日本薬理学雑誌
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117 巻 , 4 号
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ミニ総説号 「プロスタグランジンを巡って-分子薬理から創薬まで-」
  • 成宮 周
    専門分野: その他
    2001 年 117 巻 4 号 p. 243-247
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
  • 倉石 泰, 牛首 文隆
    専門分野: その他
    2001 年 117 巻 4 号 p. 248-254
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    プロスタノイドが痛覚修飾と発熱に関与することは古くから知られていたが, 8種類存在するプロスタノイド受容体とそのサブタイプの役割についてはほとんど不明であった.しかし, プロスタノイド受容体欠損マウスを応用した最近の研究が, この問題に光を当てつつある.末梢組織の炎症あるいは感覚神経障害により生じる疼痛反応および熱刺激に対する痛覚過敏は, IP受容体の欠損により消失する.神経因性痛覚過敏は, EP1あるいはEP3受容体の欠損により影響を受けない.一方, 感覚神経障害により生じるアロディニアは, EP3受容体の欠損により消失あるいは顕著に抑制されるが, IP受容体あるいはEP1受容体の欠損では影響を受けない.PGE2を野生型マウスの脳室内に投与すると, 強い発熱反応が惹起される.しかし, EP3受容体欠損マウスではこの反応が欠失する.さらに, 内因性発熱物質であるIL-1βや外因性発熱物質であるLPSによって惹起される発熱反応も, EP3受容体欠損マウスで特異的に消失する.この結果, PGE2が発熱の最終的なメディエーターであり, この作用はEP3受容体によって仲介されることが明らかとなった.
  • 上野 晃憲, 大石 幸子
    専門分野: その他
    2001 年 117 巻 4 号 p. 255-261
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    プロスタグランジン(PGs)は他のメディーエーターと共存する事によって炎症反応を修飾し調節しているが, この生体内での相互作用や修飾作用の実態は不明な点が多かった.PGsの受容体のノックアウトマウスが作成され, その表現型やin vivoでの実験の結果から多くの情報が得られてきている.ここでは足浮腫モデル,炎症疼痛のライジングモデル, 白血球遊走に関係するサイトカインの産生制御におけるPGs受容体の役割について解析した結果を示す.まずマウス足浮腫について, IP受容体の欠損マウスと野生型を比較し調べたところ, カラゲニンによって引き起こした足浮腫の初期にはPGI2が主なPGとして働き, ブラジキニンの作用を増強している可能性が示された.酢酸の腹腔内投与により引き起こされる疼痛モデルのライジング反応では主なPGとしてPGI2が働いていることが, IP受容体欠損マウスを用いた結果と腹腔内PGsの測定結果から明らかとなった.一方LPS前処置後の増強されたライジング反応では, COX-2が誘導されて, PGI2ばかりでなくその他のPGsの産生も上昇して作用している可能性が示された.白血球遊走や, 細胞機能の刺激に関与する炎症性サイトカインは, 滲出液中に時間差をもって出現し炎症反応の進展の制御に働いている可能性が指摘されているが, 炎症部位に共存するPGsによって産生制御されていることがわかってきた.IPおよびEP受容体の選択的アゴニストやそれら受容体の欠損マウスを用いた検討から, IP, EP2, EP4受容体は内因性のPGI2, PGE2の刺激に応じて細胞内cAMPの上昇を介した情報伝達系の制御によって, TNFαおよびIL-1の産生には抑制的に, またIL-6やIL-10の産生には増強的に作用する結果, 抗炎症的に作用する面があることが示された.
