日本薬理学雑誌
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134 巻 , 1 号
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総説
  • 江頭 伸昭, 三島 健一, 岩崎 克典, 中西 博, 大石 了三, 藤原 道弘
    2009 年 134 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/14
    ジャーナル フリー
    アルギニンバソプレシン(AVP)は古くから下垂体後葉ホルモンとして体液および循環系の恒常性の維持に重要な役割を果たしていることが知られている.AVPの受容体は,V1a,V1bおよびV2受容体の3つのサブタイプに分類されており,特にV1aおよびV1b受容体は大脳皮質や海馬など脳内に広く分布していることから,中枢における役割が注目されている.そこで本稿では,V1aおよびV1b受容体欠損マウスを用いた著者らの研究成果を紹介するとともに,精神機能におけるバソプレシン受容体の役割に関する最近の知見について報告する.バソプレシン受容体は,統合失調症,自閉症,うつ病,不安障害,摂食障害など様々な精神疾患との関与を示唆する知見が多数報告されており,その影響にはストレス反応の変化が一部関わっていることが推察される.また,V1aおよびV1b受容体欠損マウスを用いた検討から,バソプレシン受容体がストレスや情動行動,社会的行動,情報処理,空間学習などに関与していることが明らかとなった.一方,V1aおよびV1b受容体の選択的な拮抗薬の精神作用についても報告されている.今後,これらの研究結果を踏まえて,精神機能におけるバソプレシン受容体の役割が解明されれば,精神疾患の予防および治療のための戦略に新たな展開が期待できるものと考えられる.
  • 堀之内 孝広, 三輪 聡一
    2009 年 134 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/14
    ジャーナル フリー
    Gタンパク質共役型受容体(G protein-coupled receptor:GPCR)は,細胞膜を7回貫通する特徴的な分子構造を有しており,現在,臨床で用いられている薬物の約50%がGPCRをその標的分子としている.一般に,GPCRは,神経伝達物質やホルモンといった細胞外の様々な刺激情報を三量体Gタンパク質(Gq,Gs,Gi,G12ファミリー)を介して細胞内へ伝達し,細胞機能の調節・制御・修飾に寄与する.心血管系疾患の病態形成において,重要な役割を担っているエンドセリンA型受容体(ETAR),アンジオテンシン1型受容体(AT1R),ATP(P2Y)受容体(P2YR)などのGPCRは,いずれもGqタンパク質と共役している.これらGPCR刺激は,Gqタンパク質/ホスホリパーゼC(PLC)の活性化を介して,セカンドメッセンジャーであるイノシトール1,4,5-三リン酸(IP3)やジアシルグリセロール(DAG)の産生量を増大させ,その結果,小胞体からの一過性Ca2+遊離や細胞外からの持続性Ca2+流入をもたらす.このうち,持続性Ca2+流入は,興奮伝導,筋収縮,分泌,増殖・分化,生存・死などの多種多様な細胞応答を制御する上で,中心的な役割を果たしている.この様な持続性Ca2+流入に関与する分子として,Ca2+透過性カチオンチャネルであるTRPC(transient receptor potential canonical)が同定されている.TRPCは,Ca2+だけではなく,Na+をも透過させる.TRPCを介したNa+流入は,細胞内外のNa+濃度勾配や膜電位の変化をもたらすことにより,Na+/Ca2+交換輸送体(Na+/Ca2+exchanger:NCX)や電位依存性Ca2+チャネル(voltage-dependent Ca2+channel:VDCC)を介したCa2+流入を惹起する.また,Na+は,Na+/H+交換輸送体(Na+/H+exchanger:NHE)を介しても細胞内へ動員され,NCXの活性化に寄与する.本稿では,TRPC,NHE,NCXが協働してもたらすNa+流入と持続性Ca2+流入との機能的共役について,ETARに関する我々の知見と最近の報告を織り交ぜて,論述する.
実験技術
  • 伏木 洋司, 早川 芳弘
    2009 年 134 巻 1 号 p. 13-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/14
    ジャーナル フリー
    In vivoにおける蛍光イメージングは測定機器の機能向上や試薬・プローブの開発により技術的な進歩を遂げ,薬理研究においてもその応用が期待できる.特に組織透過性の高い近赤外領域の波長域を持つ蛍光プローブは生体内部を非侵襲的・リアルタイムにイメージングするための非常に強力なツールとして期待されているが,一方で近赤外領域においては試験動物の腹部に食餌由来の強い自家蛍光がin vivo蛍光イメージングの妨げとなることが知られている.そこで我々は一般的な飼育繁殖用飼料とは異なり,精製飼料においては近赤外領域の蛍光成分が含まれていないことから,そのin vivo蛍光イメージングでの食餌性自家蛍光の低減効果について検討を行った.通常の飼育繁殖用飼料(穀物由来)で飼育されたマウス腹部における自家蛍光は近赤外領域において非常に強いことを確認した.さらに穀物由来の飼料からは近赤外領域において強い蛍光が認められたが,精製飼料中には同様の蛍光スペクトルはほとんど検出されなかった.さらに通常の飼育繁殖用飼料での飼育から,精製飼料でマウスを飼育する条件に変更する事でin vivo蛍光イメージングでの近赤外領域における食餌性の自家蛍光を大きく軽減させることが示された.これらの結果から,通常の穀物由来の飼料に代わり,蛍光原因物質を含まない精製飼料での被検動物の飼育は生体からの自家蛍光を低減させることができることから,近赤外領域での蛍光イメージングを行なう際に安定したイメージングデータを取得する方法として非常に有用であると考える.
