日本獣医師会雑誌
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66 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
産業動物臨床・家畜衛生関連部門
  • 高森 広典, 日野 正浩, 髙橋 幸治, 豊島 たまき, 竹田 百合子, 髙野 泰司, 田中 省吾, 山川 睦
    原稿種別: 原著
    2013 年 66 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
    2010年東北地方にアカバネウイルス(AKAV)が流行し,アカバネ病と診断された異常産子牛60頭の病変の特徴と中枢神経系(CNS)組織におけるAKAV遺伝子検出部位の発生時期による推移について検討した.9~10月分娩の15症例では,脊椎彎曲及び非化膿性脳脊髄炎が14症例に認められた.11~12月分娩の22症例では,重度の矮小筋症が認められた.2011年2~4月分娩の12症例では,水無脳症が10症例に認められた.免疫組織化学的染色により,9月分娩の子牛1症例の頸髄グリア細胞にのみ,AKAV抗原がわずかに認められたが,ウイルス分離は,すべての症例で陰性であった.一方,AKAV遺伝子は,9~10月分娩の全症例から検出され,12月分娩の一部の症例でも中脳,延髄及び脊髄からは検出可能であった.2月以降分娩の症例では,いずれの部位からも遺伝子は検出されなかった.以上の結果から,AKAV遺伝子は,CNS病変が存在するかぎり,中脳,延髄及び脊髄から長期に渡って検出可能であることが示された.アカバネ病診断においては,これらの部位を中心に検査を進めていくことが重要である.
小動物臨床関連部門
  • 山下 和人, 齊藤 靖生, 足立 真美, 伊丹 貴晴, 石塚 友人, 田村 純, 福井 翔, 三好 健二郎
    原稿種別: 原著
    2013 年 66 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2013/03/14
    ジャーナル フリー
    犬臨床例の周術期疼痛管理にレミフェンタニルと低用量フェンタニルを持続静脈内投与(CRI)で併用し,その効果と副作用を検討した.犬110頭を酸素-セボフルラン吸入麻酔で全身麻酔し,術中にレミフェンタニル36μg/kg/hrCRIと術後にレミフェンタニル4μg/kg/hr CRIを用いた群(R-R群,n=55)及び術中にレミフェンタニル36μg/kg/hr-フェンタニル2μg/kg/hr CRIと術後にフェンタニル2μg/kg/hr CRIを用いた群(RF-F群,n=55)を比較した.術中の終末呼気セボフルラン濃度はR-R群1.32~1.48%及びRF-F群1.43~1.57%であった.麻酔中にはすべての犬で調節呼吸を実施した.低血圧の発生率はRF-F群で有意に低かった(RF-F群13%vs R-R群38%,P=0.010).いずれの群も麻酔回復は速やかであったが,術後疼痛はRF-F群でR-R群よりも有意に軽減された(P=0.041).レミフェンタニルと低用量フェンタニルCRIによって,麻酔中の循環機能が温存され,術後疼痛を緩和できることが示唆された.
  • 船山 麻理菜, 寺崎 絵里, 小宮山 絵梨, 上地 正実
    原稿種別: 短報
    2013 年 66 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2013/03/14
    ジャーナル フリー
    犬の血栓塞栓症はまれである.われわれは,末梢性動脈血栓塞栓症及び左心室腔内における血栓形成が疑われる犬に遭遇した.症例はボーダー・コリー,避妊雌,4歳9カ月齢,両後肢の起立困難,肢端の冷感が突然認められたことから末梢性動脈血栓塞栓症が疑われた.また,心臓超音波検査にて左心室腔内心尖部に突出した腫瘤(20.6×18.5mm)が認められ,その経過から左心室腔内血栓を疑い,ダルテパリンナトリウム及び塩酸オザグレルの投与を行った.投与後7日で腫瘤は13.1×4.9mm まで縮小し,第58病日から歩行可能となり,第79病日に腫瘤は消失した.血栓の確定診断は,外科的除去による病理学的検査が必要だが,内科療法により短期間で消失したことから,腫瘤は血栓であると判断した.本症例では抗血栓療法による血栓形成の抑制により血栓を溶解に導くことができたと考えられた.
