日本薬理学雑誌
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102 巻, 6 号
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  • 福永 浩司
    1993 年 102 巻 6 号 p. 355-369
    発行日: 1993年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    Both Ca2+/calmodulin-dependent protein kinase II (CaM kinase II) and protein kinase C (PKC) have been implicated as possible candidates for contributing to the induction of long-term potentiation (LTP) in the hippocampus. The induction of LTP in the CA1 region of the hippocampus, an event which requires postsynaptic Ca2+ influx through NMDA-type glutamate receptors, is blocked by calmodulin antagonists and inhibitors of CaM kinase II and PKC. In the present study, we describe the activation characteristics of CaM kinase II and PKC through the stimulation of glutamate receptors and regulation of the phosphorylation of substrates for CaM kinase II in the hippocampus. In cultured rat hippocampal neurons, glutamate elevated the Ca2+-independent activity of CaM kinase II through autophosphorylation, and this response was blocked by specific antagonists of the NMDA receptor. In addition, glutamate stimulated the translocation of PKC from the cytosol to the membrane fraction through the metabotropic glutamate receptor. In the experiments with 32P-labeled cells, the phosphorylation of microtubule-associated protein 2 (MAP2) and synapsin I was stimulated by the exposure to glutamate. Finally, we demonstrated that high, but not low, frequency stimulation applied to two groups of CA1 afferents in the slices resulted in the induction of LTP with concomitant long-lasting increases in the Ca2+-independent and total CaM kinase II activities as well as the autophosphorylation. It could be blocked by preincubation of the slices with NMDA-receptor antagonist. These results suggest that glutamate can activate CaM kinase II through NMDA receptors in the induction of LTP and in turn stimulates the phosphorylation of target proteins such as MAP2 and synapsin I.
  • ―カニューレ挿入法―
    千葉 茂俊
    1993 年 102 巻 6 号 p. 371-378
    発行日: 1993年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    A new perfusion technique for isolated vascular preparations is described. The cannula inserting method developed by Hongo and Chiba (J. Pharmacol. Methods 9, 83, 1983) and modified by Tsuji and Chiba (Japan. J. Pharmacol. 34, 95, 1984) is useful for observing vascular reactivity in perfused, isolated vessels. In this method, 1) applied substances act only from the intraluminal side; 2) vascular responses to substances, not only constriction but also dilatation in non-treated preparations, are readily obtainable by a single injection of active substances; and 3) the vascular reactivity is reproducible over 7-8 hr at 37 °C. Our modified cannula inserting methods are slso described.
  • 乾 賢一, 松田 晃彦, 茶木 啓孝, 牧田 市郎, 国場 幸史, 片岡 美紀子, 佐藤 誠
    1993 年 102 巻 6 号 p. 379-388
    発行日: 1993年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    門脈下大静脈吻合(PCA)ラットを用い,MHS-G投与による酢酸アンモニウム負荷時の脳波異常の改善および脳内アミン代謝異常の改善効果について市販肝不全用経口栄養剤(SF-1008C)と比較検討した.MHS-G投与(0.68g/kg,p.o.)は精製水投与に比べ,アンモニア負荷時の脳波振幅の縮小や周波数解析におけるδ波占有率の増加およびβ波占有率の減少という異常脳波の出現を有意に抑制し,脳内アミン代謝においてもDOPACおよびTrpの代謝異常を改善した.さらに,血漿および脳内遊離アミノ酸中の分岐鎖アミノ酸および芳香族アミノ酸パターンの乱れを改善するとともに,血漿アンモニア濃度を有意に低下させた.以上の結果より,MHS-Gは肝不全時に認められる種々の異常を是正することが明らかになった.
