日本薬理学雑誌
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98 巻, 6 号
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  • 藤井 濤子
    1991 年 98 巻 6 号 p. 419-434
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    Increasing numbers of neurotoxins or therapeutic agents that have specific target cells or receptors can be used to assess the developmental correlation between the structure and function of various organs including the brain. Patients with chronic diseases are now able to maintain their social activities but still must be medicated for a long period of their life. This might increase the potential hazard of prenatal drug exposure in the progeny. Functional teratology is quite a new concept in neuroscience. Recent observations of our laboratory and those of others suggest that the sensitive period for functional teratology might encompass the whole stage of fetal life in animals and humans. The shortage of precise information on the developmental integration of the structure and function of the neurons with different properties is a problem to be solved for the further progress of developmental pharmacology and toxicology. Single exposures to drugs at a different stage during the gestational period of rats or mice might provide more useful information on the relationship between the lesioned area and related functional disorders manifested postnatally. This paper reviews recent advances in developmental neuropharmacology and functional neuroteratology including beneficial points of the short-term exposures to drugs.
  • 森下 信一, 庄司 政満, 小國 泰弘, 杉本 智潮, 平井 康晴, 東間 章二, 伊藤 千尋
    1991 年 98 巻 6 号 p. 435-442
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    牛黄,人参製剤霊黄参の実験的低酸素性脳障害および脳虚血に対する作用を検討した.霊黄参の適用により,マウスの低圧酸素性脳虚血における生存時間の延長傾向,ラット断頭後のgasping持続時間の延長傾向,ラット脳ホモジネートの過酸化脂質産生の抑制,ラット脳スライスのxantlline-xanthine oxidase誘発脳浮腫の抑制,ラット脳凍結損傷法による脳浮腫の抑制,ラット両側総頸動脈結紮およびスナネズミ両側総頸動脈結紮再灌流による脳過酸化脂質増加抑制が認められたことから,霊黄参の脳虚血による障害改善作用が期待された.これらの作用には霊黄参に配合されている牛黄の成分であるbilirubinの抗活性酸素作用が一部関与していると考えられた.
  • 高村 省三, 吉田 純子, 鈴木 史郎
    1991 年 98 巻 6 号 p. 443-448
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    L-cysteine(L-CYS)およびその関連化合物のin vitroにおけるEhrlich腹水がん細胞増殖促進作用を検討した.基礎培地(BM)では,細胞はほとんど増殖しなかったが,BMに0,5~2mMのL-CYSを添加することにより,細胞の増殖がみられた.1mMのL-CYSが添加されたBM内のfree SH量は添加24時間後,L-CYS非添加BM内のそれとほとんど同じであった.この時点で細胞をこのL-CYS加BMに移植し培養したところ,1mM L-CYSをBMに添加し,その直後に細胞を移植して培養した場合とほぼ同様の細胞増殖促進効果が得られた.―方,L-CYSの代謝産物であるL-cysteine sulfinic acid,hypotaurineおよびtaurineではL-CYSに比べ細胞増殖促進活性は低下した.またS-methyl-L-cysteineおよびS-benzyl-L-cysteineおよびD-cysteineには作用はなかったが,L-cystineはL-CYSと同程度の活性を示した.他方,L-CYS添加BMで培養された細胞のタンパクSH量は不変であったが,細胞内freeSH量は有意に増加した.以上の結果から,基礎培地に添加されたL-CYSは一旦非SH化合物(おそらくL-cystine)に変化して細胞内に取り込まれ,細胞内のfree SH量を増加させることによって細胞増殖効果をもたらすと思われる.