  • 須永 隆文, 高木 哲, 小川 修治, 細谷 謙次, 奥村 正裕
    原稿種別: 短報
    2013 年 66 巻 1 号 p. 57-60
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2013/03/14
    ジャーナル フリー
    人工真皮とは,抗原性を低減させたコラーゲンを主な構成成分とする第一次創傷被覆材であり,皮膚移植創に良好な移植床を作成することを目的に医学領域で広く応用されている.一方,犬に対するその臨床応用の報告はほとんどみられない.今回,4症例の犬において四肢遠位あるいは尾部に自然発生した腫瘍切除時に生じた広範囲の皮膚欠損部に良好な移植床形成を目的として人工真皮(ペルナック®)を適用し,比較的早期に新鮮で均一な健康肉芽様組織の誘導に成功した.さらに,その移植床の大部分で遊離移植片を良好に生着させることができた.犬の皮膚構造は人のそれと異なるが,犬の皮膚欠損創においても,人工真皮の適用によって皮下組織が少ない部位においても十分かつ良好な移植床を形成でき,皮膚再建の適応範囲を拡大させることが可能になると考えられた.
  • 家村 龍司, 塚谷 律子, 野中 淳子, 川村 佳代子, 梅村 美知乃
    原稿種別: 短報
    2013 年 66 巻 1 号 p. 61-64
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2013/03/14
    ジャーナル フリー
    2007年から2010年の間に国内において下痢の症状が認められた12週齢以下の犬149症例の便または腸管を検体とし,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて犬コロナウイルス(CCoV)及び犬パルボウイルス2型(CPV-2)の検出状況を調査した結果,CCoV及びCPV-2の検出率はそれぞれ46.3%及び38.3%であった.CCoV陽性検体のうち,CCoV Iの検出率が年々増加傾向にあるものの,CCoV IIa の検出率に変化はなく,いまだに最も高い検出率であった(75.4%).CPV-2 陽性検体のうち,CPV-2b の検出率が最も高く(93.0%),CPV-2cは検出されなかった.全検体の12.1%においてCCoV及びCPV-2が同時に検出された.また,検出数が最も多かったのは,7週齢の犬の検体からであった.
獣医公衆衛生・野生動物・環境保全関連部門
  • 村上 覚史, 金澤 美緒, 村田 亮, 関口 真樹, 大場 剛実
    原稿種別: 短報
    2013 年 66 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2013/03/14
    ジャーナル フリー
    廃用牛における腸管内細菌の生体内移行(bacterial translocation:BT)を解明するため,廃用牛12 頭の臓器を細菌学的,病理学的及び免疫組織化学的手法を用いて調べた.その結果,腸間膜リンパ節(MLN)の91.7 %,肝臓の100 %及び脾臓の66.7%から腸管内細菌が分離された.グラム陰性菌では,Escherichia coliがMLN の16.7%及び肝臓の8.3%から,Klebsiella pneumoniae とPseudomonas aeruginosa が肝臓の8.3%から分離された.グラム陽性菌では,Bacillus 属,Enterococcus 属あるいはStreptococcus 属及びStaphylococcus 属が分離された.S. aureusの分離率はMLN で8.3%,肝臓で25 %,脾臓で8.3%であった.抗E. coliポリクローナル及び抗S. aureus抗体陽性抗原は両菌種が分離された臓器から免疫組織化学的手法で検出された.病理組織学的所見では,多くの検査牛の脾臓濾胞周縁帯に好中球集積層が出現し,MLN 及び脾臓の濾胞にセロイド顆粒の蓄積が目立った.これらの成績から検査した肝臓に異常がみられた廃用牛でBT 及び消耗状態が確認された.
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