日本消化器内視鏡学会雑誌
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28 巻, 3 号
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  • ―特に内視鏡的色調と画像処理による癌巣粘膜内血管床との関連性について―
    小泉 和三郎, 大井田 正人, 西元寺 克禮, 岡部 治弥, 中 英男
    1986 年 28 巻 3 号 p. 493-507
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     陥凹型および平坦型早期胃癌の癌巣粘膜内血管床の実態を知る目的で,画像解析装置を用い,健常部(N)に対する癌巣(C)粘膜内総血管断面積比(以下C/Nratio)を血管床比として算出し,内視鏡的色調ならびに組織型との関連を比較検討した.早期胃癌の色調は粘膜内血管床,特に粘膜上層の血管床と有意に相関した(p<0 .001).組織型を3型[1.分化型腺管腺癌,2.trabecularまたはmicroglandular structureを主とする低分化型腺癌,3.粘液細胞癌を主とし,anaplasticな増生を呈する未分化型腺癌]に分類し,C/N ratioを比較検討をした.低分化型腺癌は最も高値を示し,未分化型腺癌は最も低値を示し,両者に有意な差を認めた(p<0.01) .なお,分化型腺管腺癌はその中間型を示した.次いで血管作動物質(epinephrine+prostaglandin E1)を用いたPharmacoendoscopyによる早期胃癌の浸潤範囲診断(以下PEP)の有効性と血管床との関連を検討した.本法有効例(15例)のC/N ratioは,無効例(12例)のそれに比して明らかな高値を示した(p<0.001).すなわち,有効症例の癌巣粘膜は豊富な血管床を有していた.この事実はPEPのメカニズムを知る上で重要な知見と考えられた.
  • ―胃蠕動,胃排出,愁訴との関連について―
    竜田 正晴, 飯石 浩康, 春日井 博志, 奥田 茂
    1986 年 28 巻 3 号 p. 508-515
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃・十二指腸病変を有さない患者31名に,内視鏡的Congored-methylene blue testを施行し体部胃炎の拡がりを観察した.体部胃炎と胃運動および愁訴との関連を検討するとともに,Domperidoneの胃蠕動および胃排出に及ぼす効果についても検討した.胃蠕動運動は丹羽らの方法で,内視鏡的に観察し,胃排出は原沢らの方法に従い,acetaminophen法により測定した. 体部胃炎の高度な症例では,胃蠕動運動および胃排出に著明な低下がみとめられたが,Domperidoneの投与により,胃蠕動および胃排出はともに促進がみとめられた.体部胃炎の高度なものでは,いずれも何らかの愁訴を訴えていたが,心窩部痛を訴えるものは少なく,腹部膨満感等を訴えるものが多く,これらの愁訴には食後の胃運動の遅延が深く関連しているものと考えられた.
  • 松田 徹, 外田 博貴, 板坂 哲, 上野 恒太郎, 石川 誠, 知念 功雄, 板坂 勝良, 芦沢 圭子, 今 周二, 門馬 孝, 大泉 晴 ...
    1986 年 28 巻 3 号 p. 516-522
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     トロンビンの胃内凝固能に対する胃酸濃度の影響と最大凝集能を来たすトロンビンの至適濃度およびセクレチンまたはシメチジンの胃内pHにおよぼす影響について検討した.さらに実際に急性上部消化管出血に対し,あらかじめセクレチンまたはシメチジンを投与し,次いでトロンビンの少量頻回経口投与した止血効果について検討を行った.トロンビンの凝血能は,pH1.0ではほとんど不活化されたが,pHが上昇するにつれて増大し,pH6.0以上で最大となった.このトロンビンの失活は,常温で45分間放置した後pHを上げると復活したが,45分間37℃ で保温した場合には,その後pHを上げても完全な復活はみられなかった.トロンビン生食水溶液の濃度の違いによる凝血能の比較では,5,000u/20~40mlで最高の凝血能を示した。一方,セクレチン150uまたはシメチジン200mgを静注すると,胃内pHは45分から50分後に7.0以上に上昇し,それぞれ約45分と90分間持続した.以上のことから,急性上部消化管出血に対しては,セクレチンあるいはシメチジンを投与して胃内pHを高く維持させながらトロンビンを5,000u/20~40mlの濃度で3時間ごとに頻回に経口投与するのが効果的と考えられた.このトロンビン治療法を急性上部消化管出血30例に対して行なった結果,内視鏡的局注止血法を併用した19例中18例,94.7%に,また内視鏡的局注止血法を併用しないでよいと思われた出血11例中9例,81.8%に有効な止血成績が得られ,臨床上有用なものと考えられた.