  • 宮澤 友明, 村山 千恵, 中川 英彦
    1991 年 98 巻 6 号 p. 449-456
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    麦角アルカロイド誘導体lisurideの異型化赤血球誘発ラット脳梗塞に対する影響を検討した.生理食塩液で2倍希釈したラット自家血を高浸透圧性溶液(65% meglumine diatrizoate)と等量混合し,高浸透圧処理で形態変化および変形能低下を引き起こした異型化赤血球を含む混合液50μを,ラット左外頸動脈から逆行性に内頸動脈に注入して脳梗塞を誘発した.lisurideおよび対照として生理食塩液を,梗塞誘発30分前に皮下投与した.生理食塩液群では,脳梗塞誘発2時間以内にすべてのラットが死亡したが,lisuride0.002mg/kg群では生存時間の延長傾向が,0.01mg/kg群では有意な延長がみられた.脳梗塞誘発1時間後に,脳水分含量率,脳組織中Na+およびCa2+含量がそれぞれ増加したが,lisuride0.01mg/kg群では生理食塩液群に比していずれも有意な減少がみられた.梗塞誘発1時間後の別の脳から作成したヘマトキシリンエオシン染色標本について,組織障害に対する影響を検討したところ,lisuride0.01mg/kg群では組織障害の顕著な領域が生理食塩液群に比して約50%と有意に小さかった.またlisuride群では,大脳皮質および髄質神経細胞と髄質神経線維の変性が生理食塩液群に比してそれぞれ有意に軽減された.以上の結果から,lisurideは脳循環障害後の急性変化に対して有効であることが示唆された.
  • 前田 悦子, 植松 利男
    1991 年 98 巻 6 号 p. 457-466
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    alminoprofen(AP)の発熱に対する作用を,無麻酔下の発熱ウサギモデルを用いて検討した.発熱は,lipopolysaccharide(LPS)の静脈内投与,leukocytic pyrogen(LP)の大槽内投与およびarachidonic acid(AA)の大槽内投与により惹起した.また,LPS投与後の脳脊髄液中のAPおよびPGE2量を測定した.AP(3~30mg/kg,p.o.)は,LPS(0.5beg/kg,i.v.)により惹起された発熱を用量依存的に抑制した(AP,ibuprofen,indomethacin,pranoprofenのED50値は,各々9.64,26.45,4.41,11.91mg/kg,p.o.であった).AP(30mg/kg,p.o.)は,LPS静注後の体温上昇と脳脊髄液中のPGE2量の増加を著明に抑制した.AP(30mg/kg,p.o.)において,投与2時間後の脳脊髄液中のAP量は2.86×10-6(1.15~4.57×10-4)Mであった.その濃度はPG生合成を阻害するにはかなり低いものであった.LP(1~8単位)およびAA(10~100μg)の大槽内投与により用量依存的な発熱反応がみられた.AP(30mg/kg,p.o.)は,LPの大槽内投与による発熱の用量反応曲線を右方に平行移動させたが,AAによる発熱に対しては何ら影響を及ぼさなかった.以上の結果より,APは相対的に強い解熱作用を有すること,その解熱作用が,従来非ステロイド性抗炎症剤の解熱作用機序として考えられてきた中枢でのシクロオキシゲナーゼ阻害によるものではなく,中枢でのLPとの競合によることが示唆された.
  • 前田 悦子, 藤吉 俊夫, 植松 利男
    1991 年 98 巻 6 号 p. 467-474
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    非ステロイド性抗炎症剤alminoprofen(AP)の尿酸塩誘発炎症に対する作用を,各種の実験的痛風モデルを用いて検討した.AP(3~30mg/kg,p.o.)は,尿酸塩誘発ラット足蹴浮腫を用量依存的に抑制した.AP(3~30mg/kg,p.o.)は,尿酸塩誘発ラット胸膜炎における浸出液の貯留,総白血球数とPGE2産生を用量依存的に減少させた.AP(0.3~10mg/kg,p.o.)は,尿酸塩誘発ラット関節炎症性痙痛に対し用量依存的な鎮痛作用を示した.AP(10-5~10-3M)は,10-4M以上で尿酸塩によるモルモット好中球からのβ-glucllronidaseの遊離を80%以上抑制した.AP(10-5~10-3M)は,尿酸塩によるモルモット好中球からのO2-の産生を抑制しなかった.AP(10-6~10-4M)は,尿酸塩誘発モルモット好中球由来の遊走因子による好中球自身の遊走を用量依存的に抑制した.AP(10-6~10-4M)は,尿酸塩によるラット腹腔内由来の白血球からのPGE2の産生を用量依存的に抑制した.以上の結果から,APは尿酸塩誘発炎症に対し,強い抗炎症・鎮痛作用を有すること,その作用機序としてPGE2の生合成阻害と白血球遊走抑制ならびに白血球からのライソゾーム酵素遊離抑制の複合的な薬理効果が示唆された.
