用いた豚実験感染試験の成績では感染初期の抗体検出感度はLAが最も良く, g III ELISAでは早いもので接種後1週目から抗体が検出され, 2週目以降全頭陽性と判定された. NT陽性のg III欠損ADウイルスワクチン接種豚血清はg III ELISAではすべて陰性であった. g III欠損ワクチン接種後3週目の豚を強毒ウイルスで攻撃した経過血清を検査した結果, g III ELISAでは攻撃後1週目からすべて抗体陽性となった. NTではワクチン接種後, 早いものでは1週目から抗体が検出された.
    以上の成績から, g III ELISAによりg III欠損ワクチン抗体と野外ADウイルス感染抗体を識別できることが示され, 今後, ワクチンを用いたAD清浄化対策を実施するうえで有効な血清診断法になると考えられる.
  • 南 哲郎
    1991 年 44 巻 12 号 p. 1185-1187
    発行日: 1991/12/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    牛肉自由化は1990年4月1日をもって現実のものとなった. 今後は消費者のニーズに合わせて, 質とともに安全, 安価な牛肉の供給が求められる. 要望に答えるための一方策として牧野の有効利用による牛の低コスト生産があげられる. しかし, 畜産を含めて日本農業の現実は厳しい. そこで, 今後における放牧事業の効率的推進の一助とする目的で, 1990年11月10日に日本獣医畜産大学において農業経済学, 草地学, 畜産経営学等, 広い視野から「牛の低コスト生産をめぐる諸問題」と題する放牧衛生フォーラムが家畜衛生研究会 (会長: 内田和夫氏・日獣大教授) 主催で開催された. フォーラムには獣医研究者・技術者のみならず草地・飼料関係者等も含め約100名が出席した.
    内田会長の開会挨拶のあと, 照井信一氏 (農水省北陸農試・畜産研究官) の座長のもとで大滝典雄氏 (熊本県配合飼料価格安定基金協会・常務理事) による「放牧の活生化と複合経営」および南哲郎氏 (農水省家畜衛試・普及科長) による「小型ピロプラズマ病をとりまく諸課題」, 次いで村田富夫氏 (日獣大教授) を座長に高野信雄氏 (農林漁業金融公庫・技術参与) による「国際化に対応した和牛低コスト生産とサイレージ戦略」がそれぞれ報告され, 活発な討議がなされた. さらに, 締めくくりとして宮崎宏氏 (日大教授) を座長に迎えて桜井豊氏 (酪農学園大名誉教授) による「日本農業攻撃を裁く」と題する特別講演があり, 農業をとりまく世界とその情勢分析が示された. 以下に, 話題提供者の講演要旨を掲載し関係者の参考としたい.
  • Ch. PILET
    1991 年 44 巻 12 号 p. 1188-1191
    発行日: 1991/12/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
  • 草地 恒太
    1991 年 44 巻 12 号 p. 1195-1200
    発行日: 1991/12/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    716頭の健康成犬の血漿amylase活性値をPNP-7G法で測定したところ, 平均値2093.5±624.5IU/lを得た. 新生子犬や子犬では低値で, 成犬では年齢, 性, 犬種による差はなく, 発情, 妊娠, 採食, 絶食および肥満によって著明な影響を受けず, 日内変動や季節変動も観察されなかった. 腎機能低下や上部消化管に病変のある犬で上昇することが観察された. 様々な体調や疾患は, 循環, 神経支配, ホルモン支配等に影響して血漿amylase活性値を変動させることが示唆された.
  • 廣瀬 孝男
    1991 年 44 巻 12 号 p. 1201-1204
    発行日: 1991/12/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    血液塗抹標本で赤血球表面にHemobartonells felisの高度な感染がみられた猫3例に, 犬糸状虫の駆虫に用いられるTrimelarsenを用いて静脈内投与による治療を行ったところ, H. felisは早いものでは投与3時間後に末梢血から消失し, 以後6ヵ月から1年間の観察において本症の再発は認められなかった.
    このことからTrimelarsenは猫ヘモバルトネラ症の治療薬として有効であることが示された.
  • 近藤 忠男, 足達 雅之
    1991 年 44 巻 12 号 p. 1207-1209
    発行日: 1991/12/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    16歳のホルスタイン種の雌牛に肺扁平上皮癌を見出した.
    原発部位は右肺前葉で, 大きさは約20×10×3cm, 灰白色を呈し結合織に富んでいた. 肺, 心嚢および胸壁の胸膜には最大径約1cmの多数の灰白色転移結節がみられた. 組織学的には重層扁平上皮様の腫瘍細胞が索状に配列し, 癌胞巣を形成していた. 腫瘍細胞は核小体を含む数個の大型の明るい核をもち, 細胞質には好酸性滴状のケラトヒヤリン顆粒が認められた.
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