日本薬理学雑誌
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152 巻 , 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
特集:消化器疾患のUp-to-date:発症メカニズムから最新の治療戦略まで
  • 松本 健次郎, 加藤 伸一
    2018 年 152 巻 4 号 p. 170-174
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー

    温度感受性受容体TRPV4は27~35°Cの温度だけでなく,多くの物理的刺激や内因性カンナビノイドやアラキドン酸などにより活性化する非選択性陽イオンチャネルである.本研究ではDSS誘起炎症性腸疾患モデルにおけるTRPV4の局在変化と病態への関与について検討を行った.DSS処置は,WTマウスでは,顕著な体重減少,下痢・下血を誘起し,7日目には大腸の短縮,ミエロペルオキシゲナーゼ活性の増大および組織学的傷害を惹起した.これらの変化は,TRPV4KOマウスではいずれも有意に抑制された.TRPV4作動薬であるGSK1016790Aの結腸内投与は,DSS誘起大腸炎を有意に悪化させた.骨髄キメラマウスを用いた検討において,DSS誘起大腸炎は,ドナーがWTおよびTRPV4KOにかかわらず,レシピエントがTRPV4KOの場合に有意に抑制された.正常時では,TRPV4は上皮細胞に局在が確認されたが,DSS処置により,粘膜および粘膜下の血管にTRPV4発現が顕著に増加した.TRPV4の免疫活性は,内皮細胞マーカーCD31や血管内皮細胞間接着因子であるVE-cadherinと共局在が観察された.DSS処置は血管透過性を亢進させたが,この増大はWTと比較してTRPV4KOでは有意に抑制された.GSK1016790Aの静脈内投与は,DSS処置による血管透過性の亢進をさらに増大させたが,この作用はTRPV4拮抗薬RN1734の静脈内投与により抑制された.マウス大動脈由来内皮細胞株において,TNF-αおよびGSK1016790Aの併用処置は,JNKシグナルの活性化を介してVE-cadherin発現を有意に低下させた.本研究の結果から,DSS誘起大腸炎の病態にTRPV4が関与することが判明した.TRPV4は大腸炎発症時には病変部の血管内皮に顕著に発現増大し,血管透過性の亢進に関与しているものと推察された.

  • 三代 剛, 石村 典久, 石原 俊治, 木下 芳一
    2018 年 152 巻 4 号 p. 175-180
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー

    好酸球性消化管疾患は,食物などに対するアレルギー反応が主因となって,好酸球が消化管壁局所へ異常に集積することで組織が傷害され,機能不全を起こす疾患の総称であり,好酸球性食道炎と好酸球性胃腸炎に分類される.その発症のメカニズムとしては,TSLP(thymic stromal lymphopoietin),IL-5やIL-13,Eotaxin3を含んだTh2系のアレルギー応答が重要な役割を果たしていると考えられている.厚生労働省研究班において行われた全国調査によって,我が国での臨床的特徴が初めて明らかとなり,2015年にはそれぞれの診断指針が作成された.この指針では確定診断に至るためには,種々の腹部症状に加えて,内視鏡検査によって消化管粘膜から生検を行ったうえで,上皮内へ多数の好酸球浸潤を証明することが必須項目として挙げられている.好酸球性食道炎では,内視鏡検査によって食道粘膜に特徴的な所見も認められる一方で,好酸球性胃腸炎では特異的な内視鏡所見に乏しいことも多く,むしろ末梢血中での好酸球数増加を認める頻度が高い.治療に関しては,想定される発症機序から栄養療法や薬物治療が中心となってくる.成分栄養剤,既定除去食や個別化除去食といった栄養療法の好酸球性食道炎に対する有効性を示す報告は多いものの,好酸球性胃腸炎に関する十分なデータは存在していない.薬物治療に関しては,まだはっきりとしたメカニズムは解明されていないものの,好酸球性食道炎に関してはプロトンポンプ阻害薬が有効なことが多く,現在薬物療法の第一選択となっている.プロトンポンプ阻害薬抵抗例や好酸球性胃腸炎に対しては,除去食かステロイドの投与が基本的な治療となってくる.我が国では2015年に好酸球性消化管疾患として両疾患が指定難病に認定されたが,現状では未だ両疾患症例の数も限定されているのが実情である.今後,我が国から質の高いエビデンスを発信する為にも,更なる知見集積が期待される.

  • 松本 みさき
    2018 年 152 巻 4 号 p. 181-186
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー

    非アルコール性脂肪肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)は肥満と強く相関した疾患である.このうち肝細胞障害,炎症,線維化を示すnon-alcoholic steatohepatitis(NASH)の発症には複数の因子が関わるとされているが,そのひとつに活性酸素種の関与が提唱されている.著者の研究グループは活性酸素産生酵素NOX1/NADPHオキシダーゼの発現がNASH患者の肝生検検体および高脂肪・高コレステロール食を負荷したNAFLDモデルマウスの肝臓で有意に増加していることを見出した.そこで野生型(WT)およびNox1遺伝子欠損マウス(Nox1-KO)に高脂肪・高コレステロール食を8週間給餌したところ,WTで認められた肝障害マーカー,血清alanine aminotransferase(ALT)および肝組織中の活性型caspase-3の増加はNox1-KOで抑制されることが明らかとなった.また酸化ストレスマーカーであるニトロチロシンはマウスの肝類洞に局在しており,NAFLDモデルで有意に増加していたがNox1-KOでは抑制されていた.NOX1は肝類洞内皮細胞(LSECs)に多く発現しており,初代培養LSECsにおけるNOX1の遺伝子発現はパルミチン酸共存下で有意に増加した.さらにパルミチン酸はLSECsにおける一酸化窒素産生を抑制し,星細胞に対する弛緩作用を消失させた.これらのパルミチン酸による内皮機能障害はNox1-KO LSECsでは認められなかった.以上のことから,NAFLDモデルマウスでは血中に増加する遊離脂肪酸によってLSECsにおけるNOX1発現が誘導され,NOX1由来の活性酸素が内皮機能障害および肝細胞障害を惹起し,NASHの発症に寄与する可能性が示された.

