牛肉自由化は1990年4月1日をもって現実のものとなった. 今後は消費者のニーズに合わせて, 質とともに安全, 安価な牛肉の供給が求められる. 要望に答えるための一方策として牧野の有効利用による牛の低コスト生産があげられる. しかし, 畜産を含めて日本農業の現実は厳しい. そこで, 今後における放牧事業の効率的推進の一助とする目的で, 1990年11月10日に日本獣医畜産大学において農業経済学, 草地学, 畜産経営学等, 広い視野から「牛の低コスト生産をめぐる諸問題」と題する放牧衛生フォーラムが家畜衛生研究会 (会長: 内田和夫氏・日獣大教授) 主催で開催された. フォーラムには獣医研究者・技術者のみならず草地・飼料関係者等も含め約100名が出席した.
内田会長の開会挨拶のあと, 照井信一氏 (農水省北陸農試・畜産研究官) の座長のもとで大滝典雄氏 (熊本県配合飼料価格安定基金協会・常務理事) による「放牧の活生化と複合経営」および南哲郎氏 (農水省家畜衛試・普及科長) による「小型ピロプラズマ病をとりまく諸課題」, 次いで村田富夫氏 (日獣大教授) を座長に高野信雄氏 (農林漁業金融公庫・技術参与) による「国際化に対応した和牛低コスト生産とサイレージ戦略」がそれぞれ報告され, 活発な討議がなされた. さらに, 締めくくりとして宮崎宏氏 (日大教授) を座長に迎えて桜井豊氏 (酪農学園大名誉教授) による「日本農業攻撃を裁く」と題する特別講演があり, 農業をとりまく世界とその情勢分析が示された. 以下に, 話題提供者の講演要旨を掲載し関係者の参考としたい.
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