日本薬理学雑誌
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100 巻, 4 号
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  • 高柳 一成, 小池 勝夫, 佐藤 光利
    1992 年 100 巻 4 号 p. 279-292
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    It is generally accepted that full and partial agonists interact with the same receptors according to the classical receptor mechanisms. We have modified the drug receptor mechanisms of M3-, α1- and β-receptors. Among the muscarinic receptors, there are two subtypes of M3-cholinoceptors, propylbenzilylcholine mustard (PrBCM)-sensitive receptors and (PrBCM)-resistant ones. Full agonists contract the guinea pig ileum through both types of cholinoceptors, while the partial agonists produce contractions through only the PrBCM-sensitive receptors. Two subtypes of α1-adrenoceptors, α1A and α1B, were demonstrated in some arteries. Full agonists contracted the rabbit aorta through both the α1A- and α1B-adrenoceptors, while the partial agonists mediated contraction through only the α1A-adrenoceptors. β-Chloroethylamines (PrBCM and chloroethylclonidine) can discriminate the subtype of M3 or α1-receptors in the presence of GTP. β-Adrenoceptors have two different types of binding sites, high and low affinity sites. The competitive antagonistic effect of the partial agonist is due to their ability to compete with the full agonists for the high affinity site, while the partial agonists interact with the low affinity site to induce the β-adrenergic effect. A regional difference in α1-adrenoceptor mechanisms was discussed. The potency of norepinephrine in veins is related to α1-adrenoceptor densities. In contrast, the potency of norepinephrine is linearly related to the agonist dissociation constant. This discrepancy suggests a qualitative difference between α1-adrenoceptor mechanisms in the veins and arteries.
  • 内田 勝幸, 野口 裕司, 荒川 礼二郎, 橋本 佳子, 五十嵐 康子, 本多 秀雄
    1992 年 100 巻 4 号 p. 293-300
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    塩酸アンブロキソール(アンブロキソール)の気道粘液分泌および肺表面活性リン脂質分泌に対する効果をそれぞれラットおよびモルモットを用いて検討した.気道粘液分泌に対しては組織学的および生化学的に検討した.アンブロキソールは用量依存的に気道のムコ多糖を増加させ,肥厚した杯細胞数も用量依存的に増加した.また,中性ムコ多糖も有意に増加し,組織学的には気管腺の肥厚およびPAS陽性物質の増加が認められた.このことは,アンブロキソールが気管腺においては漿液性の粘液分泌を亢進させることを示唆する成績と考えられた.一方,肺洗浄液中のホスファチジルコリンはアンブロキソール投与により有意な増加を示さなかったが,飽和のホスファチジルコリンが占める割合は有意に増加し,アンブロキソールの肺表面活性リン脂質の分泌亢進作用を示唆する成績であった.以上の結果からアンブロキソールの去痰作用の機序として気道粘液分泌および肺表面活性リン脂質分泌の亢進作用が考えられた.
  • 原 幸男, Ahmmed ALLY, 鈴木 俊雄, 村山 智
    1992 年 100 巻 4 号 p. 301-305
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    ニューキノロン抗菌薬エノキサシンと非ステロイド系抗炎症薬フェンブフェンを併用した際に起こる痙攣に対する薬物の効果をマウスで検討した.フェンブフェン100mg/kgの経口投与5分後にニューキノロン抗菌薬エノキサシン30または100mg/kgを経口投与すると,痙攣が発現し,死亡した.この痙攣はフェノバルビタール,フェニトイン,バルプロ酸,モルヒネの前処置では抑制されなかった,大量のジアゼパム,クロナゼパムの前処置では生存時間が著明に延長したが,結局は全例死亡した.フェンブフェンとエノキサシンの併用で痙攣の発現を確認した後,興奮性アミノ酸受容体拮抗薬MK-8011mg/kgを静脈内処置すると生存時間が著明に延長したが,やはり全例死亡した.MK-801と少量のジアゼパムを組み合わせて投与すると,生存時間は各々単独より延長したが,結局は全例死亡した.以上の結果より,フェンブフェンとエノキサシンの併用で起こる痙攣に対するGABA作動系と興奮性アミノ酸系の関与を考察した.