  • 田中 政巳
    1991 年 98 巻 6 号 p. 475-481
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    intrauterine contraceptive device(IUD)の作用機序の解明を目的として,IUD装着ラットの卵巣ステロイドホルモンの変化と避妊機序との関連を検討した.59~61日齢のWistar系雌ラットにIUDとしてポリエチレンチュ―ブ(外径:1.9mm,内径:1.4mm,長さ=5.0mm)を両側の子宮角に装着し,対照には盲検手術を実施した.さらに,各半数の動物にインドメタシン1mgを手術30日後と31日後の2回投与した.動物は2回目投与の1時間後に断頭放血致死させた.IUD装着によって性周期と排卵数に変化なかったが,妊孕率は33%であり,子宮には肥厚をともなう重量増加が見られた.また,卵巣テストステロン(To)が有意高値,エストラジオ―ル(E2)とE2/プロゲステロン(Po)比が高値傾向を示した.しかし,これらIUD装着による増加はインドメタシン投与で対照のレベルにまで低下しなかった.今回の結果から,IUD装着は卵巣のTo増加および,E2増加によるエストロゲンとプロゲスチンのバランスの乱れを生じることが明らかとなった.以上から,IUD装着は卵巣ステロイドホルモンの変動を起こし,Toの増加による受精卵発育の遷延と,E2/Po比の増加による子宮内膜の着床準備の乱れを生じて受精卵の着床を阻止すると考えられた.また,IUDによる卵巣ステロイドホルモンの変化は,卵巣ステロイド産生を調節するプロスタグランジン以外の未知子宮因子による可能性が考えられた.
  • 押尾 茂, 矢崎 恒忠, 梅田 隆, 尾崎 覚, 大川 功, 田島 鉄弥, 山田 武, 毛利 秀雄
    1991 年 98 巻 6 号 p. 483-490
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    精巣局所にX線(3.64Gy)を照射して作製した実験的造精機能障害マウスに,照射翌日よりmecobalamin(CH3-B12)を1日1回,週6回,8週間経ロ投与した.なお,対照群には生理食塩液を同様に投与した.対照群の体重および副生殖腺(精嚢腺,凝固腺,前立腺)重量はX線非照射群のそれらとほぼ同じであったが,照射4週間後と6週間後の精巣および精巣上体重量は著しく減少した.同時に,精巣の精細管直径の萎縮が観察され,精巣上体尾部の精子性状(精子数,精子運動率,精子奇形率)の悪化が認められた.これに対し,CH3-B12を投与すると,体重,精巣重量および精巣上体重量にはほとんど影響しないが,1mg/kg投与群で精細管直径の増大および精子性状の改善が認められた.これらの結果より,CH3-B12はX線照射によって惹起した造精機能障害を改善することが示され,CH3-B12は造精機能を亢進する効果があると考えられた.
  • 町田 尚美
    1991 年 98 巻 6 号 p. 491-501
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    幼若期(<2週齢)および成熟期(>16週齢)モルモットの気管鎖標本を用いて,電気刺激あるいは外来性acetylcllolineやcarbacholによる収縮反応に対する低温の影響を検討した.幼若モルモットの気管筋において,37°Cから20°Cへ栄養液温度を低下させると,carbachol(0.01~3μM)収縮は抑制されたが,壁内コリン作動性神経刺激(0.05~2Hz,0.6msec,150mA)効果やacetylcholine(0.01~3μM)収縮は逆に増強された.carbacholの-logEC50値は低温により有意な変化を示さなかった.physostigmine(0.05μM)を前処置しておくと,コリン作動性神経刺激やacetylcholine(0.01~3μM)による収縮は増強されたが,栄養液温度を低下してもそれ以上の増強は認められなかった.―方,成熟モルモットの気管筋において,コリン作動性神経刺激による収縮はpllysostigmine前処置によって増強されたが,さらに栄養液温度を低下すると逆に抑制された.幼若および成熟モルモットから摘出した気管筋のacetylcholinesterase活性を組織化学的に比較してみると,幼若モルモットの方が高い傾向にあった.以上の実験結果より,幼若モルモット気管筋における低温によるコリン作動性神経刺激や外来性acetylcholineによる収縮反応の増大は,組織内acetylcholinesterase活性が低温により抑制されたためであると考えられる.
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