  • ―内視鏡的乳頭括約筋切開術の適応とその意義―
    播磨 一雄, 富士 匡, 秋山 哲司, 野口 隆義, 衣川 皇博, 浅上 文雄, 天野 秀雄, 相部 剛, 有山 重美, 竹本 忠良
    1986 年 28 巻 3 号 p. 523-530
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     自験例31例の膵胆管合流異常症の臨床的特徴およびその取り扱いについて再検討を行なった.そして本症の経過観察例における内視鏡的乳頭括約筋切開術(以下,EST)施行例3例の経験にもとついてその意義と適応について考案を加えた. 本症の治療の原則は,膵液の胆道内への逆流を排する外科治療の立場が確立されているが,個々の非癌例に対する臨床的取り扱い法には必らずしも画一的に対処できない.このような背景においてわれわれは,本症の合併症(総胆管結石をはじめとする)を治療する目的でESTを施行した. 今回ESTを施行した3例は,われわれの分類ではnon-CCC(III 型)2例とCCC(II 型)1例である.結果は,non-CCC(III 型)においては,手技的にも容易に,しかもなんら合併症もなくESTの治療に成功した.一方,CCC(II型)では結石の治療に成功したものの,EST手技上予期できなかった合併症,急性膵炎の発症を経験した. 以上の経験からわれわれは,1)non-CCCは胆嚢癌の合併頻度が高く,ESTの臨床的意義に疑義を持しているが,ESTは必らずしも禁忌とはならない.2)一方,総胆管下部に長い狭窄を有するCCCや,下部(括約筋直上)に嚢腫状拡張部を有するCCCに対するESTは少なくとも禁忌と考えざるをえないと結論した.
  • ―その臨床像と治癒過程
    金子 正幸, 中島 俊雄, 多田 久人, 鈴木 豊, 鈴木 利宏, 升川 浩, 高橋 恒男, 上野 恒太郎, 石川 誠
    1986 年 28 巻 3 号 p. 531-541
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     抗生物質起因性腸炎49例を内視鏡所見によって4群に分類し,臨床像を比較検討するとともに,28例については色素散布法及び拡大観察法によりそれぞれの治癒過程を観察した. 49例の内訳は偽膜性大腸炎(PMC)18例,急性出血性大腸炎(AHC)15例,アフタ様大腸炎(APC)13例,分類不能3例であった.平均年齢はPMC63.6歳,AHC38.2歳,APC54.7歳,男女比はPMC1:5,AHC1:0.9,APC1:3.3であり,病悩期間はPMC28.7日,AHC15.5日,APC20.6日であった.PMCとAPCは多剤非経口投与例が多く,AHCはPC系の単独経口投与例が多かった.治癒過程では,PMCは点状陥凹を残し,腺窩の大小不同や配列の乱れた部位がみられたが,AHCは瘢痕を残さず,APCはタコイボ様病変が漸次平低化し,点状陥凹を残して治癒した.