  • 田中 宏幸, 永井 博弌
    専門分野: その他
    2001 年 117 巻 4 号 p. 262-266
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    アレルギー性炎症は, 気管支喘息, アレルギー性鼻炎ならびにアトピー性皮膚炎などの疾患の発症に関わる好酸球性炎症である.従来の概念でとらえた関節リュウマチなどの好中球性炎症とは, 発症原因, 進展過程および治療など種々の面において異なる.すなわち, 発症には, 抗原特異的T細胞を中心とする免疫細胞およびその進展には免疫グロブリンを固着することができる肥満細胞および好酸球などが関与する.また, 周知のごとくプロスタノイドは, これら炎症性細胞から産生されるアラキドン酸代謝産物であり, 炎症反応に重要な因子である.しかし, プロスタノイドの産生を抑制する非ステロイド性抗炎症薬は, 好中球性炎症には有効であるが, アレルギー性炎症は抑制せず, かえって増悪することがある.従って, アレルギー性炎症におけるプロスタノイドの役割は検討されなければならない大きな課題であった.そこで, アレルギー反応において主として肥満細胞から産生されるプロスタグランジンD2(PGD2)のアレルギー性気道炎症における意義をその受容体であるDP遺伝子欠損マウスを用いて検討した.その結果, DP欠損マウスでは, 野生型マウスに比し, 好酸球を主体とするアレルギー性気道炎症, Th2タイプのサイトカイン産生ならびに気道過敏性のいずれの反応も減弱する事が明らかとなった.すなわち, PGD2はアレルギー性気道炎症の発症に意義を有するものと思われる.また一方で, これらの反応は非ステロイド性抗炎症薬によりむしろ増悪がみられることから, 他のプロスタノイドの中にはアレルギー性炎症を制御するものが存在する可能性も推察される.これらのことより, 今後, 個々のプロスタノイドの産生に関連する遺伝子または受容体欠損マウスあるいは遺伝子導入マウスを用いた研究および阻害薬を用いた研究を通じて, アレルギー性炎症におけるプロスタノイドの役割がさらに明らかになるものと思われる.
  • 坪井 一人, 市川 厚
    専門分野: その他
    2001 年 117 巻 4 号 p. 267-273
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    プロスタノイドは, アラキドン酸からシクロオキシゲナーゼ(COX)を律速酵素として産生される多彩な生体作用を作つ生理活性脂質の総称であり, プロスタグランジン(PG)とトロンボキサンによって構成される.プロスタノイドは発熱や痛覚修飾といった病態生理と共に, 古くから排卵, 黄体退縮, 子宮収縮といった雌性の生殖生理にも深く関与することが指摘されてきた.近年, プロスタノイドの一連の合成酵素や受容体のcDNAクローニングにより遺伝子欠損マウスの解析が可能となり, それぞれの酵素のアイソフォームや受容体サブタイプのレベルでプロスタノイドが個体の中でいかなる生殖生理作用を発揮しているのかが明らかとなりつつある.すなわち, 妊娠後期ではCOX-1により合成されるPGFが卵巣黄体の退縮を介してマウスの分娩誘導に必須であることが判明した.さらに, PGF受容体欠損マウスでは分娩異常に伴い, 野生型の分娩時に子宮筋層で見られるCOX-2の発現誘導が認められず, COX-2がおそらく子宮収縮を担うPGの産生に関与することが示唆された.また, 妊娠前期においてはCOX-2により合成されるPGE2がEP2受容体を介して卵丘細胞のexpansionを引き起こし, 卵丘細胞の機能発現を介して排卵·受精に重要な役割を持つことが明らかとなった.こレらの知見は, 生殖領域でプロスタノイドの合成酵素や受容体を標的とした新規薬物の創製の際に基礎的知見として貢献するのみならず, 他領域の薬物においても生殖系における副作用発現を考える上で考慮されるべきであると考えられる.
  • 竹内 孝治, 加藤 伸一, 田中 晶子
    専門分野: その他
    2001 年 117 巻 4 号 p. 274-282
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    消化管は種々の食餌性あるいは薬剤性の刺激に絶えず露呈されるという過酷な環境下にある.このような状況下においても, 消化管の粘膜恒常性は種々の機能変化およびそれらを調節する生体内因子により構成されている“粘膜防御機構”によって通常維持されている.内因性プロスタグランジン(PG)は消化管の粘膜防御機構において司令塔的な役割を演じており, 中でもPGE2が最も重要であると考えられている.本稿では, 消化管におけるPGE2の粘膜保護作用に関連するEP受容体および機能変化について, 種々の選択的なEP作動薬およびEP受容体欠損マウスを用いて得られた著者らの成績を中心に紹介する.外因性PGE2の塩酸·エタノールおよびインドメタシン誘起胃損傷に対する保護作用はEP1作動薬によって再現され, 逆にEP1拮抗薬の存在下では消失する.内因性PGE2はマイルド·イリタントによる適応性胃粘膜保護作用においても重要な役割を果たしているが, この現象もEP1拮抗薬によって完全に消失する.PGE2による胃粘膜保護作用は胃運動抑制と機能的に関連しており, この作用もEP1作動薬によって同様に認められる.しかし, カプサイシンによる神経性胃粘膜保護作用はEP2およびIP受容体との関連性が推察されている.一方, 十二指腸におけるPGE2による保護作用は重炭酸イオン分泌と機能的に関連しており, これらの作用はEP3およびEP4作動薬によって再現される.同様に, インドメタシン小腸傷害もEP3およびEP4作動薬によって抑制され, 機能的には腸運動抑制および粘液分泌亢進に起因する腸内細菌の粘膜内浸潤の抑制と関連している.PGE2による粘膜防御の詳細な発現機序については不明であるが, 胃における保護作用は主としてEP1受容体を介して, また十二指腸および小腸における保護作用はEP3およびEP4受容体を介して発現するものと推察される.
