日本薬理学雑誌
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79 巻, 2 号
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  • 大宮 俊憲, 柴田 治, 前村 俊一, 丹羽 正美, 尾崎 正若, 小副川 芳夫, 有留 義哲, 土屋 涼一
    1982 年 79 巻 2 号 p. 77-84
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    副腎髄質dopamine(DA)の遊離および遊離調節機構を解明するために,急性脱血犬を作成し副腎静脈血を直接採取して,DA遊離速度をnorepinephrine(NE)およびepinephrine(E)遊離速度と共に測定し検討した.実験には成犬(雄)を用い,大腿動脈より,急性脱血(40ml/kg/20分)を行い,90分まで低血圧を持続させた後,90分後より還血を行った.脊髄切断犬では,脊髄切断後に急性脱血(8~10ml/kg/10分)を行った.plasma中DA,NEおよびE濃度は,経時的にGaschromatography(GLC-ECD)で分離定量した.平均動脈圧は,コントロール値で120.7mmHgであったが,急性脱血により30分後で44mmHgと下降し,90分後で62.7mmHgと低血圧が持続し,90分後よりの還血により120分後で105mmHgと回復した.副腎静脈血中のDA遊離速度は,コントロール値で0.22ng/kg/min,急性脱血により30分後で2.4ng/kg/min,90分後で10.7ng/kg/minと増加し,還血により120分後で1.1ng/kg/minと減少した.NEおよびE遊離速度はそれぞれコントロール値で3.4および13.7ng/kg/min,急性脱血による30分後で34.7および257.8ng/kg/min,90分後で89.7および361.4ng/kg/minと増加し,還血により120分後で7.4および41.8ng/kg/minと減少した.同時に測定した動脈血中DA濃度は,急性脱血後70分で1ng/ml,90分で1.5ng/mlであった.脊髄切断犬では,急性脱血後副腎静脈血中のDA,NEおよびE遊離速度は増加しなかった.これらの結果より,副腎髄質DAの遊離は,急性脱血により著明に増加し,その増加傾向はNEおよびEの増加傾向より遅れる傾向を示し,そして,副腎DAの遊離は主として中枢性の遊離調節機構に支配されていることが考えられた.
  • 坂本 博彦, 井上 和子, 村田 保, 河野 茂勝, 大幡 勝也
    1982 年 79 巻 2 号 p. 85-92
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    clonidineおよびguanethidineに類似した化学構造を有する新規降圧薬guanabenzの抗侵害刺激作用をはじめとする2,3の薬理作用を,clonidineおよびmorphineと比較検討した.1)guanabenzの抗侵害刺激作用は,morphineとほぼ同等あるいはより強力であり,clonidineは,guanabenzよりもさらに強力であった.2)tail flick assay(マウスs.c.)において,morphineの抗侵害刺激作用は,周知の如く,naloxoneにより著明に拮抗されたが,guanabenzおよびclonidineの作用は,naloxoneの影響を受けず,yohimbineにより有意に抑制された.しかし,phenoxybenzamineの影響は認められなかった.3)モルモット摘出回腸縦走筋標本の経壁刺激による収縮をguanabenz,clonidineおよびmorphineは抑制した.morphineの収縮抑制作用は,抗侵害刺激作用と同様,naloxoneで拮抗されたが,guanabenzおよびclonidineの収縮抑制作用は,naloxoneの影響を受けず,phentolamimeおよびyohimbineで拮抗された.しかし,phenoxybenzamineの影響は認められなかった.4)guanabenzおよび低用量のclonidineは,ラットの自発運動,特に探索行動を著明に抑制し,その作用は,yohimbine前処置により拮抗されたが,phenoxybenzamineの影響は認められなかった.一方,高用量のclonidineは,自発運動亢進作用を示し,その作用は,yohimbineの影響を受けず,phenoxybenzamineにより拮抗された.以上の成績より,guanabenzのmorphineを凌ぐ強力な抗侵害刺激作用は,回腸縦走筋標本による検討ならびに自発運動抑制作用に関する検討の結果が示す如く,clonidineと同様,opiate receptorを介する作用ではなく,α2-adrenoceptorを介する作用であることが示唆された.
  • 寺田 護, 佐野 基人, 石井 明, 記野 秀人, 福島 清吾, 野呂 忠敬
    1982 年 79 巻 2 号 p. 93-103
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    各種寄生蠕虫ならびに摘出宿主臓器標本の自動運動におよぼすビャクブアルカロイド,tuberostemonine(TS)の影響を検討した.1)TS(6.7×10-6~2×10-5M)により広東住血線虫の自動運動は弛緩性麻痺作用を受けた.2)TS(6.7×10-5M)により瓜実条虫および肝蛭の自動運動は収縮的作用を受けた.3)日本住血吸虫の自動運動はTS(6.7×10-5~4.8×10-4M)で影響を受けなかった.4)TS(6.7×10-5M)により摘出マウス回腸の自動運動は弛緩性麻痺作用を受けた。5)摘出カエル腹直筋標本のguanidine(2.5×10-3M)による攣縮(twitch response)はTS(6.7×10-7~6.7×10-6M)で促進的影響を受けた.6)すべての標本において,TSとeserineとは拮抗的に作用した.7)TSとstrychnineは,寄生虫標本では同一方向に作用し,一方,摘出マウス回腸およびカエル腹直筋標本では拮抗的に作用した.これらの結果は,従来,ビャクブ根の煎汁について経験的に知られていた抗寄生虫作用などの各種薬理作用に対し薬理学的根拠の一端を与えるものと考えられる.
  • 寺田 護, 佐野 基人, 石井 明, 記野 秀人, 福島 清吾, 野呂 忠敬
    1982 年 79 巻 2 号 p. 105-111
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    各種寄生蠕虫ならびに摘出宿主臓器標本の自動運動に及ぼすクララアルカロイド,N-methylcytisine(N-MC)およびmatrine(Mat)の影響を検討した.1)広東住血線虫の自動運動はN-MC(1.2×10-6~1.2×10-4M)で収縮的,一方,Mat(10-5~10-4M)では弛緩的作用を受けた.2)瓜実条虫および肝蛭の自動運動はN-MC(1.2×10-4~1.2×10-3M)で弛緩的,一方,Mat(10-4~10-3M)では収縮的作用を受けた.3)日本住血吸虫の自動運動はN-MC(10-3M)およびMat(8×10-4M)で影響を受けなかった.4)摘出カエル腹直筋のguanidine(2.5×10-3M)による攣縮(twitch response)に対し,N-MC(1.2×10-5~2.4×10-5M)およびMat(10-4M)はともに促進的に作用した.5)摘出マウス回腸に対し,N-MC(1.2×10-5~1.2×10-4M)は抑制的,一方,Mat(10-4~10-3M)は促進的に作用した.以上の如く,摘出カエル腹直筋以外の標本では,N-MCとMatとは定性的に異なった作用を示した.さらに,両アルカロイドと各種神経薬理学的薬物の作用との関係から,N-MCおよびMatが神経薬理学的機序を介して作用していることが推察された.
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