  • 王 康義, 松永 隆, 酒井 正彦, 内野 治人, 三宅 健夫
    1986 年 28 巻 3 号 p. 542-549
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     大腸局所血行動態の部位による差違および疾患による変動をみるため,レーザードップラー法を用い,正常人47名,潰瘍性大腸炎13名(のべ23回),肝硬変症9名を対象に大腸局所血流を測定し,その意義を検討した. 正常人における大腸各部位の局所血流は,盲腸および結腸各部位では差を認めず,直腸のみ有意に低値であった.横行結腸の結腸紐付着側と非付着側との間にも差を認めなかった.病的状態として,潰瘍性大腸炎活動期の直腸局所血流は緩解期および正常人と比べ有意に高値であり,緩解期にはほぼ正常人と等しく,水素ガスクリアランス法による既報の結果と一致した.肝硬変症では,直腸およびS状結腸の局所血流はともに正常人と比べ有意に低値であった.以上より,腸管局所の炎症および門脈圧亢進症が大腸局所血流に影響を及ぼすことが示された.また,レーザードップラー法は,大腸局所血行動態の解明に有用な方法と考えられた.
  • ― 観察診断と写真診断―
    加藤 修, 服部 和彦
    1986 年 28 巻 3 号 p. 550-553_1
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     1979年1月より1984年12月までに当院にて施行したPanendoscopy6,412件中,発見もしくは確認した胃癌は201例207病巣で,うち早期胃癌(疑診も含む)は81例84病巣であった.これらの胃癌中,観察診断にて良性の胃疾患と考え,生検にて癌と確認されたものは10例10病巣(早期胃癌9例9病巣)を数えたが,うち4例4病巣は撮影したフィルムを見直しても悪性を疑うことが出来ず,1次スクリーニングのPanendoscopyとは生検をも含めた検査として成立していることを改めて感じた.一方,明らかに見逃された早期胃癌が2例2病巣あったが,両者とも撮影されたフィルムの見直しで病変の存在を指摘し得た.即ち,Panendoscopeは胃のみの内視鏡検査機種としても十分満足し得るものであると考えられた.然し,Panendoscopyは,GTFなどと異なり,あくまで観察による病変の発見を旨とするべきで,後に撮影されたフィルムを見直せばよいという安易な姿勢で臨むべきでないことは言を待たないところである.なお,著者らはGTFなどの側視鏡の有効性を全く否定し去るものではないが,絶対的必要性は感ぜず,特にPanendoscopyにて胃癌が発見された場合の第2次検査としては,癌の量的診断目的のため,X線検査がこれにあたるべきと考えている.最後に,当院においては側視鏡を用いての胃内視鏡検査を知らない世代が台頭しつつあることも事実である.
  • 佐藤 寛, 浅木 茂, 西村 敏明, 宍戸 洋, 佐藤 彰, 畑山 洋, 大原 秀一, 渋谷 大助, 荻津 之博, 本島 正, 目黒 真哉, ...
    1986 年 28 巻 3 号 p. 554-561
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は47歳から66歳までの男性3例女性3例の6例で,平均年齢は58歳である.突然の大量吐下血をきたし,緊急内視鏡検査にて微小な胃粘膜欠損部に太い血管の破綻を認め,臨床経過および内視鏡所見にて,いわゆるDieulafoy潰瘍の特徴をそなえた6例を経験し,いずれも内視鏡的純エタノール局注法で止血し保存的に治癒し得た.従来外科的手術が唯一の救命法とされてきた本症も内視鏡的止血が可能となったと考えられる.自験例の臨床経過を中心に報告する.
  • 原 久人, 池 薫, 内海 真, 鳥本 悦宏, 三好 幸宣, 鈴木 安名, 山崎 裕之, 林 英樹, 矢崎 康幸, 岡村 毅與志, 上田 則 ...
    1986 年 28 巻 3 号 p. 562-568
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     過去8年間に当教室において1,200例の患者に対し内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)を施行した.このうち膵管癒合不全(Pancreas Divisum)と診断した症例は13例で,その頻度は1.1%であった.全例に反復する上腹部痛がみられたが,臨床的に膵炎を合併した症例は6例で,いずれもアルコール負荷を認めた.一方,膵炎非合併例は7例で,2例のみにアルコール負荷を認めたにすぎなかった.自験例においては,膵管癒合不全そのものでは膵炎の合併例はなく,Santorini管からのドレナージ不全状態という先天的因子に,アルコール負荷などの後天的因子の加わることが膵炎発生の要因として重要なものと考えられた.
