日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
84 巻, 6 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 武 陽明, 山崎 直樹, 福田 尚久, 佐治 美昭, 名川 雄児
    1984 年 84 巻 6 号 p. 471-482
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    両側椎骨動脈を電気焼灼したラットを用いて,その翌日両側総頸動脈を一時的に閉塞することにより脳虚血モデルを作製した.この脳虚血ラットにおいて,血流再開後の一般症状ならびに電気生理学的および生化学的パラメータの変化を検討することにより脳虚血モデルとしての特徴づけを試みた.両側総頸動脈閉塞(脳虚血)により,直ちに立ち直り反射(RR)が消失し,大脳皮質脳波活性は完全に平坦化した.10および30分間の脳虚血時,血流再開直前では大脳におけるATP含量は著明に減少し,乳酸含量は著明に増加した.10分間脳虚血群においては,血流再開後,ATP含量は速やかに回復し,続いてRRおよび乳酸含量が,最後に脳波活性が回復した.30分間脳虚血群では,血流再開後における前述のパラメータの回復には長時間を要し,特に脳波活性の回復が不良であり脳細胞の電気的活性の不可逆的障害をある程度は伴っていることが推察された.この30分間脳虚血群では,大脳において軽度な脳浮腫が認められた.一方,橋+延髄におけるATP含量は,30分間脳虚血によってもほとんど減少することはなく,また聴性脳幹誘発反応(ABER)も,30分間脳虚血によって潜時が延長しただけであり,しかも,血流再開によりその変化はほぼ回復したことなどから,下位脳幹は大脳に比較して虚血処置の影響を受け難いことが示唆された.
  • 武 陽明, 成実 重彦, 永井 康雄, 栗原 悦雄, 佐治 美昭, 名川 雄児
    1984 年 84 巻 6 号 p. 485-498
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    両側椎骨動脈を電気焼灼したラットを用いて,その翌日総頸動脈を一時的に閉塞することにより脳虚血モデルを作製した.この脳虚血ラットにおいて脳内神経化学的パラメータの変化を検討することにより脳虚血モデルとしての特徴づけを試みた.10分間脳虚血群では,血流再開直前および再開後ともに測定した4部位(大脳皮質,線条体,側坐核+嗅結節,視床下部)のモノアミン含量は有意な変化を示さなかった.γ-aminobutyric acid(GABA)含量は,再開直前に測定した全部位(モノアミン含量測定部位に,海馬,視床,橋+延髄,小脳を加えた8部位)のうち側坐核+嗅結節および橋+延髄を除いた部位で有意に増加したが,5分後には大脳皮質を除き,ほぼ回復した.cyclic AMP(cAMP)含量は,再開1分後に測定した5部位(GABA含量測定部位から視床下部,橋+延髄,小脳を除いた部位)で4~8倍に増加したが,3~5分後には回復した.また,大脳皮質において再開直前に,choline acetyltransferase(CAT)およびacetylcholine esterase(AChE)活性も有意に抑制されたが,再開15分後には,ほぼ回復した.30分間脳虚血群では,モノアミン含量は再開直前に,ほぼ全部位(8部位)で減少し,5-hydroxytryptamine(5-HT)が最も著明であった.再開30分後までにdopamine(DA)含量は側坐核+嗅結節を除いた部位でほぼ回復したが,5-HTおよびnorepinephrine(NE)含量は,大脳皮質海馬,側坐核+嗅結節および視床で回復しなかった.血流再開直前に,ほぼ全部位で有意に増加したGABA含量のうち,大脳皮質および小脳のGABA含量は再開30分後でも回復しなかった.再開10分後に全部位で有意に増加したcAMP含量は,20分後にはほぼ回復したものの,大脳皮質,線条体,側坐核+嗅結節および視床下部では30分後に有意に減少した.以上,種々な神経化学的パラメータの変化から虚血処置の脳内神経活動に及ぼす影響は,10分間脳虚血群では一過性であったが,30分間脳虚血群では持続的であり,特に終脳部では著明であることがわかった.