  • 結束 貴臣, 今城 健人, 小林 貴, 本多 靖, 小川 祐二, 米田 正人, 斉藤 聡, 中島 淳
    2018 年 152 巻 4 号 p. 187-193
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー

    肥満・メタボリックシンドロームの増加に伴い非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)はわが国に2,000万人程度と患者数が多い.NAFLDのうち1~2割が非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)へ,さらに肝硬変や肝蔵がんに至るとされておりその対策は非常に重要である.患者数は増加の一途を辿っているが,その病態は多岐にわたり有効な治療はいまだ食事・運動療法が中心である.NASHの組織像は,好中球浸潤が主体であり,その病態進展にはグラム陰性桿菌由来のエンドトキシンの関与が推察されてきた.NASH進展におけるエンドトキシンを介した腸肝連関における肝臓側の要因として肥満を呈する高レプチン血症がNASH患者のエンドトキシンに対する過剰応答は重要なファクターである.さらに腸管側の要因として腸管バリアー機能の低下による腸管透過性の亢進が問題となっており,これらによって門脈中のエンドトキシンの増加をきたす.次世代シークエンサーの登場により,NAFLD/NASHにおける腸内細菌叢が解明されつつある.腸内細菌の乱れが引き起こす腸管透過性亢進よる血中エンドトキシン上昇はNASH病態に重要であり,腸管透過性亢進の制御はNAFLD/NASH治療に新たな可能性を秘めているとわれわれは考えている.

総説
  • 福永 浩司, 矢吹 悌, 高畑 伊吹, 松尾 和哉
    2018 年 152 巻 4 号 p. 194-201
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー

    心的外傷後ストレス症候群(PTSD:post traumatic stress disorders)は戦争体験,交通事故,自然災害,性被害など深刻なイベントにより引き起こされる.わが国の生涯有病率は1.3%と報告されている.PTSDでは文脈記憶への過剰反応,恐怖記憶消去系の障害に加えて,軽度の認知機能,注意力,学習障害が見られる.ヒトや動物実験では扁桃体,前頭前野,海馬を含む情動・恐怖の神経回路の感受性亢進が関わる.しかし,PTSDのメカニズムは不明であり,根本治療薬もない.最近,オメガ3(ω3)多価不飽和脂肪酸の摂取が自動車事故や東北大震災後のPTSD症状を軽減することが報告されている.脳型脂肪酸結合タンパク質(FABP7)の遺伝子欠損マウスではPTSD様の不安行動と恐怖記憶の固定が亢進される.私達はFABP3欠損マウスにおいて恐怖記憶消去系が障害されること,多動と認知機能障害がみられPTSD様症状を呈すること見出した.さらに,睡眠障害治療薬でメラトニン受容体作用薬であるラメルテオンの経口投与がFABP3欠損マウスのPTSD様行動を改善することを見出した.FABP3欠損マウスでは前帯状回皮質(ACC)のCa2+/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)の活性が低下していた.逆に扁桃体基底外側部(BLA)のCaMKII活性は上昇した.CaMKII活性化と相関して扁桃体基底外側部での恐怖条件に伴うc-Fosタンパク質の発現は著しく亢進した.これらの反応もラメルテオンの慢性投与で改善された.これらの知見から,ACCの機能低下による扁桃体の過剰興奮がPTSDの発現に関わること,睡眠障害治療薬ラメルテオンはPTSD症状の治療薬としての臨床応用が期待できる.

創薬シリーズ(8) 創薬研究の新潮流(26)
  • 中村 和市, 大竹 正剛
    2018 年 152 巻 4 号 p. 202-207
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー

    マイクロミニピッグは富士マイクラ株式会社によって生産されているミニブタで,解剖学的・生理学的特徴,雑食性,昼行性などの面でヒトと類似していることから薬理学・創薬研究結果のヒトへの外挿性が期待されている.体重は6ヵ月齢で10 kg程度と取り扱いも容易で犬舎での飼育も可能である.被験物質量も少なくて済む.ブタ白血球抗原(swine leukocyte antigen:SLA)も個体ごとに決定されており,免疫反応に関する研究にも有利である.代謝酵素やトランスポーターの研究も進み,ヒトとの類似性も示されていることからトキシコキネティクス研究でも利用が期待される.医薬品等の安全性評価においても,反復投与毒性試験,胚・胎児発生試験(抗体医薬品の評価は除く),安全性薬理試験などにおいて有用な動物となる.本稿では,マイクロミニピッグの基礎的特性とともに,薬理学的研究,創薬研究,安全性評価研究での有用性について述べる.

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