  • 藤井 謙, 楢崎 義一, 畑 英司, 佐藤 裕一, 近藤 吉宏, 寺島 弘史, 横田 勝至, 小林 壮光, 上條 桂一, 矢花 剛, 谷内 ...
    1986 年 28 巻 3 号 p. 569-575
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     何らかの消化器系愁訴を有して来院した65歳以上の高齢者(平均71.0歳)62例および人工透析中の慢性腎不全(CRF)患者17例(平均48.1歳)の計79例を対象とし,胃内視鏡検査時の前処置剤としてのグルカゴン(G)の効果と副作用を臭化ブチルスコポラミン(B)を対照薬とし,それぞれ無作為に2群に分け,対比した.高齢者におけるG群の胃の蠕動運動および胃液量に対する効果はB群とほぼ同程度であり,持続時間はB群に匹敵する効果が得られた.一方CRF患者では両群共に胃の蠕動運動・胃液量に対する効果は高齢者に比較してやや低かった.副作用は,高齢者ではG群で口渇・脈拍数増加がB群に比較して有意に少なく,CRF患者においても一過性の腹痛を認めた1例を除き,副作用は一切みられなかった. 以上より,高齢者およびCRF患者の内視鏡検査時の前処置剤としてのG応用の意義は十分あるものと考えられた.
  • 外山 久太郎, 安達 献, 野登 誠, 三富 弘之, 坂口 哲章, 大高 英雄, 小泉 博義, 関野 晴夫, 赤池 信, 鈴木 紳一郎
    1986 年 28 巻 3 号 p. 576-581_1
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は40歳の男性.胃角の巨大潰瘍に対してcimetidine,maaloxついでpirenzepineを投与し,潰瘍の著明な縮少,改善をみたが,第86病日頃より頑固な下痢が出現するようになった.腹痛,嘔吐,血便などなし.胃潰瘍はその後更に縮少してきたが,第145病日の胃内視鏡検査で瘻孔形成が示唆され,その後に行われた経内視鏡的カテーテル瘻孔造影検査で,胃・結腸瘻が確認された.胃潰瘍による胃・結腸瘻は極めて稀で,本例は筆者らが文献的に調査した限りでは,本邦における最初の報告例である.また本例は,瘻孔形成の過程を内視鏡的に経過観察しえた点でも貴重な症例である.
  • 岡本 勝司, 二村 雄次, 早川 直和, 長谷川 洋, 神谷 順一, 前田 正司, 山瀬 博史, 土江 健嗣, 岸本 秀雄, 塩野 谷恵彦, ...
    1986 年 28 巻 3 号 p. 582-587
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     Gastritis cystica polyposaを母地として発生したと思われる残胃吻合部IIc型早期胃癌の1例を報告する.症例は26年前に胃潰瘍のため胃切除術(ビルロートII法)を受けている49歳男性で,上腹部痛を主訴として来院し,胃内視鏡検査により胃空腸吻合部に白苔を伴った浅い潰瘍性病変を発見され生検により腺癌と診断された.残胃癌の診断にて残胃全摘,膵尾,脾合併切除術を施行した.切除標本にて病変は吻合口に沿って拡がったIIc(15×79mm)であり,吻合口近傍のfoldは腫大しIIc面で途絶していた.組織学的には吻合部胃粘膜には上皮の過形成と嚢胞状に拡張した腺管の粘膜下層への浸入が認められ,Gastritis cystica polyposaの像を呈していた.中分化型腺癌がGCPの表層粘膜と一部粘膜下層に認められ,GCPから発生したIIcが表層拡大したと考えられた.リンパ節転移は認められず,患者は術後14カ月を経た現在,再発の徴候無く健在である.
