日本薬理学雑誌
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131 巻 , 6 号
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特集:慢性咳嗽治療を理解するための基礎と臨床
  • 藤村 政樹
    2008 年 131 巻 6 号 p. 402-405
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/13
    ジャーナル フリー
    咳喘息とアトピー咳嗽は,我が国における遷延性・慢性乾性咳嗽の2大原因疾患である.●咳喘息とアトピー咳嗽は,ステロイド薬が奏効する好酸球性気道疾患であるが,それぞれの基本病態は異なる.●咳喘息は,β2-刺激薬などの気管支拡張薬が有効な唯一の病態であり,中枢から末梢気道全体の好酸球性炎症を基本病態とし,約30%の患者が喘息を発症するため,喘息の前段階と認識される.●アトピー咳嗽は,気管支拡張薬が全く無効であり,中枢気道の好酸球性炎症と咳感受性亢進を基本病態とし(中枢気道の蕁麻疹),喘息には移行しない.
  • 藤森 勝也
    2008 年 131 巻 6 号 p. 406-411
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/13
    ジャーナル フリー
    咳嗽は持続期間により分類されている.3週間以内の咳嗽を急性咳嗽,8週間以上続く咳嗽を慢性咳嗽という.3週間以上8週間未満の咳嗽は,遷延性咳嗽,subacute cough(亜急性咳嗽)と呼んでいる.本邦における遷延性・慢性乾性咳嗽の4大原因疾患は,咳喘息,アトピー咳嗽,かぜ症候群後咳嗽(感染後咳嗽),胃食道逆流による咳嗽である.遷延性・慢性湿性咳嗽の原因の大部分は,副鼻腔気管支症候群である.かぜ症候群後咳嗽は,別名,感染後咳嗽といい,ウイルスや肺炎マイコプラズマ,肺炎クラミジア感染後に咳嗽が遷延する病態である.ここには百日咳による咳嗽も含まれる.かぜ症候群後咳嗽は,遷延性咳嗽(亜急性咳嗽)の主要な原因疾患で,自然軽快傾向のある疾患である.一方胃食道逆流(GER)は,その名の通り,「胃内容物が食道に逆流する」ことである.胃食道逆流は,生理的現象である.胃食道逆流症(GERD)は,胃食道逆流により,何らかの症状や組織障害を伴う場合に使用される.胃食道逆流による咳嗽は,咳嗽を主な症状とし,胸やけなどの胃食道逆流症状の訴えがはっきりしない場合もある.診断には,24時間食道pHモニターが感度,特異度ともに優れている.しかし侵襲的検査であり,一般臨床上普及していない.他の遷延性・慢性咳嗽の原因が否定され,Empirical therapyとしてのプロトンポンプ阻害薬(PPI)で咳嗽が改善する場合,胃食道逆流による咳嗽と診断する.治療は,薬物(PPIやヒスタミンH2受容体拮抗薬など)による酸逆流抑制だけでなく,食事療法,生活習慣の改善,危険因子の除去を行う必要がある.治療は,2~3カ月は行ってみる必要がある.
  • 内藤 健晴
    2008 年 131 巻 6 号 p. 412-416
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/13
    ジャーナル フリー
    近年,明確な原因が特定できずに持続する咳嗽に苦しむ成人の患者が増加してきている.それらの原因疾患の1つに喉頭アレルギーが上げられる.欧米での喉頭アレルギーの歴史は古く1950年ごろから文献報告があり,1970年代には総説も出されているが,本邦での歴史は浅い.肺に明確な原因となる所見のない成人の咳で,喉頭アレルギーと鑑別すべき疾患は,アトピー咳嗽,咳喘息,後鼻漏症候群,胃食道逆流症,かぜ症候群後遷延性咳嗽,薬剤誘発性咳嗽などが上げられる.そのため,最近「慢性咳嗽の診断と治療に関する指針:2005年度版」が出版され,それらの鑑別診断などが詳細に示されている.しかし,これらの持続する慢性咳嗽症例を診断治療する上で,最も注意しなければならないことは,見逃すと大きな問題となる重篤な気道疾患(肺門部癌,気管支結核,喉頭癌,上顎癌などの除外を忘れないことである.
