日本薬理学雑誌
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76 巻, 4 号
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  • 宮本 政臣, 佐治 美昭, 名川 雄児
    1980 年 76 巻 4 号 p. 227-238
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラットの両側側坐核を電気的に破壊すると,著明な自発運動亢進およびdefensive aggressionを主徴とする情動過多が惹起された.また,側坐核破壊ラットのうち約40%がmouse-killlng behavior (muricide)を示した.側坐核破壊ラットの情動過多およびmuricide発現率は破壊手術2~3日後に最高に達し,その後徐々に減弱した.一方,自発運動亢進は情動過多およびmuricideの経日変化とは異なり,30日以上持続した.chlorpromazine,haloperidol,diazepam,estazolam,aminooxyacetic acidおよびphenoxybenzamineは側坐核破壊ラットにおける情動過多およびmuricideをともに抑制した.しかしながら,imipramine,atropineおよびL-5-hydroxytryptophanはmuricideを選択的に抑制した.両側側坐核内6-hydroxy-dopamine注入によるcatecholamine systemの破壊は中等度の情動過多を惹起したが,自発運動亢進およびmuricideは認められなかった.これらの成績は側坐核破壊ラットの情動過多には側坐核におけるcatecholamine系のみならずその他の未知の神経系が関与していること,側坐核は動物の情動性に対して抑制的に働くことを示唆する.また,側坐核破壊ラットにおける情動過多およびmuricide発現にはcholinergic,serotonergic,GABAergicおよびcatecholaminergic systemが関与することも示唆された.また,破壊後の持続的な自発運動亢進の機序についても考察を加えた.
  • 門間 芳夫, 奥岡 ゆか子, 亀田 治子, 田辺 恒義, 安孫子 保, 市原 和夫
    1980 年 76 巻 4 号 p. 239-254
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    αおよびβの両受容体を遮断する作用を持つlabetalolの循環器系に及ぼす作用を検討した.labetalolは麻酔イヌの心拍数,動脈血圧および心収縮力を減少させ,頸動脈洞反射を抑制した.labetalolのこれらの作用は用量依存性であった.またこの薬物は動脈血のpO2,pHおよび腎機能に対し何等の影響も及ぼさなかった.モルモットおよびラットの摘出心房標本,ウサギ摘出心臓灌流標本および食用ガエルの摘出心臓灌流標本を用い,labctalolの単独作用ならびにisoproterenol,epinephrine,norepinephrine,phenylephrine,propranololおよびphentolamineの作用に対するlabetalolの拮抗作用を検討した.さらに,食用ガエル後肢血管とウサギ耳介血管の灌流実験を行ない,末梢血管作用を検討した.これらの実験結果から,labetalolのαおよびβ受容体遮断作用は,灌流液を正常の液にもどした後も暫時持続することが証明された.labetalolの高濃度投与によって血管平滑筋は強い弛緩(または拡張)を起したが,薬物の除去によってこの弛緩作用は直ちに消失した.しかし,アドレナリン受容体遮断作用は洗浄後も持続した。従って,labetalolによる末梢血管の拡張にはα-受容体遮断のみならず,他の機序も加わっている可能性が考えられ,血管平滑筋に対する直接作用の存在が推察される.
  • 南 勝, 山崎 則子, 児島 俊一, 安田 寿一, 富樫 広子, 小池 勇一, 島村 佳一, 四枚田 至, 斉藤 秀哉
    1980 年 76 巻 4 号 p. 255-264
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたcatecholamine(CA)定量法である酵素アイソトープ法(REA)を用いて,ヒトおよび高血圧自然発症ラット(SHR)の血漿CAの測定を行い,この測定法の薬理学的および臨床的研究の応用について検討した.また,高速液体クロマトグラフィーを用いたTHI反応による螢光法(HPLC)とも比較した.ただし,本実験においてはCA assay kit(CAT-A-KIT)を用いた.(1)REAの標準曲線は,総CA定量においても,分離CA定量においても,ともに良い直線性を示し,ヒトおよびSHRにおいて,血漿50μlでCAが測定できた.REAでは,小量のサンプルサイズでCA定量が可能であるので,小動物や小量の採血しかできない実験条件下での血漿CA測定に適する方法と思われた.(2)HPLC法では,測定可能なサンプルサイズが,血漿1mlであるが,感度と回収率については,REAよりむしろすぐれているので,ヒトでの血漿CA測定に適するといえよう.(3)REAによると,正常血圧健常者のnorepinephrine(NE)は250±61pg/ml(mean±SEM),epinephrine(E)は37±22pg/mlであった.軽症本態性高血圧症患者のNEは460±128pg/mlと高値を示したが,健常者との間には有意差はなかった.トレッドミルを用いた亜最大までの運動負荷試験によって,健常者は,417±67pg/mlへ,高血圧症患者は,1030±151pg/mlへと血漿NEがそれぞれ安静時より有意に(p<0.05)増加した.しかし,Eは運動の前後で有意な変動を示さなかった.(4)断頭放血によって採取したSHRの血漿総CAはREAによると,5004pg/mlであった.α-chloraloseとurethaneであらかじめ麻酔し,大腿静脈より採取した血漿総CA,1024pg/mlに比べて約5倍の高値であった.分離定量では,NEは,816pg/ml,Eは209pg/ml,dopamineは550pg/mlであった.したがって,小動物での血漿CA定量については,採血方法ならびに測定方法に関して,充分なる吟味が必要である・
  • 門間 芳夫, 奥岡 ゆか子, 田辺 恒義
    1980 年 76 巻 4 号 p. 265-270
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ouabainを投与されたラットがカリウム尿を排泄する機序に関して研究を行った.尿中カリウム(K)排泄の増加は1.0mg/kg以上のouabainを腹腔内に注射した際に見られ,Na排泄は逆に減少した.10.0mg/kgのouabainによっては,ラット尿中のK増加とNa減少は食塩負荷(1%NaCl,3ml/100g体重,経口投与)ラットに特に著しく,H+の排泄は著明に減少した.その結果,食塩負荷ラットでは尿中のNaとKとは殆んど等しい濃度となり,水負荷ラットではKがむしろ高い濃度を示す傾向すら示すに至った。これらの所見は,ouabainがラットの遠位尿細管におけるイオン交換を増すというRamsayらの考え方とは一致せず,他のなんらかの機序によりK排泄が促進されたものと考えぎるを得ない.
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