  • 中澤 慶彦, 岩村 伸一, 田村 智, 坂本 芳也, 松本 京子, 森田 雅範, 宮尾 昌宏, 岡崎 和一, 山本 泰朗, 山本 泰猛
    1986 年 28 巻 3 号 p. 589-594_1
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡的マイクロ波治療は,現在高周波,レーザー等と共に,Endoscopic Surgeryの分野でその地位を確立しつつある.われわれは,今回,総胆管結石症患者の治療にマイクロ波を使った内視鏡的十二指腸総胆管内瘻化(EDCF)を施行した.症例は75歳女性で,総胆管内に2個の結石(20×16mm,19×6mm)を認める.内視鏡はOlympus JF-1Tを使用し,凝固部位は十二指腸乳頭部の口側隆起部とし,発振条件は20ワット×20秒で計44回凝固した.凝固時,出血等の合併症なく血液生化学検査も著変を認めなかった.2回目のEDCF1週後のERCPにて,結石の自然排出を確認した.本症例の如く,EDCFは総胆管末端の拡張があれば,出血もほとんどなく急性膵炎の合併も少ない.従って,胆汁排泄に十分な大きさの人工的内瘻造設は,安全であり,しかも確実な減黄効果および症例によっては排石が期待できるものと考えられた.
  • 斉藤 治, 正木 啓子, 辰巳 昭央, 高田 興, 松本 恒司, 岩越 一彦, 大柴 三郎, 藤田 圭吾, 正宗 研
    1986 年 28 巻 3 号 p. 595-605
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     Cronkhite-Canada症候群は比較的稀な疾患であり治療法も確立していない.今回,われわれの経験した2症例につき報告する. 症例1:48歳男性.症例2:53歳女性.いずれも消化管ポリポージス,脱毛,爪甲異常,皮膚色素沈着,低蛋白血症の5主徴の他に食欲不振,味覚異常を認めた.ポリープは胃と大腸に著明であり,組織的には腺管の嚢胞状拡張と間質の浮腫を認めた.症例1は半消化態栄養剤の投与により症状の改善およびポリープの減少を認めた.症例2にも半消化態栄養剤,ED-ACを投与したが低蛋白血症は進行し,完全静脈栄養とステロイド剤投与により症状は改善し,ポリープも著明に減少した.両症例について血清腫瘍マーカーを検索したところ,症例1ではCA19-9,tissue polypeptide antigen(TPA),immunosuppressive acidic protein(IAP)が入院時上昇しており経過とともに減少した.症例2では経過中にCEA,CA19-9,TPA,elastase1が上昇し,症状の改善とともに正常化した.
  • 平井 信行, 加登 康洋, 松下 栄紀, 米島 学, 田中 延善, 小林 健一, 服部 信, 中沼 安二, 油野 民雄
    1986 年 28 巻 3 号 p. 606-613
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     原発性胆管炎(PSC)の長期観察症例を報告する.症例は30歳男性で,全身倦怠・掻痒感を認め来院した.検査所見は著明な胆汁うっ帯型を呈したが,黄疸はなくHBsAg., HBsAb., AMAは陰性であった.ERCPでは広汎な肝内・肝外胆管のconstricturing and beaded appearance, diverticular outpouchingを認めたが,胆石は認めず,膵管像は正常であった.肝組織像では,グ鞘の腺維化,細胆管増生,隔壁胆管周囲のconcentric fibrosisが認められた.以上よりPSCと診断し経過を追跡した.約6年の間,自他覚症状に著変はみられなかったが,GOT,ALPは徐々に上昇し,時に黄疸が出没する様になった.6年後のERCPでは,胆管像での狭窄性変化が進行し,肝組織像でも,グ鞘の線維性拡大,胆汁うっ帯像の進行が認められた.大腸内視鏡検査では,非連続性の非特異的大腸炎の合併が認められた.以上,本例では,約6年間の経過で,徐々に病変の進行を認めたが,その進行は比較的緩徐であった.