  • 塩谷 隆信, 佐藤 一洋, 佐野 正明, 渡邊 博之
    2008 年 131 巻 6 号 p. 417-422
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/13
    ジャーナル フリー
    ●カプサイシン受容体はTRPV1と呼ばれる陽イオンチャネルから構成されている.●TRPV1はカプサイシンのほか,酸,熱刺激,アナンダマイド,ブラジキニンやlipoxygenase (LOX) productsなどの炎症性物質でも活性化される.●TRPV1は気道C線維末端に多く発現し,神経原性炎症により活性化され咳嗽反射を亢進させる.●TRPV4も神経原性炎症の病態生理に重要な役割を演じている.●TRPV1拮抗薬は将来的に咳嗽治療薬として大いに期待される.
  • 高濱 和夫, 白崎 哲哉, 周 建融
    2008 年 131 巻 6 号 p. 423-428
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/13
    ジャーナル フリー
    咳嗽反射は,臨床的にも動物実験レベルにおいてもその薬理学的性質は多様であるが,生体防御反射や急性の咳嗽も難治性の慢性咳嗽も反射弓を構成する神経の興奮を介して発現する.我々はこれまで,難治性咳嗽の動物実験モデルを開発し,臨床上,慢性咳嗽に対して一定の効果をもつとされる薬物のこれらのモデル動物における難治性咳嗽に対する効果を調べてきた.ついで,その薬物の下気道神経系に対する作用を,下気道求心性神経および急性に単離した傍気管神経節ニューロンを用いて調べてきた.その結果,麦門冬湯の活性成分の一つであるオフィオポゴニン-D(OP-D)や抗アレルギー薬のスプラタストが,コデインが効きにくい難治性の咳モデルを抑制すること,また,これらの薬物は,作用のプロフィールや作用機序は異なるが,ともに下気道求心性神経のブラジキニン誘発放電を抑制し,かつ,傍気管神経節ニューロンの興奮性を抑制することがわかった.本総説では,上記について我々の知見を紹介しながら,下気道神経系が慢性咳嗽抑制作用をもつ薬物の作用点の一つになり得るのか否かについて考察する.
  • 亀井 淳三, 林 隼輔, 大澤 匡弘
    2008 年 131 巻 6 号 p. 429-433
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/13
    ジャーナル フリー
    咳は痰を喀出するための反射である.咳のメカニズムは明らかにされていないことが多い.そのためにピンポイントに作用する薬剤がないのが現状である.現在までに明らかにされているメカニズムは複雑である.咳が出る現象について概略を説明すると,気道に炎症があったり,また分泌物が溜まったりすると排出させようとする反射が起きる,それが咳と考えられる.咳反射の中枢への伝達経路はAδという有髄線維によると考えられている.臨床的に鎮咳薬は,咳の末梢あるいは中枢内経路のどの部位を遮断することによって咳を抑制するかが問題となる.例えば,コデインのような中枢作用性の薬剤は咳のメカニズムの中で共通経路を遮断することより効果は大きい.しかし,本来止めてはならない咳も止めてしまう危険性がある.また,中枢抑制の薬剤であるため咳以外の中枢作用,眠気なども低下させる可能性を持つ.これらを考慮すると,中枢性の薬剤で咳を遮断することは好ましくなく,より選択的な手段で鎮咳をもたらすべきである.日本において,鎮咳剤と称されているものは中枢性の鎮咳剤しかない.薬理学的には末梢性鎮咳剤と呼ばれるものがあってしかるべきであるが,実際には認可されていない.その大きな理由としては,咳のメカニズムが明確に示されていなかったことが大きな理由であろう.本稿ではこれらの問題を解決する基礎的知見となるべき咳の咳反射の求心路であるAδ線維の興奮性調節機序,特にC線維を介した咳感受性亢進機序について概説したい.