  • 藤崎 秀明, 桶谷 清, 柴田 寿, 村上 学, 藤本 昌俊, 若林 庸夫, 山津 功, 竹口 紀晃
    1993 年 102 巻 6 号 p. 389-397
    発行日: 1993年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    ブタ言粘膜より調製したH+,K+-ATPase及びウサギ胃腺標本での胃酸分泌に対する(±)-sodium 2-[{4-(3-methoxypropoxy)-3-methylpyridin-2-yl}methylsulfinyl]-1H-benzimidazole(E3810)の作用について検討した.E3810はH+,K+-ATPase活性を濃度依存的に阻害し,そのIC50値は2.6×10-7Mであり,オメプラゾール(OPZ)に比べ約10倍活性が強かった.またE3810のH+,K+-ATPase阻害活性は,インキュベーションメジウムのpHに依存し,酸性条件下で強かった.バリノマイシン及びMg・ATP存在下でプレインキュベーションしたとき,E3810のH+,K+-ATPase阻害活性は,Mg・ATP非存在下でプレインキュベーションしたときのE3810のH+,K+-ATPase阻害活性より約1000倍強かった.E3810,OPZによって阻害されたH+,K+-ATPase活性はセファデックスG-50カラムでのゲルろ過による洗浄によって回復しなかったが,ジチオスレイトール(DTT)添加により回復した.ウサギ胃腺標本での低用量(3×10-7Mおよび5×10-7M)のE3810による胃酸分泌抑制作用は経時的に回復した.OPZにはこのような作用は認められなかった.以上のことより,E3810はOPZより強力なH+,K+-ATPase阻害剤であり,その作用はOPZと同様にプロトネーションで活性化を受けH+,K+-ATPaseのSH基を阻害することによって抑制するものと推察される.また,ウサギ胃腺標本でのE3810による酸分泌抑制作用の持続は短いものと推察された.
  • 鈴木 康之, 早川 由紀, 尾山 力, 磯野 智子, 大宮 雄司, 池田 孔己, 浅見 明俊, 野口 将道
    1993 年 102 巻 6 号 p. 399-404
    発行日: 1993年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    ツムラ修治附子末(TJ-3021)は,附子を一定条件で減毒加工(修治)した医療用医薬品であり,種々の疾患による痛みに対して鎮痛のために用いられている.附子および修治附子末の鎮痛活性成分のひとつとみられているメサコニチンは,修治によりその殆どが加水分解を受けベンゾイルメサコニン(BM)に変化する.筆者らは修治ブシ末中にメサコニチンに比べ非常に多く含まれるBMに注目し,BMの鎮痛作用について,TJ-3021およびモルヒネとの比較をマウスおよびラットを用いて行った.試験法として,Hikinoらによりその鎮痛効力を報告されている酢酸ライシング法の他,反復低温ストレス(repeated cold stress:RCS)による痛覚過敏モデルを用いての鎮痛作用に関する結果を得たので報告する.これらの鎮痛試験においてBMは,酢酸ライシング法では,10mg/kgの経口投与で有意な鎮痛作用を示し,Hikinoらの報告とほぼ合致するものであり,その鎮痛活性はTJ-3021の300mg/kg経口投与と同程度であった.RCS法ではBMの30mg/kg経口投与で有意な鎮痛作用を示し,その鎮痛活性はTJ-3021の1000mg/kg経口投与と同程度であった.これらの結果よりRCSによる痛覚過敏に対するTJ-3021の鎮痛作用にBMの作用が一部寄与していると推察された.