  • 水沼 未雅, 池谷 裕二
    2009 年 134 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/14
    ジャーナル フリー
    機能的多ニューロンカルシウム画像法(functional multineuron calcium imaging, fMCI)は,単細胞レベルの空間解像度を保ちながら,多数のニューロン集団からスパイク活動を,蛍光カルシウム指示薬を用いて可視化する実験手技である.これを用いることで,目的の回路内の個々のニューロンが,いつ,どこで,どのように発火したのかを捉えることができるため,脳研究の次世代を担う実験技術として期待されている.本稿では,fMCIの特徴を説明しながら,筆者らの研究室で実際に用いられている実験プロトコールを記述し,最後にはfMCIの特長を活かした応用例として,高水圧下で神経活動を撮影した実験を紹介する.
創薬シリーズ(4) 化合物を医薬品にするために必要な薬物動態試験 (その1)吸収(4)
  • 高木 敏英
    2009 年 134 巻 1 号 p. 24-27
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/14
    ジャーナル フリー
    溶解性と膜透過性の高低によって,化合物を4つのクラスに分類するBCSの考え方を創薬に導入することにより,それらを経口投与したときに問題となる現象を整理し,その原因をメカニズムから理解することができる.また,それぞれの原因に対して,吸収改善のための有効な製剤的方策を示唆することも可能である.溶解性および膜透過性が良好なクラスに属する化合物の場合,その経口吸収性が優れているために,開発期間の短縮やコストの削減が可能となることから,創薬においてはこのような化合物を医薬品候補として選択することが重要となる.一方,溶解性と膜透過性の両方が低いクラスの化合物では,製剤的な対応は難しく,医薬品の候補化合物として好ましくない.創薬から臨床開発,さらには上市された後まで見通したBCS戦略を持つことにより,安全で有効な医薬品を,できるだけ早期に医療の現場へ提供することができるものと考えている.
新薬紹介総説
  • 岸田 博
    2009 年 134 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/14
    ジャーナル フリー
    ヒトチロトロピン アルファ(遺伝子組換え)(以下rhTSH,販売名:タイロゲン®筋注用0.9 mg,製造販売元(輸入):佐藤製薬株式会社,製造元:Genzyme社(米国))は,分化型甲状腺癌で甲状腺全摘または準全摘術を施行された患者における,放射性ヨウ素シンチグラフィーと血清サイログロブリン(Tg)試験の併用またはTg試験による診断の補助をする薬剤である.甲状腺全摘または準全摘施行患者において,残存甲状腺組織の確認,再発あるいは転移癌を確認する際,臀部筋肉内にrhTSHを投与することで体内のTSHレベルを上げ,甲状腺組織を刺激することで,放射性ヨウ素の甲状腺組織への取り込み,Tgの血中への分泌を促し,シンチグラフィーおよびTg試験が実施できる.今までの術後診断では,放射性ヨウ素を取込ませ,Tg分泌を検査するために,甲状腺ホルモン剤の服用を中断し患者の内因性TSHのレベルをあげていたため,患者は,甲状腺機能低下症状に長期間さらされていた.しかしrhTSHを使うことで,甲状腺ホルモン剤の服用を中断しなくて良いため,患者のQOL低下の抑制が期待できる.
  • 宮井 恵里子, 杉野 公基
    2009 年 134 巻 1 号 p. 37-45
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/14
    ジャーナル フリー
    海外において,既に尋常性ざ瘡(ニキビ)治療の中心的役割を果たしている外用レチノイドの一つ「アダパレンゲル0.1%(販売名:ディフェリン®ゲル0.1%)」が,2008年10月に発売された.本剤は,国内初の全く新しい作用機序のレチノイド様作用により,尋常性ざ瘡を治療する薬剤である.有効成分アダパレンは,表皮細胞の核内レチノイン酸受容体(retinoic acid receptor, RAR)に結合し,標的遺伝子の転写促進化を誘導する.正常ヒト表皮角化細胞のトランスグルタミナーゼ発現を抑制したことより,ケラチノサイト分化(角化)抑制作用を示すと考えられる.In vivoではざ瘡モデル動物であるライノマウスへの塗布で表皮面皰数の減少と,表皮厚の増加が示された.以上の結果から,アダパレンは表皮の顆粒細胞から角質細胞への分化を抑制することで,毛包漏斗部を閉塞している角層を除去することが推測された.国内臨床試験において,アダパレンゲルは,1日1回12週間の塗布で尋常性ざ瘡患者の総皮疹(非炎症性皮疹および炎症性皮疹)数を63.2%減少させた.最長12カ月間の塗布では,総皮疹数の減少率は,最終観察日で77.8%に達した.アダパレンゲルが非炎症性および炎症性のいずれの皮疹も減少させることは,これまでの抗菌薬治療では補えない特長である.アダパレンはレチノイド様作用を持つ故,高用量曝露時の催奇形性が懸念されたが,国内臨床試験ではいずれの被験者においても血中にアダパレンが検出されなかった(検出限界:0.15 ng/mL).よって,全身的副作用のリスクは非常に低いものと考えられた(但し,妊娠中の使用に関する安全性は確立していないため,「妊婦または妊娠している可能性のある婦人」に対しては,禁忌である).現在,アダパレンを含む外用レチノイドは尋常性ざ瘡治療の第一選択薬として海外で推奨されている一方,2008年9月日本皮膚科学会が策定した「尋常性ざ瘡治療ガイドライン」においても,主たる皮疹が「面皰」ならびに「炎症性皮疹(軽症から重症)」の場合,推奨度A(使用を強く推奨する)に位置づけられた.海外臨床試験で示された,外用ならびに内服抗菌薬との併用療法,さらには軽快後の寛解維持療法における有用性が評価され,同様に推奨度Aと認定されている.以上より,アダパレンゲルは,国内の尋常性ざ瘡診療において,新たな治療の選択肢として期待できる新規外用剤である.
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