  • 滝沢 幸穂, 磯野 智子, 鈴木 康之, 早川 由紀, 尾山 力
    1992 年 100 巻 4 号 p. 307-316
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    ツムラ修治附子末は,附子を一定条件で減毒加工した医療用医薬品であり,各種疾患による痛みに対して用いられている.著者らは,ツムラ修治附子末の鎮痛作用およびアコニチンアルカロイドであるメサコニチンの鎮痛作用について,ラットおよびマウスを用いたいくつかの鎮痛試験によって各種鎮痛薬との比較を行い検討した.鎮痛試験法として,正常な動物を用いた化学的刺激,機械的刺激および熱刺激による疼痛への鎮痛試験に加え,慢性多発性関節炎モデルであるアジュバント関節炎ラットを用いた試験,および反復低温ストレス(repeated cold stress: RCS)を用いた試験を行い鎮痛作用に関して結果を得たので報告する.各種鎮痛試験においてツムラ修治附子末(以下,TJ-3021)は,有意な鎮痛作用を示したが,その作用はツムラ生附子末(以下,TNB)よりも低い傾向であった.また,メサコニチン(以下,MA)は強力な鎮痛作用を示した.すなわち,酢酸ライシング法では,TJ-3021は300mg/kgで有意な鎮痛作用を示した.また,MAは0.5mg/kgで有意な鎮痛作用を示した.Randal1-Selitto法では,TJ-3021 1000mg/kg投与で炎症足で有意な鎮痛作用が認められたが,正常足では有意な鎮痛作用は認められなかった.アジュバント関節炎疼痛法では,TJ-3021 1000mg/kgで有意な鎮痛効果が認められた.TJ-3021 1000mg/kgの鎮痛作用はそれぞれ,TNB100mg/kg,ジクロフェナック(以下,DF)3mg/kg,ノイロトロピン(以下,NT)4mg/kgよりも弱い傾向を示した.MA0.5mg/kgには有意な鎮痛作用が認められ,投与後4時間まで,経時的な増加傾向を示した.ホットプレート法では,TJ-3021 1000mg/kgの鎮痛作用は弱い傾向を示した.RCS法ではTJ-3021 300mg/kgで有意な鎮痛作用を示し,その活性はTNB300mg/kgと同程度であった.MA0.5mg/kgはRCS法においても非常に強力な鎮痛作用を示し,モルヒネ(以下,MPH) 1mg/kgよりも強力な作用が認められた.
  • 上條 猛, 東丸 貴信, 三輪 篤子, 中村 文隆, 木戸 秀明, 杉本 恒明, 内田 康美
    1992 年 100 巻 4 号 p. 317-327
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    nicorandilの冠攣縮抑制作用を3,4-diaminopyridine(3,4-DAP)により惹起される冠攣縮モデルを用いて検討しcromakalimおよびpinacidilと比較した.nicorandil(10-4M),cromakalim(10-6M)およびpinacidil(10-5M)はいずれも3,4-DAPによる冠動脈の周期性収縮を消失させた.周期性収縮消失後にグリベンクラミド(10-6M)を投与したところいずれの薬物においても周期性収縮の回復が認められた.また同濃度のグリベンクラミドを前処置することによりnicorandil,cromakalim,pinacidilによる周期性収縮の消失反応は抑制された.しかしグリベンクラミド投与による各薬物投与後の収縮期張力の回復率はcromakalimで104.7%だったのに対してnicorandilで56.8%,pinacidilで76.1%とグリベンクラミドの拮抗作用はcromakalimに比べnicorandil,pinacidilでは部分的であった.グリベンクラミド(10-6M)存在下でのnicorandil(10-5~10-4M)の各濃度における収縮期張力の回復率はnicorandilの濃度が高いほど低い値を示した.メチレンブルー(10-7~10-5M)は単独ではnicorandilによる周期性収縮の消失反応に拮抗しなかった.しかしながらグリベンクラミド(10-6M)存在下でのnicorandil(10-5~10-4M)の各濃度における収縮期張力の回復率はメチレンブルー(10-7,10-6M)前処置により増大し,濃度―回復曲線は上方ヘシフトした.以上の成績から3,4-DAPにより惹起される周期性収縮に対してK+チャネルオープナーは抑制的に働き,その作用機序にはATP感受性K+チャネルの関与していることが示唆された.またnicorandilによる周期性収縮の消失反応にはニトロ化合物としての作用も重要であり,冠攣縮抑制作用にこれら2つの機序の関与していることが示唆された.
