各種寄生蠕虫ならびに摘出宿主臓器標本の自動運動に及ぼすクララアルカロイド,N-methylcytisine(N-MC)およびmatrine(Mat)の影響を検討した.1)広東住血線虫の自動運動はN-MC(1.2×10
-6~1.2×10
-4M)で収縮的,一方,Mat(10
-5~10
-4M)では弛緩的作用を受けた.2)瓜実条虫および肝蛭の自動運動はN-MC(1.2×10
-4~1.2×10
-3M)で弛緩的,一方,Mat(10
-4~10
-3M)では収縮的作用を受けた.3)日本住血吸虫の自動運動はN-MC(10
-3M)およびMat(8×10
-4M)で影響を受けなかった.4)摘出カエル腹直筋のguanidine(2.5×10
-3M)による攣縮(twitch response)に対し,N-MC(1.2×10
-5~2.4×10
-5M)およびMat(10
-4M)はともに促進的に作用した.5)摘出マウス回腸に対し,N-MC(1.2×10
-5~1.2×10
-4M)は抑制的,一方,Mat(10
-4~10
-3M)は促進的に作用した.以上の如く,摘出カエル腹直筋以外の標本では,N-MCとMatとは定性的に異なった作用を示した.さらに,両アルカロイドと各種神経薬理学的薬物の作用との関係から,N-MCおよびMatが神経薬理学的機序を介して作用していることが推察された.
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