1997年3月に, 台湾において口蹄疫 (FMD) が発生し, 各地に広がった. 最初に疑われた事例は1997年3月14日に新竹 (Hsinchu) の養豚場において認められた. 臨床症状, 肉眼的所見と病理組織学所見, ならびにELISA (酵素免疫測定法) とRT-PCR (逆転写酵素を用いたPCR法) による検査結果に基づいて, この症例は3月19にTaiwan Animal Health Research Institute (TAHRI) によりFMDであると確認され, またこのことは3月25日に英国のPirbrightにあるFMDWorld Reference Laboratoryにより再度確認された.
7月末までに, 台湾における養豚場のおよそ4分の1にあたる合計6, 147ヵ所の養豚場に伝染していた. FMDは淘汰およびワクチン接種という手段により2ヵ月以内に制圧された. 感染した養豚場は, 3月には1, 300ヵ所, 4月には3, 864ヵ所, 5月には975ヵ所, 6月には5ヵ所, 7月には3ヵ所であった. 合計6, 147ヵ所の養豚場における豚の総数は4, 658, 515頭であった. このうち1, 011, 674頭の豚が臨床的徴候を示し, 184, 231頭がこの病気により死亡するに至り, また3, 850, 746頭の豚が, 埋却, 焼却, レンダリングにより処分された. 政府は2, 100万ドースのオイルアジュバント不活化ワクチンを購入した. この量は各豚に2回接種を行い, 乳牛, 山羊, 鹿を含あた他の偶蹄動物に1回接種を行うのに十分なものであった.
ワクチンの到着までに非常に時間を要したが, 5月初めの時点において, すべての豚に対して少なくとも1回ワクチン接種が行われており, 5月の末頃には, ブースター注射が完了していた. ワクチンが使用される前に, 伝染している養豚場のすべての豚を殺処分するという方法により淘汰する方針が実行された. 全面的なワクチン接種 (blanket vaccination) が行われた後は, 部分的に根絶する方針が採られた. すなわち, 臨床的徴候を示していた豚だけが殺処分された. FMDが発生したことが1997年3月20日に宣言されてから後, 豚の価格は一挙に一直線に下落し, およそ1ヵ月半にわたり価格は当初の4分の1から半分に低迷した. すべての養豚場がワクチンを入手するに至った5月の初めには, 豚の価格は正常な水準に戻った.
抄録全体を表示