  • 武田 泰隆, 柳衛 宏宣, 高橋 司, 宮本 洋寿, 藤井 源七郎
    1986 年 28 巻 3 号 p. 614-618_1
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は52歳男性で,右季肋部から背部の痛みを主訴として入院した.約2年前に右季肋部痛が出現し,1年前には黄疸のため近医でERCPを施行し,総胆管の拡張を指摘されたが,黄疸も軽快し,その他の異常所見がないため放置していた.今回入院時のERCPでは総胆管は径約20mmと拡張を示したが,結石像や腫瘍像などはみられなかった.乳頭部の生検の目的で内視鏡的乳頭括約筋切開術を施行すると,乳頭の切開部に小腫瘤がみられた.生検の病理診断はwell differentiated adenocarcinomaであった.切除後の病理診断から,乳頭部胆管(Ab)原発の比較的早期の乳頭部癌と診断された.確定診断の上で,内視鏡的乳頭括約筋切開術が非常に有効であった.
  • 嶋倉 勝秀, 野沢 敬一, 山口 孝太郎, 和田 秀一, 松田 至晃, 中村 喜行, 滋野 俊, 坂戸 政彦, 古田 精市, 伊藤 和也, ...
    1986 年 28 巻 3 号 p. 621-627_1
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     Billroth II 法胃切除術後症例におけるERCPの成功率が低い最も大きな要因として,乳頭部までスコープを挿入できないことが上げられるが,一旦スコープを乳頭部まで挿入できれば造影自体はさほど困難ではない.しかし,胆管へのdeeper cannulationは必ずしも容易ではない.そこで,今回われわれは上咽頭癌の転移による中部胆管狭窄症例に,直視型,側視型ファイバースコープを併用し,ENBDの手技を応用してERBDに成功した症例を経験したので報告する.Billroth II 法胃切除術後症例のEPTは非常に難しいとされているので,われわれは無処置乳頭を介して留置チューブを挿入した後に,ポリペクトミー用スネアーをニードルナイフとして用いEPTを施行したところ,安全かつ容易に施行することができた.Billroth II法胃切除術後症例においても,スコープが乳頭部まで挿入できる場合には,このような方法を応用すれぼ,EPTやERBDが安全に施行できるのではないかと考えられる.
  • 大下 芳人, 岡崎 幸紀, 竹本 忠良, 中村 克衛
    1986 年 28 巻 3 号 p. 628-631_1
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     腎透析中に,3年という長期にわたって観察された,めずらしい経過をたどった胃のvanishing tumorの1例を経験したので報告した.患者は50歳の男性で,慢性腎不全のため腎透析を受けていた昭和54年から昭和57年にかけて,胃前庭部に胡桃大で嚢腫様の粘膜下腫瘤を,X線および内視鏡検査で観察されていた.昭和58年1月に腎移植手術に成功し,以来透析を受けていない.移植手術後の昭和58年12月の内視鏡検査ではこの腫瘤はまったく消失しており,その経過とともに,原因についても,非常に興味のある症例と考えた.
  • 五十嵐 潔, 島 仁, 千葉 満郎, 大高 道郎, 太田 弘昌, 吉田 司, 長崎 明男, 荒川 弘道, 正宗 研, 成沢 富雄, 丹羽 誠 ...
    1986 年 28 巻 3 号 p. 632-641
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     一家系に6名の大腸癌,1名の子宮内膜癌がみられたcancer family syndromeを報告した. 発端者は44歳女性,上行結腸癌および多発性大腸ポリープのため右半結腸切除術および内視鏡的ポリープ摘除術を受け,5個の同時性多発大腸癌が見出された.術後,比較的短期間に残存する大腸に腺腫が多発した. 発端者の祖父に大腸癌,発端者の父に異時性多発大腸癌と尿管癌との重複癌がみられた.また,叔母2人に大腸癌,別の叔母1人に子宮内膜癌,弟に大腸癌がみられた. これらの大腸癌11病変中6病変は右側結腸,5病変は左側結腸にあった.また,大腸癌は通常みられる大腸癌より明らかに低年齢で発症し,世代を経る毎に若年化した.従って,このcancer family syndromeの子孫にとって,綿密に計画されたスクリーニングが肝要である.