  • 宇留野 強, 村上 文恵, 和田 浩一, 檜作 正道, 五十嵐 雅夫, 吉田 欣也, 松岡 隆, 砂金 信義, 久保田 和彦
    1992 年 100 巻 4 号 p. 329-338
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    ラットの摘出膀胱筋および生体位膀胱内圧に及ぼすtiropramideの効果をフラボキサート,オキシブチニンおよびテロジリンのそれと比較検討した.摘出膀胱平滑筋において,tiropramide(10-5M,5×10-5M,10-4M)およびフラボキサート(2×10-5M,3×10-5M,5×10-5M)は,用量依存的にカルバコールの用量反応曲線を下方に,テロジリン(6×10-6M,2×10-5M)は右方および下方に移動させたが,オキシブチニンは10-7Mの濃度では平行移動的に右方へ移動させた.tiropramide,フラボキサート,テロジリンのカルバコール収縮に対するそれぞれの平滑筋弛緩薬のIC50値(×10-5M)は3.6,4.4,2.2,K+(60mM)収縮の初期収縮相に対しては4.2,6.4,2.2,Ba2+(10mM)収縮に対しては5.8,4.1,2.0であった.オキシブチニンのK+収縮初期相およびBa2+収縮に対するIC50値(×10-5M)はそれぞれ2.3,3.0であった.摘出膀胱平滑筋の電気刺激誘発収縮に対するtiropramide,フラボキサートおよびテロジリンのIC50値(×10-5M)は,それぞれ2.9,5.7,1.5であった.また,オキシブチニンは10-7Mの濃度で約16%抑制したに過ぎなかった.律動的膀胱収縮は,4種の平滑筋弛緩薬の静脈内投与(2mg/kg,4mg/kg)により抑制され,その効力はオキシブチニンが最も強く,tiropramide,フラボキサート,テロジリンの間に統計的に優位な差は認められなかった.十二指腸内投与(30mg/kg,60mg/kg)ではフラボキサートはほとんど効果を示さなかった.4種の平滑筋弛緩薬(8mg/kg,12mg/kg,i.v.)は排尿反射の発現時間を用量依存的に抑制したが,tiropramideの効力と他の3種の薬物の効力の間に統計的に有意な差は認められなかった.切断した一側の骨盤神経の中枢または末梢断端の電気刺激による膀胱収縮をtiropramide(8mg/kg,16mg/kg,i.v.)は同程度に抑制した.上記の結果はラット膀胱機能に対するtiropramideの作用は主として膀胱平滑筋に対する直接作用に起因し,その効力はフラボキサートより強く,オキシブチニン,テロジリンよりやや弱いことを示唆している.
  • 東野 英明, 鈴木 有朋, 田中 康雄, Krisana POOTAKHAM
    1992 年 100 巻 4 号 p. 339-344
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    ツヅラフジ科のタイ産植物Tinospora crispa(T.c.)に強い抗炎症作用を見い出した.タイ国チェンマイ大学で栽培して収穫したT.c. の幹部分の50%メタノール抽出物(10mg/kg,p.o.)は,1%カラゲニン0.1mlのラット足蹠への皮下注射によって生ずる4時間後の浮腫を38%抑制した.50%メタノール抽出物より再分画したn-ブタノール易溶性画分は,他の分画の水易溶性画分やエチルエーテル易溶性画分より抗浮腫作用は強く,経口投与で用量依存性の浮腫形成抑制作用を示した(1mg/kg:21%,3mg/kg:36%,10mg/kg:51%,30mg/kg:62%).n-ブタノール易溶性画分(10mg/kg)について,経口投与以外に皮下投与と腹腔内投与を実施したが,それぞれ47%,43%,54%の抑制度を示し,投与経路間に大きな差異が認められなかった.また,同画分の3mg/kgの皮下投与(抑制度59%)は,50mg/kg(s.c.)のヒドロコーチゾン(抑制度85%)や10mg/kg(s.c.)のインドメサシン(抑制度72%)に及ばなかったものの,250mg/kg(s.c.)のスルピリン(抑制度61%)や10mg/kg(s.c.)のジフェンヒドラミン(抑制度65%)と比肩できるほどの抗浮腫作用を示した.さらに,同画分はウサギのLPS誘発発熱を解熱させ,マウスの酢酸腹腔内投与法による鎮痛試験において10mg/kgの皮下投与は,100mg/kg(s.c.)のスルピリンや1mg/kg(s.c.)の塩酸モルヒネに匹敵する作用をも示した.したがって,T.c.に含まれるn-ブタノールに易溶な物質は,強い抗浮腫作用以外に,鎮痛,解熱作用をも合わせ持つ消化管からも吸収され易い中等度の非極性物質で,抗炎症薬として臨床応用も可能な化合物であろうと推定した.
