牛のワラビ中毒の診断は,造血機能障害による特徴的な血液所見や病理所見に加え,牛がワラビを採食していたかどうかを確認することが不可欠である.今回,下牧後に急死した和牛の症例について,病理所見からワラビ中毒が強く疑われたことから,消化管内に残存するワラビのリブロースビスリン酸カルボキシラーゼ大サブユニット(
rbcL)遺伝子の部分塩基配列を解析することによりワラビ採食の証明を試みた.その結果,材料として用いた第一胃,腸内容からPCR産物が増幅され,増幅産物はワラビの相当する遺伝子と高い相同性を示した.また,系統樹解析でもワラビと同一のクラスターに位置した.放牧時の採食行動が不明な牛の消化管内容からワラビを検出できたことから,本法は牛のワラビ中毒の補助診断として有用であった.
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