日本薬理学雑誌
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95 巻, 4 号
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  • 猪木 令三
    1990 年 95 巻 4 号 p. 139-147
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    This review describes: recent findings about the peripheral site of action and mechanism of the algesic action of narcotic and nonnarcotic analgesics. Special attention was given to the stimulatory or inhibitory actions of opiates and opioid peptides on the polymodal receptor of the sensory afferent fibers. Bradykinin, a pain producing substance, augmented the production of opioid peptides, for example, methionine and leucine enkephalins in in vitro and in vivo experiments. It was demonstrated that a pharmacological feed back reaction, the antinociceptive response, took place in the peripheral site of the primary afferent fibers.
  • 竹内 久米司, 伊藤 幸次, 並川 さつき
    1990 年 95 巻 4 号 p. 149-157
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    I-N型のアレルギー反応に対する大豆粕乾留タール(Glyteer:GL)の外用適用による効果を,ステロイド(SAID)および非ステロイド(NSAID)系抗炎症薬と比較検討した.1)I型の48時間homologous PCA反応(ラット)に対して,5%GLは有意な抑制作用を示した.その作用は0.12%betamethasone 17-valerate(BV)と同程度であり,5%bufexamac(BM)および1%indomethacin(ID)では作用が認められなかった.2)また,その抑制機序の一つとして,肥満細胞の脱穎粒反応抑制作用を有することが,病理組織学的に認められた.3)II型のreversed cutaneous anaphylaxis反応(ラット)に対して5%GLは効果を示さなかったが,5%BM,1%IDおよび0.12%BVではいずれも有意な抑制作用が認あられた.4)III型のdirect passive Arthus反応(ラット)に対して5%GL,5%BMおよび1%IDでは効果は認められなかったが,0.12%BVでは有意な抑制が認められた.5)IV型のoxazolone誘発接触性皮膚炎(マウス)に対しGLは0.2%,1%および5%でいずれも有意な抑制作用を示した.また,5%GLの作用は0.12%BVには及ぼないものの,5%BMとほぼ同程度であり,1%IDよりも強い抑制を示した.このようにI-IV型のアレルギー反応に対するGLの作用態度は,SAIDおよびNSAIDとも異なることが認められた.
  • 橋本 光正, 枝浪 謙一, 内藤 聡, 佐野 和珠, 伏見 弘子, 後藤 正義
    1990 年 95 巻 4 号 p. 159-166
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    WP-833の代謝物である3'-(1H-tetrazol-5-y1)oxanilic acid(MTCC),3-(1H-tetrazol-5-yl)aniline(MTA)および3'-(1H-tetrazol-5-yl)acetanilide(MTAA)のラットおよびモルモットhomologous passive cutaneous anaphylaxis(PCA)および腹腔肥満細胞または肺切片からのhistamineあるいはSRS-A遊離におよぼす影響について検討した.MTCCはラットおよびモルモットhomologous PCA反応に対し,静脈内投与において用量依存的な抑制を示し,その抑制作用はWP-833とほぼ同程度であった.また,腹腔肥満細胞および肺切片からの抗原一抗体反応によるhistamineあるいはSRS-A遊離に対しても抑制作用を示し,その作用は,SRS-A遊離に対しより強かった.MTAおよびMTAAもラットおよびモルモットhomologous PCA反応抑制作用を示すものの,作用発現に要する用量はWP-833に比し高く,腹腔肥満細胞からの抗原-抗体反応によるhistamine遊離に対しても10-4g/mlと高濃度においてのみ抑制を示すY'とどまり,モルモット肺切片からのhistamineおよびSRS-A遊離に対しては明らかな抑制を示さなかった.よって,抗アレルギー作用発現にはoxanilic acid部が重要な役割を有することが推察された.また,MTCCは経口投与においてもラット48hr homologous PCAを抑制したが,WP-833と同等の効果発現に要する用量はWP-833の約6倍であり,WP-833の消化管からの吸収にbutyl ester部位が重要であることが示唆された.以上の結果より,MTCCはWP-833とほぼ同程度の活性を有しているが消化管からの吸収が悪いこと,MTAおよびMTAAの活性はWP-833に比し低いことが明らかとなった.また,WP-833経口投与時,血中ではMTA及びMTAAはごく少量しか検出されておらず,薬理効果は主としてMTCCによると推察された.