  • 江頭 亨, 和田 勇治, 高山 房子, 工藤 欣邦, 河野 俊郎, 後藤 信一郎, 山中 康光
    1992 年 100 巻 4 号 p. 345-351
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    小柴胡湯および五味子をラットに経口投与し,脳組織中の脂質過酸化物に対する影響を検討した.小柴胡湯100mg/kgおよび五味子100mg/kgの2週間経口投与でいずれも脳組織中の脂質過酸化物を有意に減少させた.脂質過酸化に対する小柴胡湯および五味子の影響をin vitroで検討したところ,小柴胡湯の場合,10-4g/mlで完全に,五味子では約20%の阻害を示した.小柴胡湯が五味子に比較して脂質過酸化抑制はより強力であった.また,安定ラジカルであるDPPH(1,1-diphenyl-2-picryl-hydrazyl)に対するラジカル消去作用を検討したところ,小柴胡湯では3×10-5~10-3g/mlで,五味子では10-4~10-3g/mlの範囲でDPPHラジカル消去作用が見られた.これらの結果より小柴胡湯および五味子は脂質過酸化反応のいずれかの過程を抑制しているものと思われるが,特に小柴胡湯はフリーラジカルの消去作用および産生抑制作用により脂質過酸化物の減少をもたらしているものと思われる.
  • 後藤 正子, 林 幹男, 等々力 徹, 瀬山 義幸, 山下 三郎
    1992 年 100 巻 4 号 p. 353-358
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    自然発症糖尿病モデルWBN/KobラットにVitamin D2(1×105単位/kg体重/day)を4日間経口投与すると共に高脂肪飼料で6週間飼育することにより,ミネラルおよび脂質代謝異常を起こさせた.これに対して漢方方剤(大柴胡湯,小柴胡湯,八味地黄丸)のエキスをヒトの常用量の10倍量を高脂肪飼料に添加して投与し,これら各方剤の影響を調べた.その結果各方剤には以下の効果が認められた.1)各方剤は耐糖能を改善した.2)各方剤は肝臓の無機リン酸値の増加を抑制し,ミネラル代謝を改善させた.3)八味地黄丸は腎臓のコレステロールを低下させ,小柴胡湯は腎臓のエラスチン画分のコレステロールを低下させた.以上,本実験に用いた漢方方剤はミネラルおよび脂質代謝異常を伴った糖尿病に対して治療効果を有すると推測される.
  • 相原 静彦, 村上 尚史, 石井 律子, 仮家 公夫, 東 陽子, 濱田 くみ子, 梅本 準治, 前田 誠二
    1992 年 100 巻 4 号 p. 359-365
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    ラットの膝関節内に尿酸ナトリウムの針状結晶(MSU)を注入すると関節炎に伴う疼痛のため歩行異常がみられ,同時に関節液中のブラジキニン(BK)およびプロスタグランジンE2(PGE2)濃度の上昇がみられた.そこで,ヒアルロン酸ナトリウム(Na-HA)溶液をMSU注入の1時間前に膝関節内投与し,この歩行状態改善を指標にNa-HAの鎮痛効果を調べるとともに関節液中のBKおよびPGE2濃度の上昇に対するNa-HAの影響を検討した.MSUを注入すると歩行異常スコアは上昇するが,分子量4.7×105(HA-47),9.5×105(HA-95)および2.02×106(HA-200)の1.0%Na-HA溶液を膝関節内に前投与すると分子量の大きさに従って歩行異常の改善が認められ,特に,HA-200投与群のみがMSU注入4および6時間後において有意な作用が認められた.また,0.1,0.3および1.0%のHA-200溶液を前投与すると,濃度依存的な歩行異常改善作用が認められ,1.0% HA-200溶液投与群では有意な鎮痛効果が認められた.MSUを関節内に注入すると関節液中のBKおよびPGE2濃度は上昇し,注入4時間後に最大値を示した.分子量の異なる1.0% Na-HA溶液を前投与するとBK濃度の上昇はHA-95およびHA-200において分子量の大きさに従って抑制され,特に,HA-200投与群では対照群に比べ有意に抑制された.また,PGE2濃度の上昇はHA-47,HA-95およびHA-200のいずれの投与群においても対照群に比べ有意に抑制された.以上の結果から,Na-HA前投与はMSUの関節内注入による関節炎疼痛に対して鎮痛効果を示し,特に,HA-200は有意で最も強い効果を示すことが明らかとなった.また,この鎮痛効果には関節内におけるBKおよびPGE2の産生に対するNa-HAの抑制作用が関与していると推察される.
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