総説
  • 山口 行治
    2008 年 131 巻 6 号 p. 435-440
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/13
    ジャーナル フリー
    新薬の臨床開発では最新の診断技術が活用されず,依然として問診などの医師や患者の主観的な判断に依存している部分が多い.このような臨床評価に技術革新をもたらすものとしてバイオマーカーが期待されている.欧米の製薬企業や審査当局の取組みを紹介し,バイオマーカーを実用化するための課題についてまとめた.バイオマーカーは探索的臨床試験から検証的臨床試験に移行する段階での開発の意思決定に役立っている.臨床試験で用いられるバイオマーカーを動物実験の段階で評価することは候補化合物の選択と技術評価の両側面から有用であり,動物用のイメージング装置が製薬企業に導入されている.安全性のバイオマーカーについては,産官学のコンソーシアムを中心に推進されている.こういった欧米でのバイオマーカーの実用化にはベンチャー企業が果たす役割が大きい.未解決の問題として,膨大な開発費が必要となる慢性疾患の検証的臨床試験でバイオマーカーが活用されていないことが挙げられる.慢性疾患のバイオマーカーの開発では,一般に個体間変動と個体内変動が複雑に交絡して技術的なバリデーションが困難であることに加えて,審査当局の意向に依存する部分が多いため,費用対効果が正確に算出できない.薬理研究も含め,幅広い分野の技術や知識を結集することで,こういった実務的問題に新しい解決策がもたらされることを期待したい.
実験技術
  • 林 哲也, 山下 知佳
    2008 年 131 巻 6 号 p. 441-445
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/13
    ジャーナル フリー
    睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)は,睡眠中に断続的に無呼吸を繰り返すことによって日中傾眠などの症状を呈する疾患であり,労働災害や交通事故の原因にもあげられている.またSASは肥満,糖尿病,メタボリックシンドロームなどの生活習慣病と密接に関わり,心不全,高血圧に代表される心血管疾患の危険因子であることが示唆されている.しかしながら,SASによる低酸素状態が心血管系に及ぼす影響については不明な点が多い.我々は,持続的低酸素曝露装置を作製し,2型糖尿病や動脈硬化のモデル動物を用いた実験を行った.さらに,低酸素曝露条件をSASにより近づけるために,間歇的低酸素曝露装置を作製した.本装置を用いて行った10日間の間歇的低酸素曝露(30秒毎に酸素濃度5%と20%の繰り返しを8時間/日)により,C57BL/6Jマウスでは,左心室心筋細胞の肥大,間質の線維化などが認められ,左室リモデリングが惹起された.したがって,低酸素は心血管疾患の発症・進展に対して重要な役割を果たしていると考えられ,その詳細なメカニズムの解明は治療戦略および新たな治療法の確立のために必要である.
治療薬シリーズ(26) 抗不整脈薬
  • 中谷 晴昭
    2008 年 131 巻 6 号 p. 446-451
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/13
    ジャーナル フリー
    抗不整脈薬による不整脈治療に対する考え方は,過去20年間で大きく変化した.現在,抗不整脈薬の治療対象は主に心房細動と重症心室性不整脈に絞られている.また,抗不整脈薬の分類も古典的なVaughan Williamsの分類からSicilian Gambitに移行しつつある.それと共に,直接的にイオンチャネル作用薬を用いて不整脈を治療するdownstream approachばかりでなく,不整脈の発生基盤となる電気的リモデリングを神経液性因子の調節によって抑制するupstream approachも提唱されるようになった.心室性不整脈の病因に関しても,先天性QT延長症候群やBrugada症候群などの様にイオンチャネルの遺伝子異常に起因するものも存在することが明らかとなり,病因に応じた治療が行われている.また,重症心室性不整脈に関してもIII群抗不整脈薬が主に用いられる様になり,救急医療における抗不整脈薬の使用法も変わりつつある.本稿では抗不整脈薬の分類,不整脈の発生機構と心室性不整脈の薬物療法について概説する.