  • 星加 和徳, 萱嶋 英三, 小塚 一史, 長崎 貞臣, 藤村 宜憲, 宮島 宣夫, 島居 忠良, 加納 俊彦, 内田 純一, 木原 彊
    1986 年 28 巻 3 号 p. 642-647_1
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     術前に小腸内視鏡検査および生検にて確診しえた空腸癌の2例を経験した.症例1は,50歳男性で主訴は上腹部膨満感であった.小腸造影にて,Treiz靱帯より25cm肛側の空腸に約4cmにわたる全周性の不整な狭窄を認め,内視鏡検査にても,同部に不整な粘膜よりなる全周性の狭窄を認め空腸癌と診断,生検にて腺癌を確診した.切除標本では,腫瘍は4.5cmにわたり全周を占め不整な潰瘍を形成しており,漿膜浸潤,癌性腹膜炎を伴っていた.症例2は,72歳男性で主訴は腹部膨満感であった.小腸造影にては,Treiz靱帯より25cm肛側の空腸に全周性の不整な狭窄を認め,内視鏡検査にても不整な粘膜よりなる全周性の狭窄を認め空腸癌と診断し,生検にて腺癌を確診した.切除標本では,腫瘍は6.2×4.1cm大でほぼ全周性で不整な潰瘍を形成し,周辺の脂肪織まで浸潤していたが,リンパ節転移は認めなかった.
  • 真口 宏介, 林 憲雄, 林 英樹, 粂井 康孝, 原田 一道, 水島 和雄, 岡村 毅与志, 並木 正義
    1986 年 28 巻 3 号 p. 648-656_1
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     直腸平滑筋肉腫は,近年報告例が増加しているとはいえ,比較的稀な疾患である.今回われわれは,直腸平滑筋腫の診断のもとに,経肛門的腫瘤摘出術を施行したが,術後摘出標本の病理組織学的検索の結果,悪性像を認め,平滑筋肉腫として,根治的再手術を行った症例を経験したので報告する.症例は65歳の女性.1年前からの排便困難を主訴として昭和59年3月精査目的のため当科に入院した.直腸指診で肛門輪より4cm口側に腫瘤を触知.大腸のX線および内視鏡検査,CT,超音波検査(以下,US),血管造影などの所見から,筋原性腫瘍が疑われた.術前の質的診断のために,経肛門的に針生検を行い,組織学的に平滑筋腫と診断し,経肛門的腫瘤滴出術を施行した.術後摘出標本の病理組織学的検索の結果,悪性像を認めたため,根治的再手術を行った.直腸平滑筋肉腫は,本邦では,われわれが調べ得た限りでは80例の報告がある.今回の自験例を含め,本邦報告81例につき,統計的および文献的考察を加え報告する.
  • 清水 誠治, 岡田 博子, 岩破 淳郎, 吉中 正人, 稲富 五十雄, 多田 正大, 赤坂 裕三, 川井 啓市
    1986 年 28 巻 3 号 p. 659-663_1
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
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     プッシュ式小腸ファイバースコープ,SIF-Bが開発・市販され既に10年が経過し,その臨床的有用性は十分に確立されてきているが,器械的特性の面では旧式となってしまったのも事実である.今回開発されたプッシュ式小腸ファイバースコープ,SIF-10はSIF-Bに比べ強力なアングル機構と広角の視野,高い解像力を有している.われわれの施設でもSIF-10を実際に臨床に用いる機会を得て20例に小腸内視鏡検査を施行した.その成績はSIF-Bによる成績と比較して,挿入性・所要時間の両方で若干の向上を示しており,SIF-10はSIF-Bに取ってかわる器種であると考えられた.しかし,諸性能の顕著な改良にもかかわらず,挿入性において飛躍的な伸びが見られなかったことは,プッシュ式の方法論自体の限界を示唆するものであり,現時点ではなお,十分な小腸内視鏡検査を行うには多方式の使い分けが必要であると考えられた.
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 3 号 p. 664-667
    発行日: 1986/03/20
    公開日: 2011/05/09
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