  • マウス腹腔マクロファージに対する作用
    吉井 春夫, 渡辺 啓伍, 柳原 行義, 信太 隆夫
    1984 年 84 巻 6 号 p. 499-507
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    neurotropin(NSP)のマウス腹腔マクロファージに対する作用を種々の生化学的パラメーターおよびP815-X2マストサイトーマに対するcytostatic activityを指標としてin vitroで検討した.NSP共存下にレジデントマクロファージを24時間培養したが,マクロファージ由来のβ-glucuronidase(GUR),N-acetyl-β-D-glucosaminidase(NAG)および細胞内lactate dehydrogenase(LDH)活性は何ら影響を受けなかった.しかし,培養時間を48~96時間に延長すると,GUR,NAGおよび細胞内LDH活性の増強が認められた.特に,細胞内LDH活性は顕著な増強効果を示し,しかも用量依存的であった.また,NSPによる細胞内LDH活性増強効果はcycloheximideにより完全に阻止された.NSPはレジデントマクロファージによる培養液中のグルコース消費を有意に増強した.NSPによる細胞内LDH活性およびグルコース消費の増強効果はプラスチックディシュ付着性のマクロファージ分画に認められたが,非付着細胞分画にはこれらの増強効果は全く認められなかった.一方,NSPは単独でマストサイトーマに対して用量依存的なcytostatic activityを示したが,レジデントおよびチオグリコレート誘導マクロファージのcytostatic activityを増強しなかった.以上の結果から,NSPは酵素活性やグルコース消費の増強を介して生化学的にレジデントマクロファージを活性化することは明らかであるが,レジデントおよびチオグリコレート誘導マクロファージのマストサイトーマに対するcytostatic activityを増強しないので,マクロファージの腫瘍細胞傷害性には影響をおよぼさないものと考えられた.
  • 佐藤 秀蔵, 杉本 真次, 安藤 孝夫, 宮嶌 宏彰, 千葉 祐広
    1984 年 84 巻 6 号 p. 509-517
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    電気生理学的手法を用いた糖尿病性網膜症の早期検出法を確立する目的で,streptozotocin(STZ)35および40mg/kgを単回静注したラットの網膜電図(electroretinogram,ERG)および視覚誘発脳波(visual evoked potential,VEP)を無麻酔・無拘束下に経時的に記録した.STZ投与ラットでは全例に血糖,血中sorbitolおよび尿糖の上昇,尿量および飲水量の増加ならびに血中insulinの低下などの糖尿病特有の症状が発現した.これらラットのERG各波は振幅の減少および潜時の延長を示した.とくにb波上律動様小波各波の潜時延長は明確で,STZ投与後3~6週目より各々投与前値に比較して有意に延長した.一方,VEPではSTZ投与後3週目よりERGの抑制に基ずくと考えられるN1潜時の軽度な延長がみられた.STZ投与後9週目に眼球の病理組織学的検索を行った結果,水晶体上皮の腫大および増生ならびに水晶体線維の腫大および空胞化がみられ,一部のラットでは片側性ではあるが網膜全層の菲薄化が観察された.また,STZ投与後4週目からinsulin 10単位/ラットを連日皮下投与した結果,ERGおよびVEPにみられた変化はいずれも投与前値にまで回復した.以上の成績より,本実験で用いたERGおよびVEPの無麻酔・無拘束下での記録法はラットの糖尿病性網膜症の早期診断法として有用であり,さらに糖尿病ラットのERGではヒトと同様,律動様小波に有意な変化が現れることが確認された.
  • 首藤 重利, 宇佐 輝人, 津曲 立身, 中島 啓
    1984 年 84 巻 6 号 p. 519-528
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    gallamine不動化ネコを用い,脳への血流を一定時間遮断した後の錐体路反応,皮質脳波および局所脳血流量に及ぼすnizofenoneの効果を,pentobarbitalと比較検討した.脳底動脈および総頸動脈の分枝(上甲状腺動脈,背側筋枝,内頸動脈,後頭動脈および上行咽頭動脈)を結紮した後,総頸動脈を45分間閉塞することによって脳虚血を負荷した.nizofenone(1mg/kg,i.v.)は再開通後,錐体路反応および皮質脳波の回復を促進した.対照群で認められた回復過程の中断と,その後再び抑制に移行するいわゆる二次抑制は認められず,脳血流量においては,良好な循環状態が持続した。pentobarbital(20mg/kg,i.v.)は再開通後,一過性に錐体路反応の回復を促進したが,その後は対照群と同様に,脳血流量の低下に伴って二次抑制が発現した.これらの結果から,nizofenoneは,虚血によって発現する神経機能の低下ならびに脳血流の減少に対して保護作用を有し,本作用はpentobarbitalとは異なることが判明した.
  • 五十嵐 康, 笹原 富弥, 丸山 悠司
    1984 年 84 巻 6 号 p. 529-536
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    高速液体クロマトグラフィー/電機化学検出器(HPLC-ED)の応用によるラット脳内コリン(Ch)のおよびアセチルコリン(ACh)の簡易測定法を紹介する.本法は,Ch,AChおよび内部標準としてのエチルホモコリン(EHC)を,Chemcosorb 3C-18のカラムにより分離した後,10mの反応コイル中で酵素と反応せしめ生成するH2O2を検出する方法である.本法の測定可能限界は10~30pmoleである.脳からの抽出操作は極めて簡易化され,15% IN ギ酸アセトンでホモゲナイズし,遠心分離した上清をエーテルで1回洗源し濃縮操作の後,直ちにHPLCへ注入する.回収率はCh:96.1±1.4% ACh:95.6±2.2%である.ラット脳内部位のCh,AChは10kW-磁場型装置でマイクロ波照射を行い,本法の応用で測定した結果をこれまでのデータと比較検討してその有用性を確認した.