  • 橋本 吉弘
    2008 年 131 巻 6 号 p. 452-456
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/13
    ジャーナル フリー
    著名人が心房細動(AF)による脳梗塞に罹患したニュースが流れ,AFが脳梗塞に繋がる疾患として注目されている.高齢になればなるほど罹患率が高くなることから,特に高齢化社会となった日本において充分に対処すべき疾患である.Sicilian GambitによるAF治療戦略では,興奮間隙の小さいリエントリがAF時に複数同時に存在するため,このリエントリを阻害あるいは停止させることが有効であること,その効果的な方法として不応期を延長させることをあげている.不応期延長にはNaチャネルを遮断する方法とKチャネルを遮断する方法がある.現状では薬剤そのものの副作用や,心室に影響することが問題となっており,薬物治療の満足度は高くはない.このため,安全で安心して簡便に使用でき著効を示す薬剤の登場が求められている.最近の薬剤開発状況をみると,既存薬の副作用回避に注力したマルチチャネル遮断薬,IKurのような心房に局在するチャネルに注目し心室への影響回避を目指したINa+IKur+Ito遮断薬やIto+IKur遮断薬,機械的刺激によって機能するチャネルに注目したSAC遮断薬などがある.数年~10年後には薬物治療の選択肢が増え,新たな治療ステージを迎え,多くの患者に利益をもたらしているものと思われる.
  • 山下 武志
    2008 年 131 巻 6 号 p. 457-461
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/13
    ジャーナル フリー
    不整脈診療の基本とされる心電図が史上はじめて記録されてから約100年という時間が経過している.この間,心電図に記録された不整脈を治療しようとさまざまな,そしてたゆまぬ努力が先駆者達によって繰り返されてきた.いわばこの歴史はこれまでの研究者達の血と汗の努力の結晶であり,現在の我々はその恩恵を蒙っている.このことをよく噛みしめながら過去の歴史を振り返った時に,今後我々が歩むべき方向が見えて来るはずである.基礎研究,臨床研究,大規模臨床研究それぞれに行わなければならないテーマがある.不整脈患者の治療目的としてのmortalityとmorbidity,そしてそれを確保するためのツールとして心電図・電気生理学的知識が存在している.治療目的とツールを混同することなく,謙虚に将来への一歩を少しずつ歩むことがこの分野の先駆者達に捧げる我々の責務である.
創薬シリーズ(3) その3 化合物を医薬品にするために必要な安全性試験
  • 高橋 宏明, 高田 孝二
    2008 年 131 巻 6 号 p. 462-467
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/13
    ジャーナル フリー
    農薬などの化学物質の安全性評価の分野では,脳神経系の機能,形態,発達への影響を体系的に評価するガイドラインが整備されている.その特徴は,一般毒性試験を1次スクリーニング試験と位置づけ,成獣期ならびに発達期のガイドラインを揃えることによって,脳神経系への影響を段階的に評価することにある.本稿では,神経毒性に関連するガイドラインを紹介し,世界的な標準であるOECDガイドラインに基づいて哺乳動物を対象にした神経毒性試験を解説した.
新薬紹介総説
  • 山口 高史, 植仲 和典, 今岡 丈士
    2008 年 131 巻 6 号 p. 469-477
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/13
    ジャーナル フリー
    タダラフィル(シアリス®錠5 mg,10 mg,20 mg)は,強力かつ選択的なPDE5阻害作用を有する勃起不全(ED)治療薬である.In vitro試験系において,タダラフィルは強力なPDE5阻害作用を示したが,その他のPDEアイソザイムに対する作用は弱く,視覚機能への影響などの有害事象が発現する可能性が低いことが示唆された.タダラフィルはニトロプルシドナトリウム(SNP)によるヒト陰茎海綿体組織中のcGMP濃度上昇作用を増強させ,また,ヒト陰茎動脈あるいは陰茎海綿体平滑筋に対するSNP,アセチルコリンまたは電気刺激による弛緩作用を増強させた.以上の成績から,タダラフィルはそのPDE5阻害作用により,性的刺激によって産生されるNOによる平滑筋弛緩作用を増強させ,EDに対して治療効果をもたらすものと推察された.臨床薬理試験の結果から,タダラフィルの血漿中消失半減期は他のPDE5阻害薬より長く,また,薬物動態に対する明らかな食事の影響を受けないことが明らかにされた.臨床試験の結果から,性行為の前に必要に応じてタダラフィルを服用することで重症度や病因の異なるED症例の勃起機能が有意に改善することが立証され,忍容性および安全性も明らかにされた.反応時間を検討した臨床試験結果からタダラフィルは投与後30分以内に効果を発現すると考えられ,また投与後36時間まで有効性が認められている.
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