  • 田村 智昭, 谷口 登志悦, 青城 優, 脇 功巳
    1990 年 95 巻 4 号 p. 167-175
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    マウスを用いた低酸素性脳障害モデルにおける生存時間の延長を指標に,中枢性鎮痛薬eptazocineの脳保護効果について検討した.KCN(3mg/kg,i.v.)負荷致死試験においてeptazocine 1,3,10mg/kgは生存時間を13.8,21.5,45.1%と用量依存的に延長し,この効果はnaloxone(5mg/kg)によって完全に抑制された.オピオイドκ-アゴニストのEKC,U50,488Hも有意な効果を示したが,その効力はeptazocineと比較すると弱かった,eptazocine(3,10mg/kg),EKC(10mg/kg)は減圧(190mmHg)負荷致死試験においても有意な脳保護効果が認められた.しかし,morphine(5mg/kg),pentazocine(10mg/kg)は逆に生存時間の短縮を示した.eptazocineの効果はnaloxone(5mg/kg),atropine(0.5mg/kg)いずれの前処置によっても減弱され,その作用態度はphysostigmine,diazepamの場合とは異なっていた.さらに,eptazocine(1mg/kg)とphysostigmine(0.075mg/kg)を併用した場合には相乗となった.一方eptazocine(10mg/kg)の脳保護効果は,オピオイドκ-受容体選択的なアンタゴニストMR-2266によってnaloxoneの1/5量で拮抗された.以上の結果から,eptazocineはその鎮痛用量でオピオイド炉受容体を介して脳保護効果を惹起し,その機序に脳ACh神経系の賦活化が関与する可能性が示唆された.
  • 木戸 秀明, 内田 康美, 中村 文隆, 杉本 恒明
    1990 年 95 巻 4 号 p. 177-184
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    緩徐かつ持効性の降圧作用を有する新規Ca拮抗薬AEOO47の脳血管拡張作用を麻酔イヌを用いて脳血管造影により検討した.AEOO47を30μglkgの濃度で静脈内投与することにより,椎骨動脈血流量は投与10,30および60分後にそれぞれ投与前に比し91,139および132%増加し,その作用は60分以降も持続した.このとき脳支配領域(脳底動脈・後交通動脈・中大脳動脈・内頸動脈)の血管径は部位の区別なく投与後10~60分間を通じておよそ30%拡張した.endothelin100pmol/kgを椎骨動脈内に注入すると,脳の細動脈血管が収縮し血流の減少をみたが,AEOO47静脈内投与により脳血流量ならびに脳血管径は有意に増大した.さらにAEOO47前投与下ではendothelinによる脳細動脈の収縮は予防された.以上のことから,AEOO47は脳血管に対して強力かつ持効性の拡張作用を有し,脳血管攣縮を寛解あるいは予防する可能性があると考えられた.
  • 内田 勝幸, 西村 直行, 三崎 則幸, 五十嵐 康子, 小林 美香, 河野 修
    1990 年 95 巻 4 号 p. 185-190
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    ラット培養胃粘膜細胞の増殖に対する抗潰瘍薬およびPGE2の効果を3H-thymidineの取り込みを指標に検討した.fetal bovine serum(FBS)の代わりに人工血清であるULTROSER®Gを用いた場合,1~4%の濃度範囲で濃度依存的に3H-thymidineの取り込みは増加し,培養開始36時間目にピークを示した.また,その取り込み量は10%FBSを用いた場合よりも多かった.そこで,2%ULTROSER®Gを用い36時間目に薬物効果を検討した.aldioxa,cetraxate HCl,cimetidine(10-7~10-5M)およびPGE2(10-8~10-6M)は単独ではいずれも増殖促進効果を示さなかった.indomethacinは0.35~1.41×10-3Mの用量範囲で濃度依存的に増殖抑制効果を示した.aldioxa10-5M(P<0.01),cetraxate HCl 10-5M,PGE2 10-8Mおよび10-6M(P<0.05)はindomethacin0.5×10-3M(ほぼ50%の抑制用量)の増殖抑制に対しそれぞれ有意な拮抗作用を示したが,cimetidineは有意な拮抗作用を示さなかった.したがって,胃粘膜培養細胞を用いることで細胞増殖に対する薬物の影響を評価することが可能と考えられた.
  • β-遮断作用,内因性交感神経刺激様作用,血管拡張作用並びに降圧作用
    三浦 朗, 木村 豊, 井上 吉郎, 松崎 卓士, 越智 誠支, 浜田 孝三, 林 誠治, 田村 優, 狩野 さゆり, 木村 喜代史
    1990 年 95 巻 4 号 p. 191-200
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    celiprololのβ-遮断作用とその心選択性,内因性交感神経刺激様作用(ISA),血管拡張作用並びに降圧作用を検討した.(1)celiprololは摘出モルモット右心房,乳頭筋および気管筋標本Yr:おけるisoproterenolの陽性変時,変力および平滑筋弛緩作用に拮抗し,そのpA2値は8.03,7.98および6.43であった.(2)celiprololは生体位イヌにおけるisoproterenolの心収縮力増強,心拍数増加作用を用量依存性に強く抑制し,その最大抑制は83.1および84.8%に達したが,拡張期血圧降下作用に対する最大抑制は16.8%に過ぎなかった.(3)celiprololは正常およびreserpine処置モルモットから摘出した右心房標本において陽性変時作用を示した.reserpine処置モルモットの左心房標本において陽性変力作用を示した.正常およびreserpine処置モルモットの気管筋標本を濃度依存性に弛緩させた.celiprololの陽性変時および気管筋弛緩作用はpropranolol前処置により拮抗された.(4)celiprololは摘出ラット大腿動脈標本のmethoxamine収縮を濃度依存性に弛緩させ,その濃度-作用曲線はpropranolol前処置により右方平行移動した.(5)無麻酔無拘束SHRにおいて有意かつ持続性の降圧作用を示したが,心拍数には影響しなかった.(6)以上の成績からceliprololは高い心選択性とISAを有するβ-遮断薬であることが示され,そのISAが血管拡張作用および降圧作用に主として関与していることが考えられた.