  • 馬嶋 正隆, 天野 英樹, 林 泉
    専門分野: その他
    2001 年 117 巻 4 号 p. 283-292
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    血管新生は, 既存の血管から新生血管が形成される生命現象であり, 病的には各種増殖性炎症, 潰瘍創傷治癒過程, 固形腫瘍の増殖などの場合に, 生理的には発生の過程や性周期における子宮内膜の増殖の際にみられる生体反応である.基底膜の分解から新生血管の形成に至る一連の複雑な反応であり, それは各種増殖因子(growth factor)で調節されるが, prostaglandins(PGs)も血管新生を増強することが知られている.スポンジ皮下移植血管新生モデルを用いて, 実際に血管新生という生命現象に関与するcyclooxygenase(COX)さらには内因性のPGおよびその受容体を検討した.誘導型COX-2によって生成されたPGE2がEP3受容体を介して血管新生を増強することが判明した.その増強作用はvascular endothelial growth factor(VEGF)の誘導を介していた.腫瘍を皮下に接種した場合の血管新生においても, COX-2由来の内因性PGE2が宿主側組織(stroma)のEP3受容体を介してVEGFを誘導し, 血管新生を増強していることが明らかになった.一連の研究成果より, 選択的COX-2阻害薬や選択的プロスタノイド受容体拮抗薬が, 癌を含めた血管新生が関与する多彩な病態への新しい治療薬として応用が可能であることが考えられた.
  • 宮浦 千里
    専門分野: その他
    2001 年 117 巻 4 号 p. 293-297
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    骨の破壊は破骨細胞による骨吸収によって進むが, その過程には骨芽細胞の役割が重要であり, PGEを含む種々の骨吸収因子は骨芽細胞に作用する.PGEの骨吸収作用が4種のPGEレセプター(EP1, EP2, EP3, EP4)の内, どのEPを介して発現するかを明らかにすることを目的に, 4種のEPの各々のノックアウトマウスならびに4種のEPに対する選択的アゴニストを用いて骨吸収の解析を行った.その結果, PGEは主として骨芽細胞のEP4レセプター, 一部はEP2レセプターを介した機構によりA-キナーゼを活性化し, 破骨細胞の分化を促して骨吸収活性を発揮することが明らかとなった.
総説
  • 金田 安史
    専門分野: その他
    2001 年 117 巻 4 号 p. 299-306
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    最初の遺伝子治療臨床研究が始まって10年が経過した現在, 遺伝子治療の問題点がクローズアップされてきた.遺伝子導入技術の改良がやはり成功の鍵を握るため, 低侵襲性·高効率ベクターの開発が活発に行われている.既存のベクターの改良や, 新規物質やウイルスの開発, さらに複数のベクター系を組み合わせて短所を相補するようなハイブリッドベクターともいうべき概念が生まれてきた.一方, 標的疾患については遺伝病のいくつかや生活習慣病において現在の未熟な遺伝子治療技術であっても治療可能な疾患が見出されてきた.しかし癌についての遺伝子治療臨床研究は現在まだ試験段階にあると考えるべきであろう.遺伝子治療をさらに効果的な医療に結びつけるために, 基礎研究と臨床研究, 各々の進展と, それらがうまくかみ合った上で, 産業界との結びつきも必要となってきている.このような体制の整備が問題である.
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