  • 市丸 保幸, 森山 峰博, 市丸 美千子, 五味田 裕
    1984 年 84 巻 6 号 p. 537-542
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    消化器系の不定愁訴に有効とされているγ-oryzanolについてcommunication box法による条件情動刺激(CES)負荷時の胃粘膜損傷ならびに小腸運動機能の変化,さらにはflower pot法によるREM sleep deprivation時の胃粘膜損傷に及ぼす影響をddY系雄性マウスを用いて検討した.γ-oryzanolの200および500mg/kgの経口投与によりcommunication box法によるresponder群の胃粘膜損傷は有意に抑制され,またoxazolam 2mg/kgおよびatropine 3,10mg/kgの投与によっても抑制された.さらにsender群における胃粘膜損傷もγ-oryzanol 200および500mg/kgの投与により抑制された.CES負荷によるrcsponder群の小腸運動充進に対してγ-oryzanolは抑制的に作用し,atropineもこれを抑制した.しかし,oxazolamは殆ど影響を及ぼさなかった.以上のことよりγ-oryzanolはresponderおよびsender群の胃粘膜損傷を抑制し,responder群の小腸運動の亢進に対しても抑制作用を示したことより,γ-oryzanolの抗濃瘍ならびに消化器過敏症に対する効果が期待される.
  • 天沼 二三雄, 若海 智恵子, 田中 誠, 村松 信, 相原 弘和
    1984 年 84 巻 6 号 p. 543-551
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    acetylcholine(ACh)writhing法の鎮痛試験法としての有用性を検討するため,マウスを用いて基礎条件の検討,ならびに非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の鎮痛作用を,acetic acid writhing法およびphenylquinone writhing法に対する作用と比較検討した.また,酸性NSAIDsのprostaglandins(PGs)生合成阻害作用(in vitro)も検討した.基礎条件 : AChを腹腔内に投与すると5,10mg/kgで全例にwrithingが認められたが,そのwrithing数はほぼ同じであった.また,ACh投与直後から10分間のwrithing数は平均2.8回で,投与9分以後にはwrithingは認められなかった.従って,NSAIDsの鎮痛作用を評価する場合は,ACh 5mg/kgを腹腔内に投与して,直後より10分間のwrithing数を測定し,writhingの全く発現しない場合を鎮痛作用陽性とみなすことにした.NSAIDsの鎮痛作用 : 使用したNSAIDsは各種writhing法で抑制作用を示したが,ACh writhing法のED50値と他のwrithing法のED50値を比較すると,sodium salicylate以外の酸性NSAIDsはACh writhing法のED50値が最も低値であった.各種writhing法のED50値とPGs生合成阻害作用のIC50値との間には,有意な正の相関々係が認められ,さらにPGs生合成阻害作用の評価法(in vivo)として報告されている“ひまし油下痢”に対するED50値との間にも有意な正の相関々係が認められたが,ACh writhing法のED50値との相関が最も強かった(r=0.93,P<0.01).同様に,酸性NSAIDsの場合,各種writhing法のED50値と臨床用量との間にも有意な正の相関々係が認められたが,ACh writhing法のED50値との相関が最も強かった(r=0.90,P<0.001)。以上の結果よりACh writhing法はPGsの関与する試験法で,酸性NSAIDsの効力評価に適した方法と考えられる.
  • 相澤 義雄, 向後 博司, 山田 健二, 稲津 教久, 松平 忠弘
    1984 年 84 巻 6 号 p. 553-561
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    合成グルココルチコイドの一つとして研究開発されたdifluprednateと既知の合成グルココルチコイドの一つであるfiuocinonideとを肝グリコーゲン蓄積作用,副腎皮質機能抑制作用,電解質排泄に対する作用,および性ホルモン様作用の有無について比較研究した.その結果,肝グリコーゲン蓄積作用は0.1mg/kgの投与量でdifluprednateの方がfluocinonideより効果が大であった.しかし血清corticosteroneならびに副腎corticosteroneレベルに対しては両グルココルチコイド共に著明な低下作用を示した。また尿量と電解質特にKの排泄増加が両薬物投与により認められた.difluprednateの卵胞ホルモン様作用,黄体ホルモン様作用および男性ホルモン様作用は認められなかった.一方,difluprednateとnuocinonideの両合成グルココルチコイドの連続投与による体重への影響はdifluprednateでは1.0mg/kgで,fluocinonideでは0.1mg/kg,1.0mg/kg用量とも体重の減少が認められ,特にfluocinonideの1.0mg/kg投与群では途中死亡する例が多く見られた.
feedback
Top