  • 心選択性β―遮断薬Celiprololのα2-受容体遮断作用
    三浦 朗, 鵜飼 洋司郎, 松崎 卓士, 石間 強, 林 誠治, 狩野 さゆり, 木村 喜代史
    1990 年 95 巻 4 号 p. 201-208
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    心選択性β-遮断薬celiprololのα-受容体遮断作用を検討した.(1)celiprololの10-5~10-4Mは摘出ラット尾動脈におけるα1-刺激薬phenylephrine収縮に影響せず,α2-刺激薬UK-14304収縮には競合的に拮抗した(pA2=4.95).(2)摘出ラット輸精管標本の経壁電気刺激(TS)による単収縮はTTX10-7Mにより殆ど消失した.clonidineはTTX-感受性の収縮を濃度依存性に抑制した,celiprolol 10-6~3×10-5Mおよびprazosin 10-8Mはclonidineの作用に殆ど影響しなかったが,yohimbine 10-8Mは濃度作用曲線を右に平行移動させた.(3)celiprolol 10-6~3×10-5Mは〔3H〕-norepinephrine負荷輸精管標本からのTSに応ずる3H-流出を僅かに増加させたが有意ではなかった.yohimbine 10-7Mは3H-流出を有意に増加させ,TTX10-7Mおよびbretylium3×10-5Mは3H-流出をほぼ完全に抑制した.(4)propranolol 3mg/kg+prazosin 0.1mg/kg,i.v.処置pithedratにおいて,celiprolol 30,100mg/kg,i.v.およびyohimbine 0.1~1mg/kg,i.v.はclonidineの昇圧作用を抑制した.(5)以上の成績からceliprololはpostsynaptic α2-遮断作用を有するが,presynaptic α2-受容体に対しては殆ど作用しないことが示唆される.
  • 心選択性β―遮断薬Celiprololの心血管および腎機能に対する作用並びに抗不整脈作用
    越智 誠支, 木村 豊, 松崎 卓士, 林 誠治, 本永 朝彦, 田中 充士, 福井 久司, 山崎 晃, 松村 浩二, 三浦 朗, 木村 喜 ...
    1990 年 95 巻 4 号 p. 209-227
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    celiprololの心血行動態,心筋酸素消費量,血流量および腎機能に及ぼす影響並びにその抗不整脈作用について検討し,以下の結果を得た.morphine-α-chloralose-urethane麻酔開胸犬では,celiprolol(0.03~3mglkg,i.v.)は左心室内圧の一次微分の最大値および心拍出量並びに分時心仕事量を用:量依存的に低下させたが,その程度はpropranololやatenololに比べて小さかった.pentobarbital-barbital麻酔開胸犬では,celiprolol(0.01mg/kg,i・v.)による心筋酸素消費量の低下(-10.5%)はpropranolol(0.01mg/kg,i.v.)の場合と同程度であった.celiprolol(0.03~3mg/kg,i.v.)は麻酔犬の大腿動脈血流量を投与直後に増加させた.総頸動脈血流量はlmg/kg投与時に増加した.propranolol(1~3mg/kg)投与により総頸動脈,大腿動脈および冠動脈血流量が投与直後に一過性に増加し,その後減少するという二相性の反応がみられたが,それ以下の用量では投与直後の一過性の増加は見られなかった.celiprololは麻酔犬の血漿レニン活性に殆ど影響を与えず,1mg/kg以上で尿量および電解質(Na+,Cl-)排泄量の減少を,10mg/kgでNa+再吸収率の上昇を惹起した.celiprololはhalothane-adrenaline不整脈(犬)およびouabain不整脈(ウサギ)に対してそれぞれpropranololの1/10~1/3および1/3の抗不整脈作用を示した.摘出モルモット乳頭筋標本において,celiprolol(3×10-4M)は活動電位の最大立ち上がり速度を抑制し,その強さはpropranololの約1/30であった.またceliprolol(3×10-5~3×10-4M)により有効不応期(ERP)の短縮が認められたが,ERPの活動電位持続時間(APD90)に対する比(ERP/APD90)は変化しなかった.以上の成績から,celiprololは抗狭心症薬として有用性が高いこと,腎機能にはあまり影響を及ぼさないこと,および弱い抗不整脈作用を有することが示された.
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