  • 渡辺 実
    1993 年 102 巻 6 号 p. 405-411
    発行日: 1993年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    ペントバルビタールの麻酔持続時間(睡眠時間)と血漿中濃度の推移及び肝薬物代謝機能を顎下腺摘出群と対照群とで比較した.Donryu系雄性ラットの顎下腺を60日齢に摘出し,摘出後10日,23日及び43日目に,それぞれ,ペントバルビタール(30mg/kg)を腹腔内投与し麻酔持続時間を測定した.また,顎下腺摘出43日後(103日齢)にペントバルビタール(30mg/kg)を腹腔内投与し,血漿中ペントバルビタール濃度の経時的推移と肝薬物代謝酵素活性に対する影響を検討した.その結果ペントバルビタールによる麻酔持続時間は顎下腺摘出により延長し,この効果は術後10日目(33.8%延長)より出現し23日後(40.3%)及び43日後(30.5%)でも認められた,次に,血漿中ペントバルビタール濃度は投与10分後において,顎下腺摘出群(15.94±0.58μg/ml)が対照群(14.21±0.59μg/ml)に比べ高値傾向(P<0.1),投与15分後においては,顎下腺摘出群(14.28±0.73μg/ml)が対照群(11.36±0.47μg/ml)に比べ有意(P<0.01)な高値を示した.肝ミクロゾーム中のチトクロームP-450含量は,両群間に有意差が認められなかったがチトクロームb5含量は,顎下腺摘出群が対照群に比べ有意な高値を示した.また,アミノピリン脱メチル化酵素(APD)及びアニリン水酸化酵素(ALH)活性は顎下腺摘出群が対照群に比べ有意高値を示したがチトクロームc還元酵素活性は両群間に有意差が認められなかった.一方,ヘム分解律速酵素であるヘムオキシゲナーゼ(HO)活性は顎下腺摘出群で増加傾向を示したものの両群間に有意差が認められなかった.しかし,ヘム合成律速酵素のδ-アミノレブリン酸合成酵素(δ-ALAS)活性は顎下腺摘出群が対照群の51%にまで有意(P<0.01)に低下した.以上の結果から,顎下腺は肝臓薬物代謝酵素活性に影響を与える器官であり,そのことによりペントバルビタールの体内動態が変化し,その結果顎下腺摘出後ペントバルビタールの麻酔持続時間が延長した可能性が示唆された.
  • 鬼頭 剛, 田辺 正雄, 寺下 善一
    1993 年 102 巻 6 号 p. 413-420
    発行日: 1993年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    麻酔犬における短時間の全脳完全虚血―再潅流モデルにおいて脳血流の低潅流および矢状静脈洞内のトロンボキサンA2(TxA2)の増加に対するTxA2合成酵素阻害薬,CV-4151の作用を検討した.イヌは対照,非治療,CV-4151(0.3及び1.0mg/kg,i.v.)投与及びOKY-046(10mg/kg,i.v.)投与の5群に組分けた.非治療群では,5分間の完全脳虚血―再潅流後,20~30分間持続する反応性脳充血を生じ,その後血流量は漸減し,再開2時間後には虚血前の約77%の値であった.さらに,再開2時間後の局所大脳皮質の水分含量は78.15±0.21%と対照群の76.70±0.07%に比して有意(P<0.01)に上昇していた.矢状静脈洞内のTxB2の値は虚血前値(133±114pg/ml)に比して,血流再開30分後の値は8~10倍にまで増加し,120分後も5倍以上の高値を維持した.CV-4151の0.3mg/kg(i.v.)では,虚血―再潅流後の脳循環の低潅流を軽度抑制したが,大脳皮質の水分含量には作用を示さなかった.1.0mg/kg(i.v.)の用量では,脳の虚血後低潅流をほぼ完全に抑制し,皮質の水分含量の増加を有意に抑制した(76.95±0.16% vs 78.15±0.21%,P<0.01).さらに,再潅流後の矢状静脈洞内のTxB2の増加をほぼ完全に抑制すると共に,6-keto PGFの増加を示した.OKY-046(10mg/kg,i.v.)は,虚血後の低潅流と皮質の水分含量の増加に有意な影響を与えなかった.これらの成績からCV-4151は,脳虚血後のTxA2の生成を抑制することにより,虚血―再潅流後の脳循環の低潅流を改善することが示唆された.全脳完全虚血―再潅流後の脳血流量の持続的な減少を抑制することは,虚血によって引き起こされる神経脱落症状の進展を抑制するために重要なことと考えられる.
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